第十章:口径感染
「ム…ムセンビョウ??病気を生み出したのか?」
「そうよ。有無の無に感染の染と書いて無染病。端的にいうとどんな病原体も無効化する最強のワクチンみたいなものね。」
俺の問いに対し アオは体勢を変えつつ腕組みをしながら解説を続ける。
「この無染病は綺病患者の病原菌をサンプルを採取してそれを改良をした細胞なの。つまり無染自体も綺病の一種ということになるわね。」
一瞬意味がわからなかった。
「ちょっと待ってくれ、綺病を治す粘膜を作ったっていう認識で良いんだよな?それはどこにあるんだ?何か容器に入ってるのか?その無染病はどう使うんだ?」
「一気に質問しすぎよ…」
呆れたため息を一度吐くとアオは再度口を開いた。
「無染病は目に見えないわ。私の体内で巡ってる。」
アオは胸に手を当て 少し目を閉じ微笑んだ。
「それでね、療法なんだけど…その…」
さっきまで凛々しかった姿とは一変 急にもじもじし始めたアオ。
「キスして…口径感染させる…の」
アオは視線を逸らし一気に恥じらう女の子を魅せた。
奏託もそれを見て なんだか恥ずかしくなった。
「とりあえず、簡易的な説明ありがとう。また今度詳細を聞かせてもらうよ。あと時間もだいぶ経ったし屋上へ夜風でもあたりに行かないか?」
と、この空気を変えようと必死な奏託は人差し指を天井に向けて提案した。
「そ、そうね。」
2人は静かに部屋を出て屋上へと続く階段を登るが この間一度も会話はなかった。