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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
53/78

熱は冷めて

 念の為に申し上げますが、この作品はフィクションです。特定の人物、団体、その他を侵害する目的で書いている訳では有りません。なお、この回の更新予約をしているのは4月2日です。何かあっても邪推は辞めてください。


 天秤秤は、私が想像していたほど悪意のある人物では無かった。

 昨晩のコラボ配信、リアル逆転裁判は、天秤秤側の証拠不十分と言う形で決着がついた。ゴシップ系VTuberと企業勢の対談コラボという目を引く企画は中々の反響を呼んだようで、私の登録者数は一気に1万人ほど増えていた。

 片や天秤秤側も、今までの印象で悪いイメージを持たれていたものの、本人は面白いと登録者数を増やしていた。増加は私よりも多く、実に3万人ほど増えていたから驚きである。


『今回の件は、俺の裏取り不足が原因で多大な迷惑を掛けたことを、ここで改めて謝罪する』


 昨日の配信の、天秤秤の最後の一言だ。トゥイッターでハッシュタグを確認する限りでは、彼に批判がそこまで向いていないことも含め、私の目論見はほぼ成功したと言えるだろう。

 これにて、私の炎上は後腐れなく解決したと言えるだろう。


マネージャー[美旗さん、お疲れ様です]

諏訪美旗[今回のコラボ、事務所の皆さんにはご迷惑をお掛けしました]

マネージャー[本当ですよ!私がどれだけ頭を下げて回ったか……]

諏訪美旗[返す言葉もありません……。ありがとうございました]

マネージャー[色々と言いたいこともありますから、今お時間ありますか?]

諏訪美旗[大丈夫です]


 解決していなかった。モーニングルーティンを終えた私は、マネージャーと通話をする。


『まずは、お疲れ様です、と。炎上は中々に神経がすり減らされますから。マネージャーとして、無事解決したのは嬉しいです』

「ありがとうございます。でも、そこまで気にしてませんでしたよ?」

『ふふ、知ってますよ。美旗さんはそういう人です。でも、それでも心配してたんです』


 マネージャーの一言目は、とても優しかった。今回の件で、私がどう思っていたかは兎も角、様々な人が心配をしてくれていた事も知っている。謹慎中にこまめに通話をかけてきてくれた小春嬢と昼女嬢。酒を持って泊まりに来たフィリップ。DMやトークアプリで連絡をくれた一姫嬢や一二三嬢、王姫嬢、清明君。何故か猫カフェで猫の写真を撮って送りつけてきたいろはと瞳。

 話やキャラクターと言う、人格を根底に置いたVTuberと言う仕事の特性を実感した機会だった。


『でも、突然秤さんとコラボをしたいと言ってきた時は驚きましたよ』

「私も、中々に危ない綱渡りをした自覚はありますよ。でも、その方が面白いでしょう?」

『全く、美旗さんも型破りになってきましたね。一期生のマネージャーの気持ちがわかりました』

「それは、反省しています」

『でも、こう言う言い方は何ですが、VTuberは結果を出した方が正義と言う風潮もあります。ですから、今回の美旗さんの行動は正しかった』


 マネージャーが言う。ゴシップ系VTuberと企業勢のコラボは、確かに前例の無いものだった。私自身も、絶対に成功するという確信を持って行ったものでは無かった。普段ならしないような綱渡りをする。それは、私自身が炎上と言う熱に突き動かされたとも言える。


『秤さんは、美旗さんを取り上げた配信のアーカイブと動画を削除してくれました。騒ぎは、一先ず終わったと言えるでしょう』


 天秤秤は、配信で言った通り、私に対しての動画を消してくれたようである。話していた限り、その辺はしっかりしている人物という印象を受けた。


『2ndstreetでは、様子を見ながらではありますが、彼の発言に対しての反応を解禁するという方針になりました』

「それは、良かったです。彼とは、もっと話したいと思っていましたから」

『はい。コラボについては、サブチャンネルのみではありますが、許可は降りると思います。まあ、これも様子を見ながらではありますが』


 天秤秤は、ゴシップ系VTuberとして活動するアカウントと、雑談やゲーム配信をメインにするサブチャンネルを持っている。2ndstreetでは、ゴシップ系VTuberとしての活動は看過できないものの、サブチャンネルをベースとした配信については制限を厳しく設けないと言う方針に変更したようだ。既に、公式からのアナウンスも出ている。昨日の今日で、仕事が早いものである。


『ああ、それともう一つ』

「何でしょう?」


 その後は、近況など、雑談をしていたルーティン通話の終わり際、マネージャーが思い出したように言う。


『皆さんには、改めて情報を送りますが』


 私がデビューしてから、約半年と言う月日が経った。既に私を始めとした二期生の登録者数は5万を超え、安定してきた。一方で、安定とは停滞と同義であることも確かだ。それぞれのチャンネル登録者の上昇は、ゆるい右肩上がりになっている。


『2ndstreet三期生の募集を行います。美旗さんも、配信中に、タイミングを見計らってで良いのですが、告知を行ってください』

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