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私に起きた異変

このお話はリコ視点のお話です。


 私は思わず部室を飛び出していました。

 早くなってしまった鼓動を落ち着かせる様に息を吐き切る。

 火照った体はレン君を思い出させる。

 私はレン君の事を考えてしまう。

 彼は命の恩人。

 彼がいなければ私は今頃魔獣の腹の中……というよりも郊外に佇むウンチになっていたでしょう。

 ノーマジの私をめえ先生からの依頼とはいえ助け出してくれました。

 そして、私に即席の魔道具を作って頂き、壊れても良いからと使わせてくれました。

 初めての魔法。

 紋章魔法を知らなかった私はその威力に驚きました。

 彼の作る魔道具は不思議と手に馴染んで力を発揮してくれました。

 それから、めえ先生からレン君は部活を立ち上げ、部員を募集していると聴きました。

 私は助けてくれた彼に恩返しするために入部しました。

 紋章魔法を先生から学んでいる間、レン君は【魔本】という魔道具を作り上げていました。

 しかし、紋章魔法は描いた時点の大きさに依存する様な事を聞き、私は疑問に思いました。

 二度目の魔法の行使。

 私は危うくヒトを殺しかけました。

 私はレン君が作った魔道具が決して他のヒトより劣っていないと証明するために全力で放ちました。

 それが、競技場を破壊してしまう威力が出ていると思わず、先生たちの助けがなければ再び野狐族の皆様にご迷惑をおかけしてしまう所でした。

 九尾の女王が生徒を避難させたおかげで被害は建物だけで済み、私の行為も不問となりました。

 私は九尾の女王が嫌いです。

 あのヒトが野狐族を隔離したヒトだから。

 有る事無い事を全て野狐族のせいにされ、迫害させられているにもかかわらず見て見ぬ振りをする女王が。

 落ち込んだ私を励ましてくれたレン君はとても嬉しかった。

 レン君は野狐族の私を嫌わないヒトだったから。



 またです。

 レン君の事を考えると、何故か身体が火照り、お腹がギュッとなります。

 昨日まで何もなかったのですが……。

 とりあえず、めえ先生に診てもらいましょう。


「……!てめぇ、一昨日はよくも……!」


「何ですか?私はあなたの事知らないですが」


 この犬族の男子は何を言っているのかわかりません。

 出会うのは初めての様な気もするのですが。

 この口ぶりだと、一昨日の相手でしょうか……?


「ふざけるなよ!お前のせいで死んだらどうしてくれんだ!」


「……決闘ならいつでも受けて立ちますが?」


「ケンカ売ってんだな……!お前――何だこの匂い……うぅ……!?」


「どうされたのですか?怖気付いたので――きゃっ!?」


 私は犬族の男子に押し倒されていました。

 両肩を抑えられ身動きが取れません……。

 そのまま脚を開かされてしまいました……。


「あの……止めてくださいっ!恥ずかしいです……」


「うぅあぁっ……!」


 犬族の男子に私の声は伝わっていない様子です。

 目が血走っており、涎を垂らしていると思ったら、ズボンを脱ぎ始めたのです。

 私は他種族はおろか、男性のモノを見たことはなかったですが、そういう事だと理解しました。


「やめてくださいっ!私は……!私はあなたと番になるつもりはありませんっ!離れてください……!いや……!」


 モノが私に近づき、抵抗しようにも男性に力で勝てず、涙を流してしまった時、ふと身体が軽くなりました。


「リコ!大丈夫か!?」


「せ、先生……!私……わた……うぅ……ひっぐ……うわああぁぁぁぁっ……!」


 何も言葉にできなかった私を優しく抱きしめ、受け入れてくれました。

 

「大丈夫だ。私が来たからもう安心していい。ルゥ!ハウルを静養室に連れて行き、気付剤を投与するんだ!発情期のメスの匂いを嗅いでる!」


 その言葉で私は発情期が来てしまった事を改めて理解しました。

 魔法競技部のカンガルー族の先生が男子生徒を拘束し、連れていかれました。

 目の前の脅威は去ったものの、私の体の震えは止まりませんでした。


「リコ、取り敢えず保健室まで行くぞ」


 私は先生に支えられ保健室に行くことになりました。

 保健室に到着して、椅子に座っていると緑色の懐かしい様なニオイがする温かい飲み物を先生がお出ししてくれました。

 それを飲んでみるとひどく苦い飲み物でした。

 薬でしょうか?

 私の舌の付け根が悲鳴をあげている様子を見て、先生の表情が和らぐ。


「すまないな。ここには【オチャ】しか置いていないのだよ。肉食系の種族には大層苦いと評判だが、やはり苦いか?」


「はい、とても。ですが……何だか知らないですが落ち着きます」


「それは野狐族の育てた葉っぱから抽出したものなんだ。匂いを覚えていたから懐かしく感じたのだろう」


 私の遺伝子に刻まれたものだったのでしょう。

 【オチャ】という葉を見たことはないですが、身体の記憶が懐かしいと認識しましたので、先生の言うことは間違いないのでしょう。

 苦かったですが、全て飲み干し「ごちそうさま」と頭を下げてコップを机の上に置く。


「リコ。ハウルは未遂で終わったのだな?」


「はい。スカートは捲られましたが下着は脱がされていないので大丈夫かと……」


「すまない。私が見落としていた。野狐族はこの時期に発情期が訪れると言う事を知っていて見落としていたんだ。私の管理不行きだ。申し訳ない」


「先生のせいではないです。先生がいなければあの犬族に番にさせられていたので……」


「……!リコ。意中のオスがいるのか?」


「へ……?」


 突然の質問に私は変な声の返事をしてしまう。

 そして、その意味を考えてみると、好きなヒトがいるかと言う質問だと言う事を理解しました。

 真っ先に出てきたのはレン君の姿でした。

 また、体が火照り、お腹がギュッとなります。


「……わかりません。けど、レン君は一緒にいて怖くないです」


「そうか……。何かを感じたのなら、今はそれをしっかりと育てる事をオススメする。他人に興味を持つことは悪いことではないからな。それと、薬を処方するが一週間は休学だ。他の男子生徒に影響を与えてはならないし、何よりお前の身体が心配だ。いいな?」


「はい。これ以上ご迷惑をかけられませんので、大人しくしておきます」


 意図せず休みをいただき、寮の自室に連れていかれました。

 ここから一週間、私は自室で与えられた課題と紋章魔法の勉強を一人ですることになりましたが、それが手につかなくなる事となるとは思いもしませんでした。

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