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ヲタッキーズ157 女家長はご機嫌ブルー

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第157話「女家長は御機嫌ブルー」。さて、自転車メッセンジャー便が轢き殺され、搬送中の書類が強奪されます。


捜査が進む内に秋葉原を牛耳る保守系セレブのファミリーの存在が浮上、名誉あるファミリーの名前にぶら下がる様々な人間模様が明らかに…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 自転車メッセンジャーの死


"秋葉原マンハッタン"を朝焼けに染めて陽が昇る。電気街はユックリと覚醒し、首都高上野線の上りが渋滞を始める。


「おい!危ないぞ!」

「何、考えてルンだ?」

「轢いちまうぞ!」


渋滞に埋まる10車線の中央通りを、何と逆行しながら自転車メッセンジャー便が疾駆スル。

ビル街の地理に明るく、摩天楼毎の入館方法にも長けた彼等は、アキバ最速の配送手段だw


「来たぞ」


黒い車が、路地で様子を伺っている。目の前を通過する瞬間を狙って急発進、自転車と激突スル!

メッセンジャーは宙を舞い、路面に叩きつけられ即死。覆面男がバッグを奪い車に飛び乗り逃走w


「救急車!誰か救急車を呼んで!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて、客の回転率が急降下。メイド長(ミユリさん)はオカンムリだ。


「あら、簡単ね。さぁ、お次は何かしら」

「ミユリ姉様、次はプロフィールょ。名前は"ムーンライトセレナーダー"。性別、女。人種、腐女子」

「ちょっち待って!私の人種って腐女子なの?余り自分を分類したくナイんだけど"グレー"とかでどう?」


ハッカーで常連のスピアがからかう。


「姉様。"グレー"は"年齢"で使う予定です」

「やっぱり?じゃ年齢は…"不朽"はどーかしら?」

「ミユリさん。ソレじゃ博物館の展示品だょ」


チョロっと舌を出すミユリさん。萌え。


「テリィ様、そーでした。では"大吟醸"で」

「良いカモ。ところで、何やってるの?出逢い系の登録?」

「え。あ、実は…今さらですが"My Tube"のチャンネル登録なのです」


カウンターの中のミユリさんは恥ずかしげ。激萌え。


「スーパーヒロイン仲間がみんなやってて…楽しいしネットワークが広がるって勧められました。だから、始めてみようかなって」

「ミユリ姉様。後は画像をUPスルだけょ」

「テリィ様、どれが良いでしょう?セーラー戦士?クノイチ?女戦闘員?」


いきなりマニアックだなw


「今世紀の奴かな」

「あら。髪型が古い?」

「そこじゃない…」


スマホが鳴る。


「ラギィ?こんな夜中に僕の声を聞きたくて?それとも、スーパーヒロインの死体?…うーん死体かwどこ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場。中央通りを2車線通行止めにして現場検証中。


「テリィたん。早いわね」

「近所だし…おっとタマには僕から現状報告だ。OK?」

「OKです、ボス」


おとなしく引き下がるメイド2人はヲタッキーズのエアリ&マリレだ。一応、僕はCEOなので彼女達の上司ではアル。


「亡くなったのはメッセンジャーのキレブ・シマキ。ケビン・ベーコンの"クイックシルバー"の如く…」

「ブ、ブー。時間切れ。エアリ、頼むわ」

「死亡したのは自転車メッセンジャー便のキレブ・シマキ。黒い車が彼を轢き殺した。運転していた覆面の男は配送中だった荷物を奪って逃走」


お、お、お、ナンて単純ナンだw


「簡単でしょ?」

「いいや。全く面白みがナイ。文学賞なら選外だ」

「頑張ったのに」


可愛くムクれるエアリ。彼女は妖精担当で、メイド服の下には羽根がたたまれている。


「とにかく!目撃者はいるし、車のナンバーも割れてるわ」

「なーんだ。目撃者がいて、ナンバーもわかったら5分で解決しちゃうな」

「でも、ナンバーを調べたら盗難車だったけどね」


付け足すマリレ。彼女は1945年の陥落寸前のベルリンから脱出した"時間ナヂス"。


「覆面男に盗難車。つまり、配送中の荷物を狙った計画的な犯行だ。何を運んでたのかな?」

「被害者の会社に聞いてみるわ」

使者(メッセンジャー)を死者にするほど重要なモノのハズだw」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スルために設置された防衛組織。

僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"はSATO傘下の民間軍事会社(PMC)でCEOは僕。


"裂け目"絡みの殺人は大抵僕達と警察の合同捜査になる。


「レイカ司令官。車は万世橋(アキバポリス)が指名手配中ですが、確たる証拠は無い模様」

「あらあら。荷物は?」

万世橋(アキバポリス)が運送会社に確認中」


パーツ通りの地下にあるSATO司令部。僕達は、SATOの沈着冷静なレイカ最高司令官に今回の事件の概要を報告中だ。


「レイカ。きっと重要なモノだ。核攻撃の暗証番号とか悪魔に売る予定の急死したプチン大統領の魂…」

「どれもあり得るわね。良い仮説だわ」

「レイカ、大丈夫?気が散ってるみたいだけど?」


ムーンライトセレナーダーに変身したミユリさんが、レイカの司令官コンソールの前に立つ。セパレートのメイド服だ。


僕の大好きなコス←


「集中してるわ。正にSATOの危機なの。月の裏側に"リアルの裂け目"が開いて宇宙戦争は必至。秋葉原では検挙率が大統領府の設定に届かズ、人員削減を求められそう。人を減らしても事件は減らないのに…」


コスモルックでボヤくレイカは紫のウィッグだ。ソコへ…


「司令官!運送会社から連絡。件の荷物の発送元は、東秋葉原2.7丁目のアパートに住むS・ニダル・マタルです。マルチバースに照合をかけたトコロ"アース8452"にシキル・ニダル・マタルという次元テロリストがいます!」

「届け先は?」

「池袋の乙女ロード署です」


司令部の全員が総立ちになる。


「テロの可能性が…」

「特殊部隊、出動!」

「警告しろ!即時避難を!」


レイカが真っ赤な電話機を取る。


「秋葉原D.A.(特別区)大統領府にホットライン!」

「こちらSATO司令部です。コード27!」

「第1級非常体制発令!コンディション・レッド!」


全員が一斉に電話スル。走り出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


扉を蹴り飛ばして突入する特殊部隊。


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「シキル!シキル・ニダル・マタル!」

「動くな!抵抗すれば射殺スル!」


結局、突入はSATOじゃなくて万世橋(アキバポリス)SWATになったけど、サイレンサー付きの短機関銃を構えた1コ小隊が飛び込むw


「シキル・ニダル・マタル!」

「シキルはどこだ?」

「シキルとか言う人はいないわょ。私はサリー・ニーダーマイヤー」


ゴミ屋敷みたいな部屋の奥にジャバ・ザ・ハットみたいに寝そべるオバさん。鼻に酸素吸入器を入れてる。スーハー音w


「貴女は今日、自転車メッセンジャー便に荷物の発送を頼みましたか?」

「えぇ。頼んだわ。その鉄砲を下げて!」

「S・二ダル・マタルじゃなくて、ニーダーマイヤーか。運送会社が聞き間違えたんだw」


完全武装の1コ小隊が前へ習えして整列、一斉に詫びる。


「ごめんなさい!」

「蹴破ったドアは直ちに直します!おい、ソッチを持て!」

「ホントにスミマセン」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


災害救助用の電動大型ドリルでドアを修理w


「ニーダーマイヤーさん。貴女の発送した荷物が盗まれ、メッセンジャーが殺されました」

「まぁ!ソレはヒドいわね!」

「大変な惨事です」


僕はエアリ&マリレを左右に従え、古いソファに座ってる。ソーサー付きのカップで紅茶を飲みながら…猫を追い払うw


「なぜ盗まれたかを捜査しています。池袋の乙女ロード署に送ってますね?」

「YES。送ったわ」

「荷物の中身は何ですか?」


ラギィが突っ込むが答えはニベもナイ。


「いいえ」

「いいえ?」

「ダメ」

「ダメ?」


ラギィの苦手な禅問答だ。助け船を出す…猫を払いながらw


「ダメって話したくナイのかな?それとも中身が何だか知らないの?」

「YES。中身を知らないってコトょ…アンタ、国民的SF作家のテリィたん?"地下鉄戦隊"の?」

「はあまぁ。もしお読みの奴があればサインしますけど…え?胸の谷間にサイン?…(サラサラ)ソレ、消す時には僕に電話して(リップサービスw)。で、誰の荷物かな?」


満面に笑顔のジャバ・ザ・ハット。悪人ではなさそうw


「大好きな甥っ子のブレデょ!」

「大好きな甥っ子のブレデは、今、何処ですか?」

「蔵前橋」


え。蔵前橋には次元犯専用の重刑務所がアル。まさか…


「重刑務所?荷物は、いつ渡されたの?」

「10年前よ。刑務所に入る直前、私に荷物を渡して、こう言ったわ。"おばちゃん、コレを大事に預かって。人には絶対に言うな。開けても絶対ダメだ"ってね」

「じゃ何故、今になって発送したの?」


澱みなく応えるジャバ・ザ・ハット。


「ソレは、今朝ブレデから、すぐ送るように電話があったからょ。届け先の男はブレデと10年前に接触したエージェント。名前はレイカ・ライカ」

「エージェント?レイカ?」

「現在はSATOの最高司令官だw」


僕達のコーヒーカップがピタリと止まる。


「え。アンタ達のお知り合いだったの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通り地下のSATO司令部。


「私宛のメッセンジャー便?」

「YES。司令官」

「名前は?」


僕はタブレットのデータを読む。


「ブレデ・トプソ。池袋の乙女ロードでの作戦の時に対応してる。覚えてるか?」

「…思い出した。でも、ナゼ今、私に?」

「本人と話せるか、ラギィに確認中だ。レイカは、彼について何か覚えてナイのか?」


レイカは、華麗なコスモルックに身を包む。紫のウィッグ。


「強盗目的のスーパーヒロイン殺害だった。自白して直ぐに解決したハズょ」

「レイカに直接届けるよう念を押されたとジャバ・ザ・ハットおばさんが言ってたな」

「もぉ本人に聞いてょ!」


さらにイライラな話が飛び込む。


「ソレには降霊術が必要です。万世橋(アキバポリス)の捜査本部に第1報が入りました。ブレデ・トプソが死亡。今朝、刑務所で刺殺されました」

「今朝?そりゃ偶然じゃないな」

「…当時の作戦の資料を集めて。確かブレデには奥さんがいたわ。ヲタッキーズ、万世橋(アキバポリス)と協働で話を聞いてきて。あと蔵前橋(重刑務所)で、どう殺されたのかを看守にも確認を。ソレからブレデがかけた電話の通話記録も」


とりあえず、僕はラギィに電話スル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィは、僕の電話に出ない。万世橋(アキバポリス)に立ち上がったばかりの捜査本部にメッセンジャーの妹が訪問して来る。

婦警に慰められながら椅子に腰を下ろすペイズ・シマキ。赤いセーターにグレーのマフラー。応対は…ラギィ。


SATO司令部からリモートでモニター。


「辛い役目だ」

「ラギィなら適役だわ」

「経験がアル」


妹は椅子から立ち上がり、涙を拭き健気にラギィと握手。


「彼女は彼女の義務を果たすわ」

「レイカ、君は大丈夫か?」

「私に届ける途中で死んだの。大丈夫なハズがナイ」


第2章 クラブ・ピアソの口論


SATO司令部にブレデの通話記録が送られて来る。


"郵便じゃダメなの?"

"だめなんだ。おばちゃんが直接届けてくれ"

"だって、腰が痛いんだもの"

"金は出すからメッセンジャーを呼んでくれ"

"わかったわ。やっておく"

"じゃな。もう切らなくちゃ"

"ブレデ、元気でね。愛してる。大好きょ"

"俺もだょ。じゃあな、おばちゃん"


同時にモニターしてるラギィと話す。


「荷物の中身を言わないわね」

「7時23分、妻にも電話をしてるけと、聞く?」

「お願い」


再び通話記録が流れる。


"バレリか?"

"アナタ、私ょ"

"この前の面会の時に言ったコトだ"

"覚えてるわ"

"今日、実行するコトにした。ジレトと家を出てくれ"

"ホンキなの?"

"時間がナイ。でも、心配するな。代わりにジレトにキスを。愛してる"

"私もょ。じゃあね"


「ブレデは、この通話の45分後に刺殺された」

「そーなの。でも、一体誰が何のために?」

「荷物との関連もワカラナイな」


万世橋(アキバポリス)パーツ通り(SATO)の双方で頭をヒネる。


「ラギィ、容疑者は?」

「レイカ、大量にいるわ。現場は刑務所の中庭。目撃者もなし。看守もお手上げなの」

「刑務所の中の揉め事に巻き込まれたとか?」


ラギィは頭を横に振る。


「いいえ。彼は模範囚だった」

「誰かが殺人を依頼したとか?」

「多分メッセンジャー殺しの犯人だな」


SATO司令部にヲタッキーズが戻る。マリレが報告。


「ブレデ・トプソの留守宅ですが、モヌケの空でした。急いで家を出たようで、スマホの電源も切り、カードも使ってません。追跡不能で完全にロスト」

「それはどーかしら。息子のジレド君は、呼吸器の病気で毎週火曜に病院へ行くらしいわ」

「明日だ。どの病院かわかってる?」


レイカ司令官の前で胸を張るエアリ。


「モチロン。張り込めば現れるカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


開店前の"潜り酒場(スピークイージー)"。ミユリさんがPCと格闘中w


「ミユリさん、何してんの?"メイドミュージカル"のセリフ入れ?」

「そうしたいけど無理なのです。友達リクエストが大量に来て、その処理に追われてます…何だか馬鹿らしくなってきちゃって…」

「ソレが楽しいンじゃナイか」


ミユリさんは、目が血走ってる。無駄にマジメな性格w


「エリソなんて連絡を取りたくナイのに、猫が腎臓結石で大変だとか絡んで来てメンドクサイったらナイのです…あら、またダメ押しメッセージだわ」

「動画でなくて良かったね」

「スーパーヒロイン専用の出逢い系に登録したのは大間違いでした。ウェブなんて良いコト無いわ」


天を仰ぐミユリさん。自業自得ではアルが…


「お!また、友達リクエストだ」

「ウッソォ。ジェト・パバンだわー!」

「誰ソレ?」


胸の前で指を組む"恋スル乙女ポーズ"だw


「池袋時代の太客で御主人様達の中で1番ハンサム。付き合ってました。始めての相手」

「最後の情報はいらないな」

「メッセージが来たわ。"僕も秋葉原にいる。今度会わないか?しかし、君は全然変わってないな"ですって!あぁ!ジェト・パバン、信じられないわ!しかも、私が変わってナイですって!」


重要なポイントを指摘スル僕。


「ソレは、ミユリさんがン10年前の女子高バトンガール時代の画像を張ったからだ。バトンだょバトン。チアですらナイ」←


息を呑むミユリさん。画面はアクセプトorイグノーw


「テリィ様。私、承認すべき?」

「自分で決めなょ」

「最後に会った時、私は未だ17才でした。バトンガール画像の後で今の私を見たら…どうしましょう?」


悩むミユリさん。僕は念を押す。


「腎臓結石の猫の相手も忘れないでね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「テリィたん、行き詰まったわ。盗難車は見つかったけど、鑑識によると指紋も毛髪も出なかったわ」

「ラギィ。そりゃプロの殺し屋だぞ。だとスルと車が捨てられていた場所の防犯カメラの映像は?」

「犯人は映らないようにしてる。でも、病院でブレデの妻子には会えた。あの後"外神田ER"に現れたわ。奥さんをヲタッキーズが取り調べてる」


え。メイド2人が取り調べ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「主人を殺した犯人は誰なの?!」

「だから今、捜査中。昨日ご主人が発送を頼んだ荷物の中身は知ってる?」

「モチロンょ。叔母に預けてた"証明書"だわ」


"証明書"?


「何の"証明書"ょ?」

「夫は誰も殺してナイと言う"無実証明書"」

「自白したのに?」


明らかに押され気味のヲタッキーズw


「YES。自白したけど犯人じゃナイの」

「トプソさん。失礼ですが、囚人の多くは罪を認めないモノです」

「でも、妻が毎月70万円を受け取ってる囚人はいますか?」


毎月70万円?結構な暮らしが出来るw


「御主人は無実なのに、お金のために自白したの?」

「変な話だと思うかもしれないけど、そうするしかなかったの。ジレドには生まれつき呼吸器に難病があって治療費が必要だった。お金がなければジレドは今頃死んでいたわ」

「じゃ真犯人は誰なの?」


アッケラカンと応える妻。


「知らないわ。恐らく夫も知らないと思う」

「出所も聞かずに、金だけ10年間も貴女は受け取っていたの?何の疑問も抱かずに?」

「聞いたわょ!でも、夫のブレデは何も知らない方が安全だって…お金も無記名で差出人の住所もワカラナイ」


さらに突っ込もうとするエアリを制する妻バレリ。


「メイドさん。夫が殺されたばかりなのょ。これ以上、私は何も知らないわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「妻の下へ送られてた口止め料は、4ヶ月前から滞りがちでとうとうゼロになったそうです。そこでブレデは、彼の無実を証明スル書類を公にスル決意をしたようです」

「ブレデは真犯人と接触してたのかしら?蔵前橋(の重刑務所)に何か記録が残ってるのでは?」

「外部との通話記録には何も残ってません。メールは調査中ですが、その後支払いは一旦復活スルも再びゼロにw」


安定的な収入とは言えないw


「ブレデはきっと嫌気がさしたんだな。向こうが約束を守らないなら自分もってワケね」

「ソレで同じ作戦に従事したエージェントに"無実証明書"を託そうとしたンだ」

蔵前橋(重刑務所)の電話が盗聴されてた可能性は?犯人は"無実証明書"の発送を察知してたし」


ラギィは腕組みして考えをめぐらす。


「だとすると…盗聴出来るのは看守ぐらいね」

「犯人は10年で1000万円近くを払ってる。そんな金持ちなら、看守の買収ぐらい出来るだろう」

蔵前橋(重刑務所)の勤務表で、その日の担当を調べて。ブレデの奥さんと子供は保護して」


振り向くとモニター画面にはレイカの険しい顔が映ってる。SATO司令部から捜査会議にリモートで割り込んで来てるw


「あ、レイカ。既に手配済みょ…自白に証拠でしょ?逮捕は当然ょ」

「もっと調べておけばよかったわ、ラギィ。片付いたと思ったのに、今になってコレょ。事件に無関係な人まで巻き込んでしまったわ。車からは何も出ないし、蔵前橋での刺殺事件も捜査は難航スルでしょ。そもそも、看守が関わっていたらお手上げだし」

「…きっかけとなった事件の再捜査をしましょう。きっと手がかりがあるハズょ」


ラギィとレイカは互いの痛いトコロを叩き合うw


「2人も死んでいるのに、今さら10年前の事件を再捜査?」

「SFの執筆も始まりが1番難しいが、ソレが上手くいけば、後はうまく収まって逝くモンさ」

「テリィたん。コレは小説とは違うの」


喧嘩腰の2人の仲裁に入ったつもりが十字砲火←


「でもさ!確かに違うけど、ミステリーと言う意味では似てる。で、ミステリーと割り切れば全部同じ。動機。機会。隠蔽。罪悪感。過去の事件を隠すために今回の事件が起きてる。きっとヒントは10年前にアル。10年前の事件を掘り起こそう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


10年前の事件を掘り起こす。つまり、ソレは全員で会議室にこもって、10年前の事件のファイルを読み込むコトだ。


「オビア・デビア。20才。部屋で撲殺された。強盗目的に見せるためモノまで盗まれた。最初の容疑者は、前歴のあるアパートの清掃員」

「清掃員の仕事で、月に70万円10年間払い続けられる?その後、匿名のタレコミで捜査の目はブレデに向かった。連行したら30分の取り調べで全てを自白。直ぐに解決したから提出された調書には日の目を見てないモノもアル」

「事件当日、被害者オビア・デビアは、パーティに行ってます。クラブ・ピアソ」


驚く僕。


「クラブ・ピアソ?銀行を買えるようなセレブが集まるソシアルクラブだ」

「聞いてください。当時の調書に、パーティのバンケットコンパニオンがオビアと男の口論を目撃、とあります」

「無茶苦茶怪しいな。でも、10年前の話でしょ?」


何かの糸口になるだろうか?


「男の特徴は20代半ばで中肉中背。青のブレザーにオレンジ色のネクタイとのコトです」

「ソイツは、絶対大金持ちのプレイボーイだ。お約束だな。イメージ出来たょ」

「テリィたん、つまらない先入観を持つのはヤメてね。でも、恐らく口論の相手は被害者の"連れ"だわ」


絶対お金持ちの"連れ"か…


「超天才のルイナがオビア・デビアの検視報告で発見があったって」

「私は"連れ"を探してみるわ」

「お願いします」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナは、史上最年少で秋葉原D.A.(特別区)大統領の首席補佐官を務める超天才だ…が"趣味"で鑑識仕事を手伝ってくれる。


「10年前の検視報告を見たわ。自白があったからか念入りではなかったようね」

「見逃しがあった?」

「さぁどうかしら」


ルイナは車椅子だ。ラボからの"リモート鑑識"となる。


「ルイナの意見は?」

「意見は、一義的にはお腹ペコペコ。でも、10年前のヘンな事件のお陰で食べられない」

「あら。お弁当?」


モニター画面が引くとメスティンと何やら緑色のドリンクw


「食べながらでOK?あと10分したら官邸で宇宙系スタートアップの税逃れ対策会議なの。ブレデはバットで殴ったと供述してるけど、現場写真の傷と頭蓋骨の損傷を見ると、一目瞭然でバットじゃないわ」

「自白自体がウソだから凶器もウソなんだ。モノホンの凶器は何だろう?」

「遺体をレントゲン撮影したいトコロだけど…10年前に灰になっちゃってルンでしょ?遺髪とかは?何か別の発見があるカモ」


ソンな話をしながら食事を始めるルイナ。


「彼女には父親も母親もいない。親戚に確認スルわ。あ、電話。ちょっとゴメン」

「ルイナ。忙しいのはワカルけど、ラボで食事って衛生的なのか?」

「最も強力な消毒剤を使ってる。ココは秋葉原1清潔な部屋ょ。食べる?鮭はらこ飯ょ。"ふーふーアーン"をサービスするわ」


伝説のサービスだ。懐かしいなw


「ヲタッキーズのエアリからだった。オビア・デビアの10年前の"連れ"がわかったわ」

「え。撲殺されたオビア・デビアの"連れ"?」

「YES。ジェテ・ヴァズ。警察沙汰が絶えない資産家ょ。ファミリー全体で何億円もの資産を持ってる。口止め料は軽く払えるわ」


ラギィの顔が輝く。


「ビンゴね」


第3章 レコル・アクシオムの一族


駅前が再開発され、何本もの摩天楼が建ち、見事に国際観光都市へ変貌を遂げたアキバ。世界のホテルが集中立地スル。


"レコル・アクシオム"は、外資系の大箱(ホテル)の1つだ。


「オビアとは東秋葉原のサパークラブで会った。秋葉原に来たばかりで遊んでそうだった」

「彼女と、お付き合いされてましたか?」

「いいや、友人だ。男女の間にも友情は成立スル」


ウソだ…アクシオムのメインバーにはシガールームがアルがキャンドルの下、文字通り僕達を煙に巻くジェテ・ヴァズ。


「最終的にセックスに至らない"友情"は生物学的に意味がナイ」

「でも、君達は付き合ってる。そーだろ?」

「いいえ。私はテリィたんの元カノ」


お?という顔のジェテ。気を取り直して語り出す。


「彼女は、クラブ・ピアソで親族会をヤルと言ったら、私も行くと言うから連れて行っただけだ」

「他人の親族会に行きたがる女?何か幼少期に問題が?」

「どの家の親族会かにもよる。ヴァズ家の親族会と聞けば、誰もが来たがるだろう」


恐ろしく上から目線だが、育ちが良くて嫌味にならないw


「あのウァズ家?金持ちで、権力があって、保守派の?確か

過去に議員も出してたょな?…キスパ・ヴァズだ。そいつの息子が今度、立候補の予定だょね?」

「当家の熱心なファンか。次の親族会には招待スルょ」

「…オビアが殺された夜ですが、22時から2時の間はどこにいましたか?」


仕切り直すラギィ。


「ヴァズ家の奴等と親族会を抜け出し、ディスコティックに行ってた。確か"覚醒剤"を使ってヲタク(万世橋警察署)に捕まっちゃってね。父が起訴を取り下げてくれたが、記録は残ってるだろう。家にも控えがある。額に入れて飾ってアルょ」

「その晩、オビアはイケメンと口論してたそうだ」

「君とか?」


フザけた野郎だw


「口論の相手は青のブレザーにオレンジ色のネクタイをしていたそうです。当日、その服装をしていた人物に心当たりはありませんか?」

「モチロンある。ヴァズ家の親族会には、毎回ドレスコードがある。ネクタイは、女家長であるレナンが毎回選ぶんだ」

「ああっホントね…」


親族の集合写真を見たら…全員オレンジ色のネクタイw


「容疑者の大量発生だわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通り地下のSATO司令部。


「はい、大統領。えぇモチロンです。必ずなんとかします」


渋い顔でスマホを切るレイカ司令官w


「検挙率が3%下がっただけでコレょ。来年度の予算が大幅カットになる」

「今の検挙率でも充分なのに…えっと、でも、別の時に来よっか?じゃ失礼…」

「テリィたん!仕事に優先順位はナイわ。続けて」


最悪のタイミングwエアリ&マリレを左右に従え中間報告。


「真犯人はブレデとメールしてたが、メアドから住所などは不明だ」

「蔵前橋の看守の調査は?」

「ダメだった。刑務所側は、SATOには勤務表を渡せないと言って来た。疑われたのに腹を立て、自分達で捜査スルと息巻いてる」


遠い目になるレイカw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


バンケットコンパニオンの10年後は…タダのオバサンw


「オビアと口論してたイケメンは誰?」

「あのね。10年前のコトょ?忘れてるに決まってるじゃナイ。でもね、ソンなコトより美味しい話がアルのょ…」

「どんな小さなコトでも良いの。ネクタイとかタトゥーとかは?何か記憶に残ってナイかしら」


辛抱強く問いかけるラギィ。


「マァとにかくイケメンが怒鳴ってたワケょ。もぉ興奮してワインをこぼしちゃって…コンパニオンである私が掃除スル羽目になっちゃったワケょ。ところでアンタ、美味しい話があるンだけど、聞く?」

「コボしたワインは服にも着いたかしら?」

「えぇ多分ね。じゃあココだけの話だけどサ…」


僕とラギィは、親族の集合写真をチェック!同時に指差すw


「いたぞ(わw)!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び"レコル・アクシオム"。今度はメインダイニングで老婆(祖母?)との食事を終えた"金髪イケメン"を直撃スル。


「(10年前の親族会の集合写真でワイシャツに派手にワインのシミがついていたw)トレン・ヴァズさん、アキバP.D.のラギィ警部です。コチラはコンサルタントのテリィたん。お話を伺いたいのですが」

「まぁ!ホントに警察の方なの?」

「YES」


肝心のイケメンは応えズ、老婆の方が絡んで来るw


「指輪が盗まれたの」

「おばあさま。指輪の話じゃナイのです」

「高価な指輪だったの」


横から慇懃無礼な"赤いメイド服"が登場。


「トレン様。警察の方とのお話は別の場所で」

「そうね、フラン。トレン、私の指輪の話をおまわりさんにしてあげて」

「コチラへ。女家長のレナンはタマに混乱するンです」


席を外す(10年前の集合写真…以下略)トレン・ヴァズ。


「わかったょ。単刀直入に言おう。全て私だ」

「え。何が貴方なの?」

「10年前の親族会でジェテが連れて来た女と口論してた男は私だ。態度が気に入らなくて帰るように伝えた。あの親族会の周りをうろつく女には、みんな何か狙いがアル」


そうカモしれないな。


「美女を連れて来たジェテに嫉妬してるの?」

「バカな!彼女は、ジェテが帰った後も居座って私に色仕掛けをしてきたんだぞ!」

「みんなが彼女を狙ってたのか…」


トレンのアタマから湯気w


「おい!私の家族を疑うのか?見当違いだ!」

「犯人は、既に1000万円近くの口止め料を払ってる。貴方を含めカレーなる一族全員が容疑者ょ」

「言っておくが、そんな金があれば俺は女家長(レナン)の相手ナンかスルものか!」


化けの皮がハガれて逝く。


「祖母想いの親切な孫じゃナイのか?」

「私の苗字は確かにヴァズだが、父が死んでから一家は没落した。今は、親族からの援助でどーにか生活している身だ」

「…貴方、誰かをかばっているわね?」


ラギィが斬り込む。援護射撃スル僕。


「念のために逝っておくが、君には大変不利な展開になっているぞ」

「わかってくれ。父親も同然ナンだ」

「あら。一体誰の話かしら?」


決心したのか、アッサリ落ちる。


「叔父のウィスだ。当時、彼も破局した直後だった。彼を利用スル人は多かったので…」

「例えば誰?オビア?援助してもらってる君?」

「…叔父とオビアには関係があった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び"レコル・アクシオム"のメインバー。JAZZの流れるソファを配したリビングルーム。ウィスは…ウィスキーだ笑


「オビア・デビア。覚えている。アクシオムで撲殺されたとか…全くかわいそうな娘だった」

「彼女とはどんな関係でしたか?初めて会ったのは親族会ですか?」

「いや。正直に言うと、その数週間前のカクテルパーティだった。ん?美術館だったカモ…覚えてないな。魅力的で野心があって惹かれたよ。だから"推す"コトにした。ココは秋葉原だからな」


推す意味が違う。ヲタクの風上にも置けない野郎だw


「彼女を"推す"とは?」

「何が言いたい?」

「つまり、彼女は貴方に何らかのハニートラップを仕掛けましたか?」


鼻先で笑うウィス。


「トレンは、女と見ると、そういう見方しか出来ない可哀想な奴だ」

「では、事件の夜10時から2時までの間、貴方はどこに?」

「おい!この私にアリバイを求めているのか?そうか…家にいたょ」


突っ込むラギィ。


「ソレを証明出来る人は?」

「神だ」

「神田明神?」


目が泳ぎウイスキーを1口飲むウィス。


「ウィス・ヴァズ様。お車の準備が整いました」


先ほどの"赤いメイド服"が現れる。誰だ君は?


「非常に楽しい会話だったが失礼スルょ。弟の選挙本部に行くんだ」

「ブレイ・ヴァズか?出馬するらしいな」

「ゼヒ応援を頼むょ。清き1票を」


大義そうにソファから立ち上がり、歩き去るブレイ。


「彼はオリビアと関係があったンだろう?なぜ殺す必要がアルのかな(MOTTAINAIw)」

「抱いた女が別の男の同伴で現れたから嫉妬したのでしょ。テリィたんみたい」←

「風評被害!とにかく…美女。嫉妬。殺人。金。確かに僕的には盛り上がる展開であるコトは認めよう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「遺髪?うーんナイわ。全部、萌えた。何も残ってナイ」

「そうですが。いや、犯人につながる証拠が見逃された可能性があるかと思って。では、せめて御焼香だけでも」

「でも、犯人は捕まって事件は解決したと聞きましたが」


実直そうな叔母さんだ。突然訪れた警察(ラギィだ。僕じゃナイょ)から姪の骨壷を掘り起こすと告げられ困惑してるw


当たり前だょな←


「ソレが違ったようです。さらに2人が殺された。オビアの為にも、被害者の為にも、真相の究明のためにもゼヒ」

「特別な子だったわ。母親が癌で看病のために退学したの」

「尊い行いですね」


骨壷の掘り起こしには親族の許しが必要なのだ。


「母親が死んで、直ぐに家を出たの。都会で暮らしてると聞いて嬉しかった。なのに…またちゃんと埋め直してくれますね?」

「モチロンですとも!」

「そう…(サラサラ:サインする音w)でも、ホントに荘厳で素晴らしい葬儀でした。全てヴァズさんのお陰だわ」


え。色めき立つ僕とラギィ!


「ええ。葬儀の費用を全部出してくれました。ソレは立派なお葬式でした。花輪もたくさん出て(全然知らない方々からw)」

「で、支払ったヴァズは、どのヴァズ?」

「ウィス・ヴァズさん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がってる捜査本部。


「良心の呵責から葬儀費用を払ったのね!」

「ヲタッキーズ、ウィス・ヴァズのアリバイ確認だ!ドアマンから何から全員に聞いてくれ!」

「やっとく!」


エアリは妖精でマリレはロケットガール。文字通り飛び去る。


「テリィたん、手に入ったわょ勤務表。で、私が何で警部になれたか知ってる?勤務表から買収された看守を探し出す名人だからょ」

「ラギィ、餅は餅屋だ。ココは警部殿にお任せして、僕は墓地に連絡を取ってみる」

「でも、ヴァズ家ならお金ならいくらでもアルだろうに、なぜ支払いを止めたの?止めなければ真相は今でも闇の中だったのに」


同感だw


「金持ちは、ナゼ金持ちだか知ってるか?"ケチ"だからさ。口止め料を払うより殺した方が安上がりだと思ったンだろう」

「でも、10年間も払い続けたのょ?」

「何かが変わったンだ」


EVのドアが開き黒背広の軍団が出現。先頭の男が名乗る。


「ラギィ警部。ブレイ・ヴァズだ。話をさせてもらおう」


無理矢理ラギィと握手。ラギィは自分のオフィスに招く。


「どうぞ。コチラへ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


なんだかんだで黒背広が10人ぐらい入って来て、狭いラギィのオフィスは時ならぬラッシュアワー。吊り革が必要だ。


「先ずヴァズ家を代表して、全面的な捜査協力を約束スル」


僕が小声で補足。


「どうせ"でも"と続くぞ」

「いや"でも"ではなくて"しかし"だ。しかし、突然現れて事情聴取されては困る」

「ほーら来たぞ」


ラギィが僕の方を向く。


「テリィたん。先ずは聞こう?」

「物分かりの良い警部さんだ。我々は捜査を邪魔スルつもりはナイ。ただ、我々も混乱スル。先日、母の前でトレンと話したとか?年老いた母が大変動揺してね。もっと良い方法が必ずあるハズだ」

「しかし!…じゃなかった、例えば?」


僕のナイスな合いの手は完全無視←


「今日以降の事情聴取は、全て私の選挙事務所で、私の差配で行う。どうだ?」

「ヴァズさん。お気遣いに感謝します」

「良いんだ。では、事務所の電話番号を…」


立ち上がるブレイ・ヴァズ。


「待って。私にも"でも"がアルわ。感謝します。"でも"警察とSATOは、今まで通り捜査を続けるから」

「おや?警部、桜田門(けいしちょう)に電話しても良いのか?」

「ついでに伝えて。ボーナス上げろって。OK?」


ラギィも立ち上がり、握手の手を差し出す。

しかし、ブレイは応じズに慇懃無礼に退室w


「ラギィ、かっこいい!」


僕はガッツポーズ。


「テリィたん。捜査を続けょ?奴等はビビってる」

「最高の展開さ。サスガは僕の元カノだ」

「私をフッたコト、後悔してる?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、今カノ…と逝うか、"今推し"はお悩み中だw


「あぁ無視スルか承認スルか…」

「未だ友達リクエストで悩んでるの?承認しちゃえって」

「でも、ン10年前のバトンガールの画像を使ってしまったのです。彼はバブルの頃の私を期待しています。ソコへ今の私が現れたら?」


潜り酒場(スピークイージー)"のカウンターを挟みミユリさんに諭す僕←


「ミユリさん。僕は1度しか逝わないし、人には逝うな。池袋時代のミユリさんは素敵さ。"でも"アキバのミユリさんは、かなり素晴らしいょ」


承認をクリックw


「テリィ様!今、何を…取り消して!」

「悪いが、もう出来ない。"でも"どうせなら、相手の最近の画像を見てみないか?」

「ソ、ソレもそーですね。ココかしら?嫌だ。ちょっち彼こそ高校のブラスバンド時代の画像を張ってるわw」


オアイコだ笑


「ジェト・パバン。貴方、いったい何を考えてるの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナのラボ。


「あ、テリィたん。1時間前に骨壷が届いたわ」

「ウィス・ヴァズおじさん、ホントに奮発したな。こりゃかなり高級な骨壷だぞ」

「テリィたん、骨壷に詳しいの?」


さすがの超天才ルイナも骨壷に詳しく無い。僕の独壇場だ。


「リサーチ済みだ。"太陽系海軍シリーズ"の"星の墓標"で主人公が金星人の骨壷を発見するシーンがある…って逝わなくても、ルイナならもう読んだょね」

「あぁ!あのヘソ出しコスプレの女艦長率いる"憂愁戦艦"が出て来る奴ね…現実(リアル)に戻っても良い?10年間埋められていたから相当劣化してると思うの。フタを開けた瞬間、人生で最も不快な匂いがスルと思うけど、覚悟は良いかな?」

「良いとも!耐ショック、耐閃光防御!」


既に全員が青いオペ服を着用している。アシスタントが骨壷のフタに手をかける。全員が口にマスクをギュッと当てる…


「オープン!」


開ける。あれ?骨壷の中は…布袋?


「遺灰がナイ?!ソレともマジックで消した?」

「指紋も拭き取られてる。プロの仕事だわ」

「(遺灰泥棒のプロっているのか?)犯人は、必ず先手を打って来てるな」


残念だが後塵を拝したようだ。


「葬儀の時には、確かに遺灰はあったと実直そうな叔母さんが言っていたわね」

「葬儀会社の人が葬儀の時に盗んだとか?」

「倒産してるから確認出来ないわ」


フランス人みたいに両肩をスボめるラギィ。


「いつかブレデが裏切るとウィスは予測してたンだな」

「そのようね」

「アイツはどこまでも用意周到だな。まるで、セクシーコスプレの悪の女幹部みたいだ」


ルイナがアシスタントにフタを閉めるように指示スル。


「失礼。バットマンにロビン、骨壷のふたを閉めるけど…この骨壷はどうする?埋め直し?」

「ルイナ、ちょっち待ってくれ。ルイナはホントに"星の墓標"を読んだのかな?金星戦艦との戦闘シーンだけ飛ばし読みしたンじゃナイのか?コレは、かなり高級な骨壷だ。引き出しはちゃんと三田会…じゃなかった、見たかい?」

「引き出し?」


世紀の超天才にレクするチャンス!


「あのさ。こーゆー高級な骨壷には、フタの裏側に引き出しがアル。その中に故人の想ひ出とか納めルンだ。何か証拠になるモノが入ってるカモしれない。そう、ソコだ」

「…あら、ホントだわ!インド人…じゃなかった、超天才もビックリょ。娘の頃の写真。普通の家族写真もアルわ…あら?コレはどこ?誰かの選挙事務所かしら?」

「胸にバッチをつけてるな。何のバッチだろう。確かに選挙用みたいだ。さもなくば、1832年のパリ蜂起でレプブリカンが胸につけてた…エドナ・デビア?オビア・デビアの母親かな?ラギィ、虫眼鏡!」


え。キョトンとするラギィ。


「虫眼鏡なんて持ってないわ!」

「え。警部なのに?」

「シャーロック・ホームズじゃあるまいし」


ジョークのつもりがルイナが真面目に対応スル。


「私のを使って」


車椅子からアームが伸び、先の巨大レンズが像を結ぶ。


"キスパ・ヴァズを議員に。1999年"


「この写真は、キスパ・ヴァズの選挙事務所だ」

「そして、オビアの母親は選挙事務所で働いてた?」

「全ての証拠がヴァズ家でつながった」


第4章 女家長は御機嫌ブルー


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「テリィたん、ポルノ見てるの?」

「ポルノじゃないょ。コレを見て。1999年のこんな雑誌記事を見つけたぞ。キスパ・ヴァズの選挙の記事だ。息子のブレイとウィスも手伝いをしてる」

「選挙事務所の集合写真ね?まぁ!オビアの母親とヴァズ家は顔見知りだったのね?」


僕とラギィは顔を見合わせる。


「その通り。"でも"問題なのは、ウィスがソレを隠してたってコトだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


蔵前橋重刑務所の看守が連行されて来る。


「勤務表を調べたら、買収された看守が判明したわ。名前はパタソ・ハンソ。先月50万円の入金があり、ブレデ殺害当日にも100万円受け取ってる…私は警官の汚職が1番許せない。ヲタッキーズ、ウィスのアリバイ確認は?」

「捜査中ょ、ラギィ」

「OK。続けて。コッチは私がヤルわ」


取調室に入って逝くパタソ。恨めしそうな目でラギィを見上げる。ラギィは取調室のドアを後ろ手にゆっくりと閉める。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ムーンライトセレナーダー?貴女がお出ましになるホドの事件だったのか!…しかし、モノホンは初めて見るが、ホントにメイド服を着てルンだな」


ヴァズ家全盛の頃は"アキバのセレブ王"を自称していたウィス・ヴァズだが、ミユリさんと会うのは初めてのようだw


「ウィス・ヴァズさん、真実を話して。騒ぎになって困るのはヴァズ家の人達ょ」

「わかった。実は、オビアのコトは、多少は覚えている」

「あらあら。なかなか全てを話す気にはならないようね。オビアの葬儀の費用を出した上に、オビアの母親とも顔見知りだった。全てを話さないなら、代わりに私がマスコミに話しても良いのょ。弟の選挙前だけどOK?」


例によって"レコル・アクシオム"のメインバー。ソファを配したリビングルームで昼からウィスキーを嗜むウィス。


「ムーンライトセレナーダー、勘弁してくれ。認めよう。私は、オビアの母親を知っていた。しかし、オビアもまた、自分の出生の謎を解明していた。彼女は、恐ろしく賢かった。自らの推理で、自分の父親がヴァズ家の人間だと突き止めたのだから」

「そして?」

「実のトコロ、私がオビアの父親だ。10年前、彼女に聞かされて私自身も大いに驚いた」


何?殺されたオビアの父親はウィス?顔色1つ変えないムーンライトセレナーダーだが、内心驚愕しているに違いナイw


「ちょっち待て。母親ですら、オビアに父親が誰かは教えてなかった。ソレでもオビアが自分の父親はアンタだと"推理"したのか?何か話に無理があるな」

「しかし、事実だ。オビアにも、そして、父親である私にも沈黙を守り通したのだ。古風な女だった。そして、今回自分が父親と知った私が全てを明らかにしようとしたら…今度はオビアが殺された」

「ふーん父親が娘を殺したワケか」


色めき立つウィス。


「なんだと?」

「墓を掘り起こしたら、遺灰が盗まれてた。アンタが盗んだンだろ?」

「ソレは知らない!いったい誰がソンな猟奇的なコトを!」


真っ直ぐウィスを指差す僕!


「ヲマエだ!自分の隠し子との事実を闇に葬るために!」

「あのな、国民的SF作家殿。私は殺してもいなければ遺灰を盗んでもいない。証拠を出せ。さもなくば、名誉毀損で訴えるぞ」


おぉ頭からワナに突っ込むウィス。


「ウィス。それなら、なぜオビアが自分の娘であるコトを隠し続けた?」

「ソレは…家族(ファミリー)を守るためだ」

「おい。オビアこそアンタの家族(ファミリー)だろ?」


絶句するウィス。ヲタクをナメるな。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ウィス・ヴァズ。犯人はヲマエだっ!」


SATO司令部の姿見の前でポーズをキメる僕。


「テリィ様。でも、未だ全て状況証拠ばかりです」

「姉様、ソレはウィスが犯人ではナイからょ!」

「テリィたん、残念だけどウィスのアリバイが確認出来たわ」


ヲタッキーズのエアリ&マリレが入って来る。


「ウィスのアリバイって…ホントに家に1人でいたって神様が証言したのか?神田明神に聞いた?」

「ううん。家にいたけど1人じゃ無い。姉様がおっしゃってたロマンスの御相手と一緒でした」

「でしょ?」


何やら得意そうなミユリさん、と逝うか、ムーンライトセレナーダー。もしやロマンスの御相手はミユリさんの御友達?


「ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダー。ソレならそうと最初から耳打ちしてくれょ。ってかウィス自身も素直にエッチしてたと話せば良かったのに」

「だ・か・ら、テリィ様。ロマンスの御相手は、とても話辛い相手だったのです。エアリ、名前も割れた?」

「はい、姉様。スタン・ジキズ」


スタン?男の名前?もしや…


「テリィ様。あのコワモテなウィス・ヴァズはゲイです。私、一眼見てわかりましたけど」

「ゲイ?…くそ、1人でいたってウソだったのか!いったい誰を守ってルンだろう?」

「テリィ様のおっしゃる通り"家族(ファミリー)"だと思います」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATO司令部。ウィスとブレイの兄弟が雁首を揃える。


「亡くなったオビアのコトは、ほとんど知らないのだ。パーティで挨拶ぐらいはしたカモしれないが…ホントに私は10年前に彼女の母親と会っているのか?」

「その選挙は1999年でした。オビアが生まれたのは2000年。世がy2Kで沸いてた頃です」

「因みに、ウィスさんは"特別な嗜好"なので、父親である可能性はゼロです」


兄のブレイ候補は、ゲイの弟を振り返る。


「ウィス兄さん。コレは一体何ゴトだい?」

「弁護士を呼んでおいた方が良いな、ブレイ」

「兄さん!何を知ってる?」


ゆっくり首を横に振るウィス。


「今、言うコトでは無いンだ」

「兄さん。俺は、エドナとはあの夏以来会ってナイ」

「ブレイさん。今、亡くなったオビア・デビアさんの母親、エドナ・デビアさんと関係があったコトを認めましたね?」


録音前提でユックリ発音するムーンライトセレナーダー。


「父の選挙があるから、きっとエドナは気を遣って、私に妊娠したコトを隠していたのだ」

「ブレイ。ヤメろ。もう充分だ」

「ヤメられるか!自分の娘の存在を今、知ったんだぞ。しかも、殺されて犯人は野放しだ。兄貴、なぜオビアの父親は自分だナンてウソをついたんだ?」


僕も慎重に口を挟む。


「不思議なのは、10年前オビアにも同じウソをついた、即ちオビアに"ヲマエの父親は自分だ"とウソをついたコトだ」

「わかってくれ、ブレイ。ヲマエは初出馬を控え、トテモ大事な時期だった。スキャンダルは命取りだった」

「だから、勝手にソンなコトを?…どうせ落選したのに」

 

またまた頭からワナに突っ込んで逝くウィス。


「ブレイ。我々は、全てヲマエのためにやったんだぞ!」

「おっと…"我々"?」

「ウィス・ヴァズ。"我々"とは誰のコトかしら?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"レコル・アクシオム"のメインダイニング(メンダイ)。"昭和コロッケ"や"江戸カレー"など伝説の洋食が愛され続けている。


「お母さん。オビアを覚えてるかい?」

「当然ょ。老人じゃあるまいし」

「レナン・ヴァズさん」


さすがは女家長。ムーンライトセレナーダーを見ても、お約束の"ホントにメイド服を着てるのね"などとは逝わない。


「誰なの?ブレイ。アレはオビアとは違うわ」

「違いますょ、お母さん。彼女はスーパーヒロインのムーンライトセレナーダーです」

「あぁそうょね。指輪が盗まれたの。とても高かった」


盗まれた指輪の話を繰り返す。


「そうですか。でも、その前にオビア・デビアについて、お話を伺えますか?」

「オビア?彼女には、お前の父親はウィスだと伝えたわ。そうすれば、この子のおかしな趣味も誤魔化せるでしょ」

「お母さん、私がゲイだと気づいてたのか…」


頭を抱えるウィス・ヴァズ。


「お母さん。でも、彼女は私の娘だったんだですょ」

「ブレイ。貴方はファミリーにとって特別な人ょ。議員になって、ゆくゆくは秋葉原D.A.(特別区)の大統領にもなれるわ」

「レナン・ヴァズさん。事件の日、オビアに何が起こったのですか?そして、貴女は何をしたの?」


ミユリさんが挑発。案の定、女家長の逆鱗にタッチ。


「質問ばっかりじゃないの!質問は嫌いなの。オビアも質問してきたわ。あの小娘」

「失礼。ムーンライトセレナーダー、大奥様は御病気の身なのです。これ以上は…」

「お黙り、フラン!メイドの分際で人を老婆のようにお言いでナイょ!私は、キチンと対応が出来る」


アッサリ引く"赤いメイド服"。いつもと感じが違う?


「しかし、ココまで興奮されると、もはや危険です。大奥様、私は車から薬を取って参りますわ」

「フラン、コレが私の指輪と何か関係があるの?」

「大奥様、失礼致します」


すると、レナンは微笑んで"赤いメイド服"を見送る。


「お母さん。あの日、オビアの部屋に行きましたか?」

「何?私は、あの娘を止めたかっただけ」

「お母さん、何をしたんです?」


ウィス&ブレイの兄弟が老母を問い詰める。トドメは…


「レナン・ヴァズさん。貴女は、オビア・デビアさんを殺しましたか?」


ムーンライトセレナーダーが直球を投げ込むw


「殺す?なぜ私が殺すの?違うわ。私は、ただ"始末して"と念じただけょ」


目を瞑るウィス。天を仰ぐブレイ。平然と微笑むレナン。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"レコル・アクシオム"の地下駐車場。


「これはこれは。フラン・デビスさん」

「あら。悪いけど、人違いだわ」

「はじめまして。私はSATO司令官のレイカ」


開けかけた車のドアの前に立ちはだかる。


「さきほど、万世橋(アキバポリス)のラギィ警部から連絡があった。蔵前橋重刑務所の看守パタソが全部吐いたわ」

「誰ソレ?美味しいの?」

「ええ。とっても美味しい証言ょ。パタソにブレデ・トプソの電話を盗聴させたわね」


その瞬間、振り向き逃げようとしたフランの鼻先に銃口。

エアリが銃口がラッパ型に開いた大口径音波銃を構える。


「動かないで。司令官の話は最後まで聞きなさい」

「ヲタッキーズ?私は、大奥様に操られて…」

「別の囚人を雇って、蔵前橋(重刑務所)の中庭でブレデ・トプソを殺させたわね」


詰め寄るレイカの後ろでは、マリレが音波銃を構えている。


「コレでも人違いだと言うの?エアリ、手錠!」


ボンネットに叩きつけ、後ろ手に手錠をかける。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり後片付けの始まった捜査本部。


「つまるトコロ"赤いメイド服"のフランは女家長お抱えのヒットマン…いや、ヒットパースンだったってワケか」

「YES。でも、本人はフィクサー気取りの大馬鹿野郎だったけど。ヴァズ家には、キスパ・ヴァズの頃からスキャンダルをモミ消すメイドを雇う習慣があった。ただ、彼女は余りに仕事が"雑"だったわね」

「骨壷から遺灰を盗んだのも彼女か」


僕もラギィに情報提供スル。


「ミユリさんから聞いた話だけど、あの女家長の婆さんは"覚醒"したスーパーヒロインだった。パワー的には弱い催眠能力者(ヒュプノ)で、操られたフランはオビアを殺害、その後、金と引き換えにブレデに冤罪を着せたの」

「あんな老婆が"覚醒"したスーパーヒロインだったナンて。ソレっぽいコスプレしてくれないとワカラナイわ。しかし、なぜブレデへの支払いを止めたのかしら」

「女家長の認知症が進み、ブレイが家族(ファミリー)の資産管理をスルようになって"赤いメイド服"に活動資金が回らなくなった。一方、ブレデの"無罪証明書"の存在を知った"赤いメイド服"は、女家長の指輪を盗み、ブレデを殺す資金にしたワケさ」


実は全部ミユリさんの受け売りだ←


「とにかく!コレでスーパーヒロイン絡みの3つの事件が一挙に解決したワケね。検挙率は急上昇、SATOは予算削減を免れルンじゃナイ?」

「ようやく、ラギィもエドナ・ラビアの叔母さんに真犯人逮捕の報告が出来るね。そして、亡くなったメッセンジャーの妹さんにも報告出来る…まぁ真実を知ったトコロで辛さに変わりはナイけれど」

「テリィたん、ソレが変わるのょ。いつの日にかね」


ラギィが歩み寄るとペイズ・シマキはイスから立ち上がり、期待を込めた目で、近づくラギィのコトをじっと見つめる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夕闇に屹立スル"秋葉原マンハッタン"の不夜城。神田リバーにかかる何本もの橋の上を車が光の河となり流れて逝く。


「信じられないわ。家族(ファミリー)の名誉のために、家長が殺人を依頼スルなんて」

「スピア。僕達には一生気にしなくて良い問題だ。何しろヲタクには名誉がナイからな」

「あぁ私、ヲタクで幸せだわ。ブレデの息子さんは?」


今回の顛末に差す1条の光明。


「希望が見えてきた。ジレデ・トプソの治療のために匿名で2億円の寄付があった。恐らく、ブレイの事務所からだ」

「ソレは、良い話ね」

「アキバも未だ捨てたモンじゃ…わぉ!スゴいな!どーしちゃったの?」


潜り酒場(スピークイージー)"のバックヤードから出て来たミユリさんを見て思わずブラボーだ。懐かしのワンレンボディコンなんだが…


いつもはツルペタの胸にクッキリ刻まれた"深い谷間"w


「姉様!素敵じゃない、デート?」

「高校のクラス会に2次会から合流ょ。ジェト・パバンと軽くお食事。そして、ダンス」

「おやおや。彼は太って醜くなっててもお構い無しか?」


僕の背中をピシャリと叩くスピア。


「テリィ様。私は人を外見では判断しないのです」

「知ってる。で、どーゆーつもりだい?」

「アキバのミユリを生きるのです。池袋では富豪とも貧民とも付き合いました。そして今、欲しいのは楽しいコト。楽しければソレで良いのです」


ミユリさんの僕化が止まらないw


「ジェトは、今のミユリさんを知らないんだぞ?」

「構いません。スピア、見て!ほら(お尻を振るw)」

「ハレルヤ!ミユリ姉様、最高、最凶、絶好調!」


僕等に投げキスしてドアノブに手をかける。


「テリィ様。遅くなるので、先にお休みください。少し弾けて参ります」

「ROG。いってら…ジェトが少し気の毒だな」 

「何ですって?」


スピアが恐ろしいコトをつぶやく。


「私も"覚醒"したら、あぁなるのかしら」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"ファミリー"をテーマに、自転車メッセンジャー便、その妹、テロリストに名前が似てる猫好きおばさん、金のために冤罪を負う男、その妻、その喘息の息子、殺された母娘、カレーなる一族の女家長、元議員、元金持ち、元候補者、買収される刑務所の看守、赤いメイド服、ヒロインのロマンスの相手、強盗を追う超天才や相棒のハッカー、予算カットに苦しむ南秋葉原条約機構の司令官や敏腕警部、ヲタッキーズなどが登場しました。


さらに、ヒロインの出逢い系への登録騒ぎ、南秋葉原条約機構司令官の予算カットの苦悩などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、インバウンドが溢れる中、一人焼肉が意外に空いていたw秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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