2ndstreet聖夜祭①
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【2ndstreet】2ndstreet聖夜祭【オフコラボ】
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「皆さん、メリークリスマス。二期生なのに司会を押し付けられた、諏訪美旗です」
2ndstreet事務所の防音スタジオには、一期生と二期生の8人が揃っている。打ち合わせは事前に済ませて居たため、配信開始まではスムーズに進んでいる。一番の懸念点だったフィリップも珍しく時間通りに到着している。
「さて、既にクリスマスも後6時間で終わろうとしていますから、自己紹介に時間をとるわけにもいきません。全員、一言でお願いします」
「皆さん、メリークリスマス。季節外れの美少女、桜木一姫です」
「みんなー、メリクリひふみ!楠ひふみだよ!」
「よう、お前ら。粉雪の王子様、フィリップ・安曇野だ」
「みんな、メリークリスマス。冬に咲く一輪の花、つばきいろはだよ」
「……寒いのは苦手。勿忘瞳」
「皆さん、メリークリスマス。私も季節外れなのかな……?青山小春です」
「みんな、メリクリ!空は曇ってても笑顔は曇らない、竹浪昼女だよ!」
[メリクリ!]
[新衣装……だと?]
[全員冬服作ったのか]
[こういう記念配信でやりそうな事を平然と出してくる2ndstreet]
[全員上着着てるのか]
[メリクリ!寒がりの瞳ちゃんに同意]
[瞳ちゃん雪だるまみたいに厚着してて草]
[クリスマスは副窓視聴も大変だ]
私達は今回の聖夜祭にあたって、全員の冬服バージョンが新衣装として配られた。新衣装についての告知は一切なく、視聴者の驚きがコメントから伝わってくる。
「よう、お前ら!クリスマスの予定はどうしたぁ?」
「煽るな、フィリップ」
「そうですよ、皆さん折角予定を明けて見に来て下さってるんですから」
[フィリップェ!]
[俺らにクリティカルヒットなんだが]
[は?失望しました。フィリップのファン辞めます]
[うるせぇ!彼女にこの配信みたいって伝えたらフラレたんだよ!]
現在の視聴者数は15万を超えている。どこの箱でもクリスマスイベントを実施している中でのこの数は、額面以上に多い。そんな視聴者に向かって、フィリップが開口一番で煽りを飛ばす。
「さて、視聴者の半分ぐらいが血涙を流しながら始まった2ndstreet聖夜祭ですが、終了時間は22時を予定しています」
「パーティーゲームは沢山持ってきてるよ!」
「昼女ちゃん、幾ら何でも多すぎない?」
「大きな鞄持ってきてるなぁ、って思ってたけど」
「一日遊び尽くすつもりですか……」
視聴者には見えないが、昼女嬢が手に持ったバッグを上に掲げる。大きさはエナメルぐらいか。中身は見ていないが、小春嬢達の発言を聞くに一杯にボードゲームが入っているのだろう。
「持ち物といえば、私と先生、小春さんのお土産も被りましたね」
話を広げるように一姫嬢が言う。あって困ることは無いかとケーキを持っていった私だが、見事に一姫嬢と小春嬢に被ってしまった。それぞれ持ってきていたケーキの種類が違ったのが救いか。
「皆、好きなのを取って、残りはスタッフさんたちの差し入れになる予定です」
「そうしたら、今度は数が足りないって社長がホールケーキを買いに行きましたね」
「そう言えば、帰ってこないですね」
「しゃちょーに確認したら、売り切れ続出で結構遠くまで買いに行く事になったらしいよ」
私達8人で食べるには多すぎるケーキも、差し入れすることになったら数が足りない。気を利かせた社長が「私は居ても手伝えないからね。買いに行ってくるよ」と車の鍵を持って出掛けていった。これでは、まるで下っ端のようだ。良く言えば、社長の人徳だろう。雪で渋滞もしているだろうし、帰ってくるのはもう少し後になるか。
「社長といえば、朝のニュースに社長が出てましたね」
「あー、美旗がトゥイッターで言ってたな。俺は見てないけど」
「えー、私も見たかったなぁ」
「フィリップといろはは生活習慣直せよ」
話題は社長が朝のニュースでインタビューを受けていた話に移る。話の流れで確認したところ、見たのは私と一姫嬢だけのようだ。一二三嬢と瞳、小春嬢は起きていたが別の番組を見ていたとのこと。いろはと昼女嬢は寝ていたらしい。フィリップは案の定、オールをしていたとか。それぞれの生活習慣が顕著に見える。
他の箱のVTubarの切り抜きを見る限り、2ndstreetはマトモな生活習慣をしている傾向が有るようだ。昼女嬢は前日の深夜配信が原因のようである。2ndstreetで生活習慣が狂っているのはフィリップといろはだけか。この二人は大学生の時にも中々に遅刻をしていたし、出勤時刻や退勤時刻の無いVTubarは天職だったのでは無かろうか。
「じゃあ、早速ゲームをやろうぜ」
「フィリップ、もう少しタイミングを考えたり出来ないのか?」
雑談は唐突なフィリップの一言で終わりになった。予定では、もう少しクリスマスを題材に時間を繋ぐ筈だったが、まあ仕方がない。
「じゃあ、まずは王道のトランプからですかね?」
「トランプと言っても、何をしようか?」
「大富豪とかどうかな?」