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リコの魔法?

「さて、解析した結果だが、あの魔法はリコの魔法だ」


 レンはしっかりと頷くが、リコは口に手を当てて少し考えると手を挙げる。

 それを見たメリルはリコの発言を許す。


「あの、紋章魔法を描いたのはレン君です。解析結果で私の魔法が出てくる理由がわからないです」


「そうだ。いくら魔力を込められていないとはいえ描いたのはレンだ。そして、魔本も見て欲しい」


 メリルはレンの作った魔本を開くと一部ページがごっそりと抜け落ちて白紙となっていた。

 しかも無くなっていたのは風の紋章が書いてあったページだった。

 それだけリコの魔法が強力だったということを証明していた。

 レンは嬉しそうにリコを見ると、不思議そうに首を傾げて返す。


「一度に使える紋章は一つだ。複数同時に展開できるというのは私に知る限り一つの魔法に行き着く」


 メリルのその言葉にレンとリコはごくりと唾を飲み込む。


「リコの魔法は【召喚】に類するものかと思われる」


「【召喚】……?ですか?」


「そうだ。精霊の力を借りて魔法を放つ種類だ。魔法は使用した後残滓があるのだが、そこに精霊が集まっていたんだ。そのことから精霊を扱う、すなわち【召喚】による精霊魔法の行使だと現在結論付けられている」


「それって、かなりすごい魔法なんじゃ……!?」


 レンは好奇心で目を輝かせながらメリルに問うと、困ったような笑みを浮かべて頷く。

 

「そうだな。すごいも何も、この国で二人目の使い手になるのだからな。それで、だ。今からリコは私と共に王城に向かうことになった。すぐに準備するんだ」


 それを聞いたリコは首を横に振った。

 メリルは驚いた表情をし、レンは首を傾げた。

 リコはレンの背後に立ち、口を開く。


「レン君も一緒でなければ私は行きません。私の魔道具を作ってくれるのであれば、レン君も同じ説明を受ける必要があります」


「え……お、オレも!?」


「リコ、流石にそこまではできないのだよ。基本的にあの場所は王族でしか出入りができない。今回だって特別にふく様から許可を得たのだからわ――」


「ならば、行く価値はありません。女王様にそうお伝えください」


「リコさん!?」


「リコ!」


 レンを王城に連れていけないと判るとリコはそっぽ向いて王城行きを拒否した。

 レンはリコの手を掴み、悲しそうな表情で見つめる。

 しかし、リコの表情は変わらない。


「せっかく魔法が分かってきたから、学ぶには良いかな?と思ったんだけど……リコさんはそれでもダメ?」


「ダメです。私はレン君がいなければ死んでいた身です。貴方をそっちのけで話を進めるのは私の気持ちが許しません。ワガママだとは思いますが、王族よりも九尾の女王よりもレン君の方が信頼できます」


 レンは嬉しい反面、自身のせいで学びの機会を失っている事に罪悪感を感じていると、部室の扉が開かれた。

 全員が扉の方へ注目すると、犬の獣人ポチおが入ってきた。


「ポチおさん!どうしてここに?」


「どうしても何も、めえさんに王城に飛ばしてもらうように頼まれてきたんだ。……その様子だと何かあったのかい?」


 何かを察したポチおはメリルに訊ねると困ったような顔をして答える。

 

「実はな、そこの野狐族の女子がレンを連れて行かないと王城に行かないって言ってるんだ。だが、レンは許可されてるわけではないから連れていけないと言ったら、この調子でな……」


 ポチおはレンとリコを交互に見ると、段々と不敵な笑みを浮かべる。


「はは〜ん。そういう事かな?まあ、いいや。オイラが許可するよ、と言いたいけど流石になぁ……。ふく様にはオイラから伝えとくから、また日程調整したら良いんじゃないかい?」


「……負担をかけてすまない」


「良いってことよ。にしても、すっげぇ大穴だったな。あ、じゃじゃさん借りるからヴォルフ様に伝えててよ。流石に力仕事出来る人手が欲しいからさ」


「ふむ、ヴォルフ様なら何も言わなくても気にしないと思うが、伝えておく。整備の件とふく様の件は頼んだ」


「あいよ〜」


 ポチは軽い返事をして部室から出て行った。

 レンは窓の外を見ると【太陽】の光が弱まり、夜が始まることを知らせていた。


「もうこんな時間だったんだ……!」


「む?私も気付かなかったな。それでは今日の部活動は終わりにしよう。また明日二人とも訓練を行うように」


「「はいっ!」」


 レンとリコは部室から出るとポチおがグラウンドに空いた大穴を塞ぐ作業をしていた。

 空中に石や砂を生成したかと思うと、突然その量が増える。


「あれは土の元素魔法と【増幅】の魔法を掛け合わせたものだと思われます」


「わかるの?」


「はい。元素魔法に付与魔法を組み合わせるとあの様な挙動になると聞いたことがあります。実際に見るのは初めてですが」


 リコの知識はレンの思っているより数倍蓄えられているものだと感じ、リコへの興味が増していく。


「リコさんって学園の図書館に行った事ある?」


「いえ……」


「オレ、紋章魔法のこともう少し知りたいからさ、今度一緒に行かない?」


「はい、ぜひお供します。あ……。私、女子寮なのでこの辺で……」


「ああ……。うん。また明日ね?」


「はい。おやすみなさい」


 二人はそれぞれの寮へ戻り、慌しかった一日が終わったのだった。


 §


「ってわけで野狐の子は来ないってさ」


「なんじゃつまらんの。しかし、久しぶりに見込のある生徒じゃ」


 ふくはポチおの報告を受け、特に苛立つ様子もなく立ち上がる。

 そして、指をパチンと鳴らし、ポチおを学園に【飛ばした】。

 ここは王城。

 王族達が住まう場所。

 非常に高度の高い場所に住まいを構えており翼を持つ者であってもたどり着くのが不可能である場所だった。

 それでもこの場所には緑もあれば花も木々もある。

 高度が高くなるにつれ気温が下がるというのが普通なのだが、ここではそんな法則は適用されなかった。

 ふくはそのまま歩みを進め、下界を眺める。

 大気によって色褪せて見える学園を見下ろし、腕を組む。

 草木を踏み締める音が聞こえ、振り向くと、尾が六本のキツネの姿をした女性がふくの側に立つ。

 髪色や長さや恰好が違うものの容姿はふくに酷似しており、ふくと比べて若さが目立つ。


「お母様。本日の来客はまだいらしてませんか?」


「うむ。先ほど【おくと】がわしの所へ来ての、学園の生徒は来ぬとの事じゃ。準備までさせてすまぬの」


「いえ、それは大丈夫です。……お母様、楽しそうですね?」


「玉藻にはわかるかの?」


 玉藻と呼ばれたふくの娘はしっかりと頷くと嬉しそうにふくは口角を上げる。


「そうじゃの。久しぶりに優秀な子が出てきおったのじゃ。それも、玉藻と似た【召喚】の魔法を持っての。まるで、あの時がもう一度来た気分じゃ」


「そうだったのですね!尚更お話をしたかったですね」


「それはまた今度じゃの。さて、わしらも執務に戻るとしようかの。そうじゃ、ぼるふのやつに【かれん】を使っておると伝えておいてくれぬかの?」


「カレンを?……分かりました。ヴォルフ様に伝えておきます。では、失礼いたします。お母様」


「うむ」


 そう言うと二人は別々の入り口へと姿を消して行ったのだった。

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