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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第五章『思惑』
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すわきりコラボ①


 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。更新がしばらく出来てませんでしたが、話の中での時間軸と丁度いいぐらいになりました。

 現在の流行りといえば、ポケモンでしょうか。皆さんはどちらを選びましたか?私はバイオレットの方です。色違い厳選、時間がどんどん溶けていくのが怖いですね。


 雑談も程々に、私は二人と別れると武藤マネージャーの元に向かう。


「マネージャー、お疲れ様です」

「ああ、諏訪さん!お待ちしてましたよ」


 オフィスのデスクで、パソコンとにらめっこをしていた武藤マネージャーに声をかける。

 デスクの上には、大量のファイルと数冊の大学ノートが置かれている。出会って初日は、まさかの時間の伝え間違いをした彼女だが、現在まで他のミスは無かった。前任の津田マネージャーに聞くところによると、大量のファイルは武藤マネージャーが独力で作り上げたマニュアルらしい。VTubarの過去のトラブルを確認し、その対応の差と結果から有事の際の対応を構築したらしい。中々の完成度で、トラブルが起きていないせいで今までの出番は無かったようだが、起きた際は2ndstreetではこのマニュアルを元に対応をする予定だとか。

 本人曰く、「テキストはコピペもできるお陰で、作成の手間はそこまででした」との事。いや、普通は内容の構築に手間がかかるのだろうとツッコみたい所だが、本人はケロリとしている。2ndstreet聖夜祭の準備や私の予定の管理なんかもしながら、2週間ほどでこれを作ってしまったのだから凄いものだ。ジェバンニか。

 さて、聖夜祭から暫し経ち、現在は1月の10日だ。クリスマスでのイベント、三期生のデビュー配信と、スタッフの負担が多かった分、2ndstreetの年始はまったりとしたものだった。勿論、三が日やそれ以降のそれぞれの配信にはスタッフが裏で控えていたものの、特にトラブルが起こることもなかった。

 前・津田マネージャーには「諏訪さん、正月はスタッフが少ないので、トラブルは起こさないでくださいね!フリじゃないですよ!?」と詰められたものの、そもそも私は帰省の関係もあって配信はしていなかった。


 先日、三期生の面々は無事初配信を終えた。特にトラブルも無かったのは僥倖と言えるだろう。裏で待機していたスタッフも、社長が差し入れしたお汁粉や甘酒を楽しみ、ほぼバカンス状態だったらしい。

 私達、所属VTubarもコメント(R)(O)せず見守(M)っていたものの、同時視聴などの枠は取っていなかった。

 そんなこんなで無事にデビューを終えた三期生は、順調な滑り出しを見せようとしていた。


「よ、よろしくお願いします!」

「こちらこそ、麒麟きりんさん」


 しかし、そうは問屋が卸さないのがVTubar……、と言うか2ndstreetだ。三期生を待ち構える1つ目の関門が初配信だとしたら、2つ目の関門。2ndstreetの一期生、二期生、即ち彼ら彼女らから見た先輩とのコラボである。被りが無いように、自由に相手を選べる。私に声を掛けてきたのは、案の定と言うか、草陰麒麟くさかげ きりん嬢だった。クロニア君は一二三嬢を、うつろ君は意外なことにフィリップを、渚嬢は予想通り小春嬢を選んだ。

 配信の形式も自由だ。既に配信を終えた渚嬢は、小春嬢と合奏をしていた。どうやら、ヴァイオリンを弾けるらしく、小春嬢のピアノと合わせて流行りの曲を演奏していた。

 虚君はフィリップとゲーム配信を、クロニア君は一二三嬢の占いをするそうだ。お互いの予定の兼ね合いもあって、デビュー順ではなく順不同になっている。


 麒麟嬢が提示してきた配信内容は雑談。アクションゲームやFPSの苦手な私に気を使ってくれたようだ。麒麟嬢は「私もアクションゲームとかは苦手で……。ポケモンとかばかりやってます」とのこと。私のデビュー時期もポケモンの新作を逃してしまったタイミングで、未だ配信の内容にはチョイスしていない。今度新作が発売するらしいので、そこからスタートだろうか。麒麟嬢とは裏で「大会でも開催したいですね」と話していた。


「みなさん、こんきりーん!2ndstreet三期生の、草陰麒麟です」


 どうやら、麒麟嬢には固定の挨拶が有るようだ。私もデビュー当時は授業をなんたらかんたらと言っていたが、配信内容とマッチしないのもあって辞めてしまった。通称が『先生』なのもあって、元教師というキャラクター?も崩れていない。そういえば、2ndstreetのなかで固定の挨拶があるのは一二三嬢だけだった。いろはやフィリップは適当に配信を始めるし、瞳に至っては挨拶すらせずに本題から入っていく。私が言うのもなんだが、2ndstreetはテンプレートなVTubarとは少し変わっている気がする。


「今日は、実は事務所のスタジオから配信してるんですよ!どうですか、音質も普段よりいい気がしませんか?」


[こんきりーん!]

[こんきりーん]

[こんきりーん!]

[今日の麒麟ちゃん、いつもよりテンション高い?]

[新しい玩具買ってもらってワクワクしてるみたい]

[麒麟ちゃん、今日は何階?]


「地下一階ですよ。もう、からかわないでください!」


 英国からの帰国子女という珍しい経験をしてきた麒麟嬢であるが、彼女が日本に来て言語以上に困ったことが有るという。

 それが、日本やアメリカとイギリスでの階層の数え方の違いだ。日本では建物に入るとそこが一階になるが、イギリスでは建物に入るとグランドフロア、その上に一階、二階と数えていく。慣れてきては居るらしいが、未だに間違えるらしく、配信では軽くネタにされているようだ。


「あ、今日はお客さんが居るんです。告知したので、母国子女の皆さんも知ってますよね?」


 麒麟嬢のファンネームは『母国子女』。帰国子女の麒麟嬢に対しての呼び方を意識しているのだろうか。他の候補に『帰国してない子女』なんてものも有ったらしい。麒麟嬢はそちらが良かったようだが、ファンの反対でこうなったと。中々の感性をしている。


「と言うことで。2ndstreetの先輩にして元教師、諏訪美旗先生です!」

「こんばんは、皆さん。2ndstreet二期生の諏訪美旗です」


 流れるコメントを見ると、私の配信よりも外国語率が高い。デビューして間もないが、既に独自のポジションを築いているようだ。私が面接をした少女がファンに受け入れられているという事実は、かつて送り出した教え子が社会で活躍しているのと似た気分になる。


「今日はご指名頂き、ありがとうございます」

「あはは、なんですかそれ。先生、ホストみたいですよ」

「麒麟さん、ホスト狂いだったんですか?」

「ちょ、止めてください、先生!皆、違うからね!?」


[草]

[先生、ホストみたい]

[まさかのカウンターパンチwww]

[非公式wikiにまた変な情報がwww]


「気を取り直して、麒麟さん。今回は雑談とのことですが、何をするんですか?」

「今日は、私のシュークリームに来てたやつを、先生と二人で処理していきます」

「処理って……」


 シュークリームとは、匿名でコメントやメッセージを送れるサービスの事だ。私も、開設したは良いものの、あまりちゃんと返信出来ていなかったりする。


「それじゃあ、一つ目!」

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