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急変

 姫の変化に誰もが驚いた。


「姫様、どうされたのです。あれほどアンドリューを追いかけていたのに」

「ああ、そういうこともあったわね。でももういいの」

 鋼の意志が感じられる声。

 私の知っている姫様ではなかった。


「もういいの、って……」

「私には立場があります。騎士一人に時間をかけていられないの」

「……」

「これから王と会います。エミリ、下がりなさい」

 私は一礼し、その場を去った。


 姫様に何があったのかわからない。彼への興味がなくなり、人柄も変わった。王や大臣との会議に顔を出し、話についていくため学問に打ち込んだ。「王にでもなるつもりじゃないか」と騎士団長は言った。


 アンドリューはただの騎士に戻った。端正な顔には陰りが見え、時折あの回廊に目をやっていた。

 姫様がそこから彼を見下ろすことはなかった。

 

 隣国の王子との婚姻を半年後に控えた冬、姫様の二番目、三番目の兄が相次いで亡くなった。

 若い王は焦り始めた。王族の血が途絶えてしまう。幸運にも流行病は下火になりつつあったが、王も既に肺を侵されていた。


 隣国の王子は婿入りすることになり、婚礼が行われた。ドレスは姫様の指示で、可愛らしいデザインから大人びた気品あるものに縫い直された。


 隣国の王子は、確かに優しかった。

 優しすぎて母国の内情を話すほどだった。

 自分は妾の子で、王政の中枢からは遠い人物であること。今は母国も病を恐れているが、いずれ攻め込んでくること。

 姫様と王は、執務室にますますこもるようになった。

 

 時を同じくして、騎士団長が病に倒れたと聞いた。彼からの手紙を持ってきたのはアンドリューだった。

「チェスの好敵手へ 財産を遺す こいつを気にかけてやってほしい」とあった。私は膝から崩れ落ち、泣いた。


 あれだけ打算的に夫を選ぼうとしていたのに、これほどの悲しみが自分を襲うとは思っていなかった。

 アンドリューはそばにいてくれた。

 やっと泣き止んだ私が彼を見上げた時、その瞳に同じ深い悲しみの色を見た。


 それから、私達はお互いを気に掛けるようになった。


 流行病はやがて下火になっていく。

 少しずつ希望が見え始めた中、以前のものよりもっと簡素な戴冠式が行われた。


 姫様は――女王になった。

 前の王は、見届けると息を引き取った。

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