第6話「『英雄の時代が終わった異世界』」
王歴864年。
かつてこの世界には、魔王がいた。
魔王は悪魔を率いて、世界を闇へと包み込んでいた。
そんな中、1人の勇者が誕生した。
勇者は仲間を集め、魔王に挑んだ。
勇者は勝利し、世界には平和が訪れた。
それから、40年の時が経った・・・・・
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広大に広がる土地・ディステリアに聳えるは王の都。
40年前に魔王が住んでいたと言われる城があるここには人々の活気が溢れていた。
今は勇者・アースラがこの地を治め、一国の王として君臨している。
人々はアースラを「英雄」と呼び、慕っている。
いや、慕っていると言うのは間違いだ。
気持ちの悪いくらい「神格化」している。
崇拝しているのだー。
そんな「父」を俺は誇りに思わない。
何故なら・・・・・
「おい、そこの召使いよ。おやつをもってこい」
「かしこまりました、英雄王」
『英雄』の名が嘘なくらい、『自堕落』なのだ。
母に聞いたことがある。
父のどこが良いのかと。
母は
「魔王を倒し、この世界と囚われの身の私を救ってくださったのですよ」と
定例文かの様に答えていた。
ご都合主義め。
昔はそうでも、今ではこうだ。
常に玉座に座り、おやつを食しながら腹をボリボリかくだけの男。
召使い達も、家来達も、皆、父の言う事は聞く。
この男は自分の戦果に漬け込んで、楽したいだけなのだ。
明日、父は俺に「王の地位」を引き渡すらしい。
国の政治までもを息子に押し付ける気なのだ。
俺は、父がやはり嫌いだ。
「大丈夫ですか?アークレイン様」
「これはフラリーヌ姫」
城の廊下から外を眺めている俺に、他国の姫が声を掛けてきた。
「ちょっと夜風に当たろうと・・・」
「明日が不安なのですね」
(全く違う。)
「いや不安というよりは・・・」
「私には分かります。あなたの許嫁ですもの」
(この女、何も理解していない。)
「フラリーヌ姫、俺は悩んでいるのです」
「悩む。何も悩む事はないでしょう。貴方の父、英雄・アースラ王の血を引く貴方が」
(ほら、こいつも『父の姿』しか見ていない)
「アークレイン、貴方は凛としていればいいのです。そして私を妻として、迎え入れてくれたら、私はそれでいいのです・・・」
フラリーヌ姫が俺の後ろに抱きついてきた。
「離して下さい!あなたは何もわかっちゃいない!」
「きゃっあ!」
俺は彼女を振り解いた。
勢いで、尻餅を着く。
はっ、とし、彼女に謝罪をし、手を差し伸べた。
「俺は・・父が嫌いです。
みなは英雄だ英雄だ言いますが、あの体たらくな男のどこが英雄なんですか!!
あの人から受け継いだ王の座が!「英雄の子」として讃えられる俺の気持ちが!!
・・・俺は、俺はこのプレッシャーをどうしたら・・・」
「アークレイン様・・・・」
俺も見てくれる人はここにはいない。
「英雄の子」ではなく、俺自身を。
どこか遠くに逃げたい気分だ。
「アークレイン様!!夜分に失礼致します!
只今、城内に侵入者が入り込みました!!」
1人の見張りが俺のところへやったきた。
「何?どんな奴だ?
「ここら辺では見かけない服装でして、なに『異世界』やら、なに『俺は高校生だ』とやら・・・・・」
異世界??高校生???
これはひょっとして・・・・・
「俺が行く!お前はフラリーヌ姫を部屋へ護衛しろ!」
「え!?ちょっと・・アークレイン様!?」
姫を護衛に任せ、連れて行かせた。
「ふぅ」
深く深呼吸をする。
「出てこい侵入者」
後ろの配膳台からごぞっと音がした。
すると中から、1人の男が出てきた。
「いやぁ・・バレてたか・・」
「皆は気づいてない様だったが、俺には筒抜けだ」
男はそろりそろり台から出て、俺の方に近寄ってきた。
「貴様、何者だ?・・・というのが、この場合正しいんだろうな」
「へ・・・?」
そうだ。俺は何故だか確信している。
この男が、俺を救ってくれるということを。
「頼む!俺をここから連れ出してくれ!!」
「なっ・・・・え?!いやちょっと待って!」
「お前の事は知っている!『異世界転移者』というものだろ!?噂で聞いた事があるんだ!!
なんでも様々な並行世界を行き来できるって!」
男は驚き、俺から距離を取って下がった。
「いやいやそうですけど、何がなんでも展開が早過ぎでしょ!!侵入者なんだがら、もうちょい疑いとかないんですかぁ!?」
「ないないない!そのみなりが証拠だ!!俺はこの世界にらうんざりしている!俺を連れ出してくれ!!」
「ちょっと俺に掴まないでッ!!」
「見つけたぞ!侵入者!!!」
見張りの者達が集まってきた。
「王子が、人質に取られている・・・・!?」
「はぁ!?これのどこが人質だよ!!どう見ても俺が取られてんだろうが!!」
男は叫んでいる。
「おっ、王子が危ない・・!皆のもの、王子を救出するぞ!!」
見張り達は各々武器を持ち、男に襲いかかる。
「ちょっ・・・まっ・・・!ちぇっ・・チェンジ!!!」
その瞬間、男が輝き出した。
男に掴んでいた俺も、謎の光に包まれていった。




