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プロローグ
【眠れる森の美女】
そんな御伽話を知っているだろうか
要約すると 呪いにかかった女の子が長い年月眠っている状態にされてしまう
生きているのに意識がない
きっと植物状態の事を言うのだろう
この物語の最後は王子様がお姫様に接吻をして呪いが解けハッピーエンド
でも実際はそうはいかない
接吻ひとつで呪いが解けるなんてあり得なかった
現実なら 不慮の事故や唐突な病気で人体は生死のグレーゾーンに閉じ込められる
生きる権利も死ぬ権利もわからぬまま回復を祈る事しか出来ない
そんな出来事が自分の身の回りで一度も起きて欲しくない
植物状態になって たったキスの一つで救える非現実はこの時の俺はまだ信じていなかった
しかし 幼い頃の彼女は大事そうに その絵本を抱きしめていた