女帝、董卓
初平3年(西暦192年)春、呂布と貂蝉の婚姻の儀が盛大に行われた。
董卓はこれを大いに喜び、使用人たちに祝儀をはずみ、民らにも祝いの酒と菜を振る舞った。
同年、献帝は皇帝の位を董卓に禅譲。
世は董卓の天下となった。
「各都市から選び抜かれた美男子を後宮に納めなさい! 天下は今よりこの董卓のもの! 逆らう者は首を切る!」
皇帝になってもやる事は変わらない。
後宮を作ること。
それが彼女の生きがいである。
集められた男たちは、そのうち美人の女官をあてがわれたり、能力を存分に発揮できる部署に配属されたりと、わりと幸せな感じで暮らしているらしい。
しかし当然のごとく各地の王や武将たちはこれに対して反抗した。
が、兵と民に支えられた董卓には力及ばず、多くがその軍門に降る。
こうして権力を握った董卓は、宦官のうちかなりの数を処刑し、その財貨を自らのものとした。
逆らった宦官には、彼女の得意武器『鞭』が唸りを上げたという。
曹操は爪を隠し、劉備は中原をさすらい、孫権は大河を支配する。
英雄たちはそのほとんどが無事に命を長らえ、雌伏の時を過ごしていた。
董卓は今日も戦さ場に出て行く。
彼女の強さの秘密は龍を味方につけた事。
少数のけして裏切らぬ手勢だけを供に前線へ出かけては天より雷を落とす。
それだけで敵兵はバラバラになり霧散した。
稀に雷鳴にも怖気づかぬ猛者もいたが、そのときは呂布と背後に控える軍が彼女の勝利をもぎ取ってくる。
董卓は多くのものに守られて、今日も高い輿の上で笑い続ける。
「お〜〜っほっほっほ!! 美男と才人をお出し! 董卓様のお通りよ〜!」
「逃げろーー! 董卓だ、董卓が出たぞーー! 男を隠せ、女は逃げろーーー!!」
都市は今日も大騒ぎである。
中原は多分、前より平和になったんじゃないかと。
そう思う人も結構いたりいなかったり。
「董卓様バンザーーイ! バンザーーイ! バンバンザーーイ! サイコーーー!!」