第九章:無染病
「さっき説明した綺病は、この赤色になるの」
「でも、この島で過ごしてきた中で青色や黄色は見かけた事があるけど、赤色なんて見た事ないぞ?」
「当たり前だよ!だって何千万、何億人の内1人という確率なんだよ。」
「じゃあ、そう言った人と出会うことすら難しいわけか」
「そうでもないんだよ。ここは医療島、医療の知識や技術に特化した医師と、通常では治療することの出来ない患者が集う人工島」
少し重い空気が部屋を満たす。
「もしかしたら、奏託も日常の中で既にすれ違ってるかも知れないね。みんな病魔紋を隠してるだけだよ」
俺は疑問に思った事をそのままアオに聴いた。
「なんで隠す必要があるんだ?医療特化したこの島なら逆に見つけてもらって早く治してもらったほうが幸せだろ?」
「出来ないの。後ろ指刺されるし、避けられるし…」
「え?」
「奏託は得体の知れない病気がもし感染する可能性を秘めていて、その人に近づきたいと思う!?確かにここは医療島だけど普通の人々だって住んでる。その人たちから見たら、ただの危険な人間にしか見えないわけなの!」
その言葉は強く 少し怒り混じりの感情があった。
ハッと我に返ったように アオは小さく深呼吸をすると話の流れを戻した。
「あと綺病について独自で発見した事なんだけどね。名前が」
アオがいいかけた瞬間山積みになった本が倒れ 運命の悪戯かメモ帳らしき紙が奏託の手元にひらひらと落ちた。
そのメモ帳にはこう書いてあった。
-綺病プロファイル-
・綺病保有者は2種類以上の感染/発症は前例がない
・綺病発症者は身体の一部に特殊な形を模した赤色の病魔紋が浮かび上がる
・綺病患者の病魔紋は時間経過と共に一部消失していき最後は植物人間となる
・感染者の名前ーーー
最後まで目を通す前にアオに取り上げられてしまった。
「とにかく!綺病っていうのは現時代における知識や技量では完治出来る病じゃない。」
「でもね。作れたの。」
その言葉に奏託は勢いよく立ち上がり 驚きを隠せない顔でアオを見つめた。
「もしかして、それを俺に伝えるために?」
その言葉の返答として 彼女は小さくコクンと頷いた。
「対抗菌綺病特攻粘膜 -無染病-」