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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第4章『三期生』
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2ndstreet聖夜祭①

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 【2ndstreet】2ndstreet聖夜祭【オフコラボ】


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「皆さん、メリークリスマス。二期生なのに司会を押し付けられた、諏訪美旗です」


 2ndstreet事務所の防音スタジオには、一期生と二期生の8人が揃っている。打ち合わせは事前に済ませて居たため、配信開始まではスムーズに進んでいる。一番の懸念点だったフィリップも珍しく時間通りに到着している。


「さて、既にクリスマスも後6時間で終わろうとしていますから、自己紹介に時間をとるわけにもいきません。全員、一言でお願いします」

「皆さん、メリークリスマス。季節外れの美少女、桜木一姫です」

「みんなー、メリクリひふみ!楠ひふみだよ!」

「よう、お前ら。粉雪の王子様、フィリップ・安曇野だ」

「みんな、メリークリスマス。冬に咲く一輪の花、つばきいろはだよ」

「……寒いのは苦手。勿忘瞳」

「皆さん、メリークリスマス。私も季節外れなのかな……?青山小春です」

「みんな、メリクリ!空は曇ってても笑顔は曇らない、竹浪昼女だよ!」


[メリクリ!]

[新衣装……だと?]

[全員冬服作ったのか]

[こういう記念配信でやりそうな事を平然と出してくる2ndstreet]

[全員上着着てるのか]

[メリクリ!寒がりの瞳ちゃんに同意]

[瞳ちゃん雪だるまみたいに厚着してて草]

[クリスマスは副窓視聴も大変だ]


 私達は今回の聖夜祭にあたって、全員の冬服バージョンが新衣装として配られた。新衣装についての告知は一切なく、視聴者の驚きがコメントから伝わってくる。


「よう、お前ら!クリスマスの予定はどうしたぁ?」

「煽るな、フィリップ」

「そうですよ、皆さん折角予定を明けて見に来て下さってるんですから」


[フィリップェ!]

[俺らにクリティカルヒットなんだが]

[は?失望しました。フィリップのファン辞めます]

[うるせぇ!彼女にこの配信みたいって伝えたらフラレたんだよ!]


 現在の視聴者数は15万を超えている。どこの箱でもクリスマスイベントを実施している中でのこの数は、額面以上に多い。そんな視聴者に向かって、フィリップが開口一番で煽りを飛ばす。


「さて、視聴者の半分ぐらいが血涙を流しながら始まった2ndstreet聖夜祭ですが、終了時間は22時を予定しています」

「パーティーゲームは沢山持ってきてるよ!」

「昼女ちゃん、幾ら何でも多すぎない?」

「大きな鞄持ってきてるなぁ、って思ってたけど」

「一日遊び尽くすつもりですか……」


 視聴者には見えないが、昼女嬢が手に持ったバッグを上に掲げる。大きさはエナメルぐらいか。中身は見ていないが、小春嬢達の発言を聞くに一杯にボードゲームが入っているのだろう。


「持ち物といえば、私と先生、小春さんのお土産も被りましたね」


 話を広げるように一姫嬢が言う。あって困ることは無いかとケーキを持っていった私だが、見事に一姫嬢と小春嬢に被ってしまった。それぞれ持ってきていたケーキの種類が違ったのが救いか。


「皆、好きなのを取って、残りはスタッフさんたちの差し入れになる予定です」

「そうしたら、今度は数が足りないって社長がホールケーキを買いに行きましたね」

「そう言えば、帰ってこないですね」

「しゃちょーに確認したら、売り切れ続出で結構遠くまで買いに行く事になったらしいよ」


 私達8人で食べるには多すぎるケーキも、差し入れすることになったら数が足りない。気を利かせた社長が「私は居ても手伝えないからね。買いに行ってくるよ」と車の鍵を持って出掛けていった。これでは、まるで下っ端のようだ。良く言えば、社長の人徳だろう。雪で渋滞もしているだろうし、帰ってくるのはもう少し後になるか。


「社長といえば、朝のニュースに社長が出てましたね」

「あー、美旗がトゥイッターで言ってたな。俺は見てないけど」

「えー、私も見たかったなぁ」

「フィリップといろはは生活習慣直せよ」


 話題は社長が朝のニュースでインタビューを受けていた話に移る。話の流れで確認したところ、見たのは私と一姫嬢だけのようだ。一二三嬢と瞳、小春嬢は起きていたが別の番組を見ていたとのこと。いろはと昼女嬢は寝ていたらしい。フィリップは案の定、オールをしていたとか。それぞれの生活習慣が顕著に見える。

 他の箱のVTubarの切り抜きを見る限り、2ndstreetはマトモな生活習慣をしている傾向が有るようだ。昼女嬢は前日の深夜配信が原因のようである。2ndstreetで生活習慣が狂っているのはフィリップといろはだけか。この二人は大学生の時にも中々に遅刻をしていたし、出勤時刻や退勤時刻の無いVTubarは天職だったのでは無かろうか。


「じゃあ、早速ゲームをやろうぜ」

「フィリップ、もう少しタイミングを考えたり出来ないのか?」


 雑談は唐突なフィリップの一言で終わりになった。予定では、もう少しクリスマスを題材に時間を繋ぐ筈だったが、まあ仕方がない。


「じゃあ、まずは王道のトランプからですかね?」

「トランプと言っても、何をしようか?」

「大富豪とかどうかな?」

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