表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

その美熟女、董卓

 董卓には龍が憑いている。


 市井のみならず、兵の間や王宮でさえもまことしやかにそう囁かれていた。


 理由は、それまで人の妻として屋敷の奥で静かに暮らしていた彼女が、ある日突然街中で演説を始めたと思ったら多くの人間を虜にしてあっという間に軍を作り上げてしまったからだ。


 それにはもちろん、その美貌もものを言っている。


 恐ろしいほどの美貌と他を圧倒するカリスマ性。

 それが他者から見た董卓という女だった。




 軍を率いた董卓は街を治める役人を捕らえ、あっさり街を占領した。


 兵権を手にした董卓の進撃はここから始まる。




 少数の手勢で次の街を攻め落とし、さらに兵を手に入れた董卓は次々と支配下の街を増やし、いつのまにか中原に名を馳せる大将軍へと成り上がる。


 玉を散りばめた黄金の見上げるほど高い輿に乗り、都市から都市へと移動しながらその地で名高い男たちを集めて行く。


 その目的はハーレムを築く事。


 各都市(まちまち)から美男(イケメン)才人(インテリ)を集めて奢侈に溺れる。

 そんな生活を送る事だった。





「お〜っほっほっほっほ。この街にもなかなかいい男がいたわねえ」


「左様にございます、董卓様」


「顔も良ければ学もある、ついでに風雅な嗜みもひとつやふたつやみっつやよっつあるような、董卓様にふさわしい人物はさすがにおりませなんだが」


 そばに侍って追従(ついしょう)するのは、最近お気に入りの美しい女官2人。

 どこへ行くにも連れ回している。


 この董卓、男も好きなら女も好きともっぱらの噂で、いい噂はといえば何ひとつない。

 にも関わらずなぜか兵や女官たちの評判は良かった。


 とある宦官が彼女を裏で悪く言ったところ、彼は翌日、裸に剥かれてボコボコにされ、人相が変わった状態で河原で発見された。


 彼はしばらくの間、言葉の後ろに必ず「董卓様バンザイ」をつけて喋っていたという。

 そのクセが抜けた今も、朝晩必ず「董卓様のご無事を祈ってーー!!」と、董卓のいる方向に向けて万歳三唱をするとか。



 女官の言葉に気を良くした董卓はまたひとつ高笑い。


「ほほほほほ。仕方がないわ、これもまた定め。新人たちが入った祝いに今晩は宴といきましょう」


「「かしこまりました」」


「兵や官吏のみならず、民達にも酒と(りょうり)を配るように」


「「心得まして」」


「さあ、今日は騒ぐわよーーー!!」


 きゃああ、と嬉しそうな女達の黄色い声が響く。


 戦勝の宴はいつでも勝者に心地良いものなのだ。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ