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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
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天秤秤2

 念の為に申し上げますが、この作品はフィクションです。特定の人物、団体、その他を侵害する目的で書いている訳では有りません。なお、この回の更新予約をしているのは4月2日です。何かあっても邪推は辞めてください。


 あれから数分ほど雑談した後、私達は本題に入った。


「それでは、検察官。被告人の求刑を」

『お前が裁判長するのかよ……。まあいい。被告人諏訪美旗は、教員という立場でありながら、女生徒と交際した容疑がある』

「あ、最近似たようなアカウントが言いたい放題言ってましたけど、そこだけなんですね」

『いや、既婚者だとかなんとか、流石に信じられないだろ。俺が発言の根拠にするのは最初のアカウントと、もう一つのアカウントだけだ』

「では弁護人。被告人の弁護を。えー、弁護人の諏訪美旗です。本日は……」

『いい加減三文芝居辞めろよ!話が進まん』

「では。ここからの私の発言は、2ndstreet所属の諏訪美旗としての公式見解です」


 テンポ良く進むコラボ配信。そう言えば、天秤秤はサブチャンネルでゲーム配信などを行っていたことを思い出す。騒ぎになる前に一度覗いたが、内容は面白かった。彼のメインでの活動がデバフを掛けているのだとしたら、勿体ない事である。


「私、諏訪美旗は私立高校での教員時代に、生徒と交際をした事実は一切ありません。また、それに付随して様々な流言がありますが、こちらも事実無根です」

『完全否定か』

「はい。ここは貴方と平行線ですね。では、貴方の主張する、私が女生徒と交際していたという証拠を出してください」


 天秤秤は、自分の動画で証拠については本人のプライバシーの為と明かさなかった。しかし、この状況で正々堂々と相対した私に対してプライバシーと言い張れば、視聴者からの信頼を失いかねない。案の定、彼からのDMで一つの動画が送られてきた。


『これは、とある私立高校のサイトに上げられていた、宣伝の為の模擬授業の動画だ。この教師は、どうやら素行不良で度々学校から厳重注意を受けていたらしい』

「なるほど、取り敢えず見てみましょうか」


 模擬授業の内容は、日本中世史、戦国時代の織田信長に関するものだった。内容については長いので割愛し、授業の掴みの部分だけを映す。


『件の女生徒が諏訪美旗とこの教師を結びつけたのも、声が似ているということからだ』

「なるほど、反論しましょう。1つ目に、この高校は私の務めていた学校とは違います。が、それについては私の前の勤め先を明かす訳には行きませんから保留で」

『そうだな。それで、他にもあるんだろ?』

「ええ。2つ目です。私は以前より日本史の教師をしていたと公言していましたが、専門は特に古代史なんです」

『それが?』

「公式サイトに上げるということは、この授業の出来次第で宣伝になり得るわけです。普通だったら、その教師の専門分野の授業をさせるはずです」

『お前が嘘を言っている可能性は?』

「それについては、以前のみるくらいぶさんとのコラボが根拠になります。みるくらいぶの新人さんは全員タイムスリッパーですが、彼らの来た時代は全て平安時代まで、つまり古代史から中世史の最初期までです。もし戦国時代をテーマにしていたら、私も安請け合いはしませんでした」

『それは……』

「そうでしょう?専門分野で無い時代を取り扱うのであれば、それなりに文献を読み漁らなくてはいけませんから」

『だが、お前は日本史の教師だったんだろう?』

「授業をするぐらいなら何とかなります。教科書でやる範囲の総洗いで済みますから。こう言っては何ですが、戦国時代の知識については、私より歴史オタクの方が多いと思いますよ」


 しかしまあ、反論としては根拠が弱いのも事実だ。授業を受けていても、その教師がどの分野を専門にしているかと言うのは解りにくい。大学の講師ともなれば別だが。


「私と声が似ていると言う点に関しましては何とも。骨伝導のせいで、案外自分の声は分かりにくいですから。これはコメントの皆さんに判断はおまかせします」

『そうだな。声が似ているか何て、主観でいくらでも変わるからな』


 暫くコメントを見る。自分では似てないと思うが、コメントでチラホラと似ているという発言がある。


『それにしても、諏訪美旗。お前の視聴者は治安が良いな』

「そうでしょうか。たまに他の方の配信を見ることもありますが、そこまで違いは感じませんよ?」

『いや、全然違うな。正直、呼ばれたときはコメントで叩かれる事も覚悟してたんだが』

「そんな事はしないでしょうし、させませんよ。呼んだ側の責任で」


 天秤秤が、そう言えばと言う。私が見ている限り、視聴者の民度が他と大きく違うとは思わない。まあ、よく見かける名前で、トゥイッター何かで問題を起こしている人が居ないのも確かだ。


「それでは、検察官。次の証拠を……」

『三文芝居、まだ続いていたのか!』



 誤字報告、ありがとうございます。日本語って難しいものですね。なんてったって日常で使っているはずの日本人が間違えるぐらいですから。

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