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第一章:夜空の下で
雲ひとつない満天の星が見える夜空の屋上で 男女2人が立っていた
広大な宇宙の輝きが彼らを包み込んでいるかのようだった。
彼女は深い悲しみを抱えながらも 決意を込めて言葉を紡いだ。
「これが今 私が返せる精一杯の返事だよ。今度話せたら その時は答えはちゃんと返すからね カナタ」
彼女はカナタの耳へ言葉を預け微笑みを浮かべたまま ゆっくりと意識を失っていく。
その様子に戸惑いと困惑が交錯し 言葉を失ってしまう。
「なんで…こんなっ!?」
突然の出来事に混乱しながらも 彼女の足先から透明な石化になっていく様子を目の前で見守る。
涙がカナタの頬を伝って滴り落ちた。
2人の周りでは 星明かりが光のヴェールとなって広がり 宇宙の神秘的な輝きが彼らを包み込んでいるかのようだった。
それは彼女の悲劇とは対照的な程に美しい光景だった。