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魔法競技祭本番!

 魔法競技祭当日。

 早朝から学園は物々しい雰囲気に包まれていた。

 ほぼ特級クラスたちが参加するこの祭典に学園内の生徒たちは楽しみにしていた。

 それもそのはず、特級クラスの生徒はずば抜けて魔力が多く、強力な魔法を持っているヒトが多い。

 十三歳という年齢である為、爆発の威力や規模といった見た目に分かりやすい高威力魔法を繰り出す生徒が殆どだ。

 二人は出場競技『戦闘演習』まで待っていた。

 高速射撃、精密射撃と遠距離魔法部門を見た後、破城槌、魔法格闘技といった近距離魔法部門を見ていくと、いかに特級クラスと中等級クラスの実力の差があるか実感していた。

 自身が戦っていないはずが、激しい魔法の応酬に驚く。

 尻尾の先まで毛を膨らませ、耳が飛行機の様に水平に広げると、サクラはレンの袖をギュッと掴み不安な表情を浮かべていた。

 順番が回ってくる緊張感と異性が触れている緊張感で目を回しそうになるが、当たり障りない言葉を振り絞る。


「す、すごいね……!」


「アタシ、やれるかもって思ってたけど……実物見たら自信無くなっちゃった……」


「先生が止めてくれるはずだから、きっと大丈夫なはず……!そろそろオレたちの出番だよ……!移動しよう……!」


 二人は緊張し固くなった脚を無理やり動かし、集合場所まで歩く。

 既に待機している生徒もおり、二人は端の方で座る。

 特級クラスの生徒はレンとサクラを見ても特に怪しむこともなかった。

 しばらくすると一人の騎士が鎧が擦れる音を立てて訪れる。

 黒い馬族の女性であり、兜の隙間から見える青の瞳、と長い立て髪。

 彼女はこの国の最高の剣士である象徴の紅いマントとフェンリルの模様が刻み込まれた甲冑が目に入る。

 周りの特級クラスの生徒たちがその姿を見て驚きの表情を浮かべていた。


「なあ、あの人って……」

 

「もしかして、聖騎士のカレン様……!?」


「聖騎士様が直々に見に来てくれるなんて……!ラッキー……!」


 カレンと呼ばれた聖騎士の女性は集合している生徒を見渡し、レンと目が合う。

 彼女はニコッと笑うと思わずレンは胸が高鳴る。


「やあ!今回のメインイベントの戦闘演習に参加する諸君。例年にはない程の人気だから少しルールを変えようと思う。それは……」


 突然のルールの変更に少し響めくが、さすがは特級クラス。

 直ぐに平静を取り戻した。

 そんな彼らを見て頷いたカレンは腰に下げていた剣を鞘から引き抜き、頭上に掲げる。


「このわたしも参加する!しかも、全試合にね!」


「「「ええええっ!?!?」」」


「勿論手加減はするよ?君たちはいつものルール通り殲滅か魔道具を取りに行く。それに追加でわたしからの追撃を受けないようにしないといけない。絶対、楽しくなるよ!」


「「「……」」」


 カレンの突然の参加で特級クラスの生徒たちは何も言えなくなってしまった。

 それもそのはず。

 相手はこの国の最強剣士だ。

 授業で戦闘訓練を行なっているとはいえ、たかが一ヶ月程度だ。

 相手は訓練の数だけでなく実戦も積んでいる。

 勝つ事は絶対に不可能だった。


(近衛騎士団長で聖騎士相手は難しいよね……。リコさんなら……)


 レンはリコの魔力なら何とかなると思っていたが、残念ながらここにはいない。

 サクラとできる事は限られてくるが、当初の方針である魔道具を回収することに勝機を見出すしかないようだ。


「サクラさん、オレたちは聖騎士様も特級クラスとも戦闘は避けないといけない。難しいし、出会ったら諦めるしかないけど、頑張ろう……!中等級クラスでもやれる事はあるってのを知ってもらうんだ……!」


「ハウルくんを見返してやらなきゃ……だもんね?」


「う……。あいつは良いんだよ!どうせ、勝っても『お前は逃げ回ってただけだろ!卑怯者!』って言ってくるだろうし」


「あははっ!そうだね……!あのヒトならそう言うかも。でも、少なくともクラスのみんなはレンくんの見る目は変わると思う。レンくんが本気で調査隊を目指しているんだってアタシがこの魔道具で証明して見せるから!」


「お!そこのペアは意気がいいねぇ!よし決めた!君たちの対戦カードを一番最初に持ってこよう!いいよね?」


 カレンがレンとサクラに目をつけ、試合の順番を入れ替えてもらうように打診すると競技担当の教師は渋々了承する。

 この事からカレンの権力は非常に強いものだと察する。

 こうしてレンたちは初戦に出場する事が強制的に決まるのであった。


 §


「ふう……。今日は魔法競技祭でしたか……。教室に誰もいなくて驚きました……」


「体力もあまり戻っていないのに無理に出席しなくても良かったのだが……。あと二日は休むように予定していたから」


「いえ……レン君をいつまでも待たせてはいけません。多少の無理は、覚悟の上です」


 私は早く彼に会いたかった。

 発情期で休みをもらっている間、レン君の事が頭から離れませんでした。

 もう、魔道具を作る練習をしているのでしょうか?

 はやる気持ちで第二屋外競技場に到着してレン君を探しますが、観客席にはいません。

 どこか別のところに行っているのかと待っていると、戦闘演習が始まりました。

 本当はレン君と一緒に出たかった競技。

 彼の作る魔道具なら特級クラスのヒト達だって一網打尽です。


「さあ、初戦の出場選手の紹介だ!東側は特級クラスのクォン選手とライ選手だ!彼女達は特級クラスの中でも上位の選手だ!」


 私を郊外で魔獣の前に放り出したヒト達です。

 彼女達もこれに参加していたのですね。

 まあ、彼女たちはクラスでは指折りの実力者ですから当然ですね。


「次は西側、魔法競技祭始まって以来初の中等級クラスの参加だ!レン選手とサクラ選手だ!えー……情報によると、レン選手は魔法が無いけど魔道具のエキスパートらしいぞ!それなら彼の作る魔道具を使用するサクラ選手も見物だ!」


「レン君!?何で……!?」


「知らなかったか?また、同級生に嵌められてしまった様なんだ。……リコどうした?」


 私はすごく嫌な気持ちになりました。

 彼の隣に立っていたのが私以外の女性だったから。

 鼓動が速くなって、息がだんだんと苦しくなり、私は意識を失いました。

 目を覚ました時は保健室のベッドの上でした。

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