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らっきょうの木

作者: お湯屋さん

昔々、とある国に、それはそれは素敵な絵を描く画家がいました。

その画家は珍しい物だけが大好きで、それの絵を描くためならば、なにがあろうと何処へでも行ってしまうほどの人でした。

ある日、画家の友人の旅人と一緒にご飯を食べている時、旅人は言いました。

「聞いた噂によると、この世には一年中らっきょうの花が咲く不思議な木があるらしいぞ」

それを聞いた画家はとても驚きました。

「なんだって!!それは本当かい!?」

画家は居ても立っても居られなくなり、すぐにその木を探す旅に出かけました。


画家はまず、お父さんの友達のお花屋さんのところへ尋ねに行きました。

「花屋さん花屋さん、一年中らっきょうの花が咲く木を知りませんか?」

お花屋さんは首を傾げながら言いました。

「ずぅっと南のほうにある国には、一年中花を咲かす木があるらしいですよ」

それを聞いた画家は、馬に乗ってひたすらに南に向かって進んでいきました。

山を越え谷を越え、遂に南の国に着いた画家は、とても落ち込みました。

そこに咲いていたのは、らっきょうの花ではなく、テイキンザクラという

南の暑い場所でなら一年中花を咲かせる、この国だと珍しくも何ともない赤い桜なのでした。


画家は次に、お母さんの友達の八百屋さんのところへ尋ねに行きました。

「八百屋さん八百屋さん、一年中らっきょうの花が咲く木を知りませんか?」

八百屋さんは首を傾げながら言いました。

「ずぅっと北のほうにある国なら、年中らっきょうの花が見られますよ」

それを聞いた画家は、馬に乗ってひたすらに北に向かって進んでいきました。

山を越え谷を越え、遂に北の国に着いた画家は、とても落ち込みました。

そこでは、いつでもらっきょうを収穫できるように、温泉の熱さを使った

特別な畑があり、ここでなら収穫前の花を咲かせたらっきょうが見られるだけでした。


画家は最後に、この国一番の物知りなおじいちゃんのところへ尋ねに行きました。

「おじいちゃんおじいちゃん、一年中らっきょうの花が咲く木を知りませんか?」

おじいちゃんは困った顔をしながら言いました。

「ずぅっと昔に聞いた話じゃとな、一年中らっきょうの花が咲く木に近づくと

黄泉の国というとても怖いところに連れていかれるそうじゃ。だから、誰もその

木に近づこうとしないし、誰もその木がある場所は知らないんじゃ」

画家は酷く落ち込みました。誰も知らないものなんて探すことはできません。

夜になり、画家は家に帰る途中、近道になっている森の中を歩いていると、らっきょうの花が

咲いている木を見つけました。でも、おじいちゃんの話を思い出した画家は、

怖くなって引き返して行きました。


朝になり、画家は夜にあったことをおばあちゃんに話してみました。

「おばあちゃんおばあちゃん、私は黄泉の国に連れていかれるのですか?」

おばあちゃんは大笑いしながら答えました。

「最近その話を聞いた子供たちが、いたずらで木に花が咲いたらっきょうを吊るしている

んじゃよ」

画家はとても安心しました。そしておばあちゃんはこう言いました。

「そもそもらっきょうは木には生らんよ。あれは土の中にできるものじゃよ」


おしまい

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