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第4話「母と子の対話」


 「・・・・今日はここまでにしよう」

 「はぁあぁ~~もうダメぇ」


 疲れ切ったシリナが深く倒れこむ。

 

 『黒煙魔法』習得に向けて今日で一週間。


 シンバルの言う通りの見込みが早いおかげで、8割方はできているらしい。

 俺たちはシンバルが所有していた『魔術解読書』?とやらでなんとかやりくりしている。

 この魔法は普段使用している魔法とは違うらしく、少量の魔力を分散しながら、器用に黒煙を操る繊細さが求められる。

 その為少しでも分散する黒煙に与える魔力が少ないだけで、失敗していまう。


 「こんなのでできてるの?・・・・?さっきから焦げしか出てない気が・・・」


 事情を把握した穂波も練習に付き合ってくれている。 

 彼女も俺という『異世界転移』する人物が身近にいるおかげですんなり馴染めている。


 「ぇえ・・・・一回だけ・・・ダンジョンでゴブリンに襲われているときにぃ・・・ 通りすがりのご老公が黒煙魔法で助けてくれましたぁ・・・・・」

 「喋んなくていいからまずはゆっくり休めよ」


 数日シリナと関わる事で段々と彼女の事がわかってきた。


 彼女はなんにでも口を出してくる、『おしゃべりマン』だ。

 同じクラスだったらずっと話しかけてくるんだろうな・・・・。


 「まだ・・・あきらめませんよぉ・・・あの飛竜を倒すまでは・・・・」

 「倒す前にお前がばてたらどーすんだ。いいから休憩入るぞ」


 俺は買ってきていたスポーツドリンクを差し出した。

 シリナは「おいしい」と言いながらごくごく飲んでいる。


 俺も腰を下ろし、スマホでSNSを閲覧する。

 飛竜は点々と飛び、日本中、いや世界中で注目の的になっている。


 (この飛竜の目撃情報から次の出現地は絞れないものか・・・)


 そんなことを考えていたのもつかの間、次の投稿に目をやった。


 『この巨大な怪物、なんか探してるような気がする・・・』


 探している?

 学校での一件以来、シリナは穂波の家に暮らしている。

 もしかして自分の娘の行方を捜しているのか??


 俺はシリナに呼びかけた。

 

 「シリナ。魔力ってのは、どう使うんだ?」

 「どう使うって・・・人間にはそもそも誰にも魔力は備わっています。」


 シリナは自分の杖を空に掲げながら、「魔法に関しては任せてください」と張り切りながら説明を始めた。


 「いいですか古都!魔力はいうならば『人間の潜在意識』そのもの!自分の中の意識を一本の棒だと思って気を集めるんです!こんな感じです!!」


 シリナの体が淡く光り始めた。


 「ねぇ・・・今までの練習の時よりなんか気合いやばくない・・・?」

 

 穂波が不安そうにこちらを見つめる。

 

 嫌な予感がする。


 「久しぶりに魔力を分散せず、集めるので少し時間かかります・・・」


 周りが青白い光に包まれていく。


 「シリナもういい・・もう・・!やめろ!!!」

 「古都・・・止まらなのいです!!魔力が増加していきます!!!」

 

 シリナの足ががくがく震えている。


 「だめです!!限界です!!!!!!!」


 手から杖が落ちる。

 と同時に光は打ち上げ花火のごとく空に打ち放たれる。


 シリナは尻餅をつき、現場には静寂が訪れた。


 「だっ、大丈夫?」

 

 手を差し伸べる穂波。


 「ありがとうございます・・・・穂波さん」


 「かなりまずいかもしれないぞ」


 俺の嫌な予感が的中した。

 あぁ・・・居場所がばれた。


 「ウォォォオオオオォォォおおおおおおおおおおおおおお」



 夜だというのに、街中には大きなうめき声が響く。


 「奴がくる・・・・・シリナ!!!!!」


 その瞬間俺たちの前に一匹の飛竜が現れた。

 間違いない。シリナの母だ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 シリナはまだ黒煙魔法を一度も成功したことない。

 しかも今魔力を使い切ったばかりだ。

 つまり、この現状はやばい。


 だけどやるしかない。今夜がチャンスだ。


 飛龍はしばらく俺たちを見つめていた。

 

 「あ」


 声が漏れるシリナ。

 「この巨大な飛龍が母かもしれない」

 そう考えるだけで様々な事を気持ちが溢れるだろう。

 だが、それじゃダメなんだ。



 「シリナ!!!」


 俺は叫んだ。



 「距離をとれ!あいつの間合いに入っちゃ駄目だ!まずは魔力を貯めろ!」


 はっとしたのか、シリナが俺の方を見る。


 「でっ、でも・・仕掛けられたら・・・」


 「大丈夫さ。そのために俺がいる」


 「そうですわ、私たちがいます。あなたの母を救えなくても、その娘のあなたは必ず救います!」


 1匹の猫も俺の隣に来た。


 「よく分かんないけど・・・古都が言うならなんとかなるよ!だから・・頑張ろうよ!」


 穂波がシリナの手を握る。


 声援を受け、静かに目を閉じ、深呼吸をする。

 この人達は私を信じてくれている。

 私の為じゃない。

 母と、信じてくれた古都達のためにやるんだ。


 「『失敗は積み重なる度に、成功へと導く』・・・」


 「シリナ・・・」


 彼女は杖を握る。

 穂波が手を離すと同時に、淡い光が彼女を包んだ。


 「母からの教えです!私、成功させます!!」


 シリナには飛龍が色んな姿に見えるのだろう。

 巨大な飛龍、それに姿を変えた母親。

 辛いだろうに。

 それでも諦めずに前を向いた。


 「俺も応えないとだな・・・・」


 未だ微動にしない飛龍に向かい、俺は一つのアクセサリーを前に出した。


 「古都さん、それはまさか・・」


 シンバルが驚く。


 「おい見えるか、飛龍とやら!お前がシリナの母親ならこれが分かるはずだ!!」


 飛龍の目元がぴくっと動く。


 「どこでそれを手に入れたんですか?!そのアクセサリーは『魔導石』を埋め込んだものではないですか!」

 「シリナの特訓中に、俺は転移したんだ。お前達の世界に・・・」


 飛龍に対する対抗馬と魔力増量のコツを聞く為に、俺はシリナ達の世界に再度行くことを決意した。

 俺の体質は、狙って固定の異世界に行ける訳ではない。

 ましてや、転移には時間などの固定概念が存在しない。

 どの世界のどの時間軸に行くかは、ランダムなのだ。

 だからこそ何度もくしゃみをした。

 そして辿り着いた。『飛龍のいる異世界』に。


 「・・・不幸中の幸いなのかもしれないな、まさかシリナとシリナの母に会うとは思わなかったなっ・・・」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「あの、大丈夫ですか?」


 この異世界に来て村人に書き込み調査をしている時だ。


 見覚えのある魔法帽を被り、黒いローブを着用している。

 右横には小さな女の子が俺を見て怯えていた。


 (もしかして、この2人はー)


 その瞬間、全てを悟った。


 「えっと、信じてもらえないと思いますが、俺は別の世界から来てまして・・・」


 女性はくすりと笑った。


 「ふふっ、身なりを見れば分かりますよ。そんな異世界のお方が何故ここへ?何かお困りごとでも?」


 その人の目を見ると、引き込まれる。

 何故か嘘がつけない。


 「実は、俺の世界にこの世界の飛龍が現れてー」

 

 事の経緯を説明した。

 勿論、貴方が問題の「飛龍」とは言わなかった。

 こんな与田話、信じてくれるはずがない。

 そう思っていた。


 「・・なるほど。分かりました」


 女性は、全てを悟った様だった。

 胸元から一つのアクセサリーを取り出し、俺に手渡してきた。


 「こちらは『魔導石』と呼ばれる物が埋め込まれた魔道具、ネックレスです。

 『魔導石』は、飛龍の動きを止め、力を抑制してくれます。

 私は、今まで様々な飛龍を倒して来ましたが、この魔道具のおかげなのです。

 今苦しんでいるその子の役に立つでしょう。」


 「いいんですか・・・その、これを俺にくれるという事は・・・」


 「えぇ・・分かっています。私なら、大丈夫ですから」


 にこっと笑うその笑みにはどこか悲しさが籠っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「きっと、このネックレスを俺に渡した事で、彼女は」

 「いいんです、古都」


 シリナを包む光は、彼女に呼応する様に輝きを増していった。


 「時を超えてまで、私を守ってくれようとした母を、私は・・・」


 大きく顔を上げる。

 その瞳には、涙が溢れていた。


 「私は!もう!!守られなくてもへっちゃらです!!」


 杖を構え、詠唱し始める。


 俺は、覚悟を決めたシリナを信じる。

 母から託された物を、この子のためにもー。


 「古都!!魔導石を!!」


 シンバルの声に反応して、ネックレスを飛龍に向かって投げる。

 魔導石は、眩い光を放ち、飛龍は苦しみながら、地面に落ちた。


 「『黒煙魔法・もえひろがるせかい』ッッ!!」


 「グエェエエエエエェエエエエエエエ!!!」


 身動きの取れない飛龍は、黒い炎に包まれた。


 




 

 

 

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