06 【後編】決戦と未来(と新たな始まり)
意識を失う直前、彼女は呟いた。
「君のために……頑張ったよ……」
朝日が柔らかく窓から差し込み、エリシアは自分の部屋で目を覚ました。驚いて首に手をやるが、「時告げの雫」も魔力の感覚も消えている。
「夢だったの!? え、何!?」
ノックが響き、父の声が聞こえてきた。
「お嬢ちゃん、エリシア、起きてるかい?」
「リチャードじゃない! 助かったんだ!」
エリシアは安堵の息をつきつつ返事をした。
「ええ、お父様。起きてますよ」
「今日はヴィクター君が来るよ。準備はできてるかい?」
父がニコニコしながら言った。エリシアは混乱に目を丸くする。
「え、彼が!? でも婚約って……どういうこと?」
「昨日、彼が求婚してきただろ。今日は婚約指輪を持ってきてくれる日なんだよ」
父が笑いながら説明すると、エリシアは驚愕した。
「歴史が変わったの!? そんなことってありえるの!?」
彼女は急いで身支度を整え、居間へと向かった。そこには健康そうなヴィクターが立っており、優雅にお辞儀をして挨拶する。
「おはよう、エリシア。よく眠れたかい?」
「無事なの!? 君、本当に生きてるんだよね!?」
エリシアは彼をじっと見つめた。
「なぜそんなに驚いてるんだい?」
ヴィクターが不思議そうに笑う。彼女は慌てて誤魔化した。
「夢で……すごく大変なことがあったからさ。ちょっと混乱しちゃって」
「悪い夢でも見たのかい?」
彼が優しく尋ねる。
「ううん、長い夢だっただけだよ!」
エリシアは首を振って笑った。
ヴィクターが小さな箱を取り出し、彼女に差し出した。
「これを受け取ってくれるかい?」
箱を開けると、青い宝石の指輪が輝いている。彼が穏やかに尋ねた。
「僕と結婚してくれるかな、エリシア?」
「喜んでだよ! こんな素敵な指輪なら即答しかないよね!」
彼女は笑顔で頷き、その輝きに目を奪われた。指輪は「時告げの雫」に似た光を放っており、彼女の心に感動が広がる。
「運命ってこういうことなのかなって思うくらい、素敵だよ!」
ヴィクターが突然、真剣な目で尋ねてきた。
「昨日から何か変わったことはなかったかい?」
「え、まさか君、覚えてるの!?」
エリシアは息を飲んだが、平静を装って答えた。
「夢の中で君が私を守ってくれただけだよ。それだけさ」
「当然だよ。いつだって君を守るさ。それが僕の永遠の誓いなんだから」
彼の目に温かい光が宿った。エリシアはドキッとしつつ、心の中で呟く。
「貴公子すぎるし、ちょっと記憶あるっぽい感じがする! でも、まぁいいか。私の勝ちなんだから!」
魔力は失ったけれど、エリシアは真実の愛を手に入れていた。彼女は幸せを噛みしめながら思う。
「世界を救って、最高の騎士をゲットだよ。最高のハッピーエンドじゃない、私の人生!」