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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
51/78

天秤秤

 念の為に申し上げますが、この作品はフィクションです。特定の人物、団体、その他を侵害する目的で書いている訳では有りません。なお、この回の更新予約をしているのは4月2日です。何かあっても邪推は辞めてください。


 私の謹慎が解けた。あれから約一週間、予想通り、本物(と思われる)アカウントと偽物(と思われる)アカウントの間で相互の矛盾から対立が起こり、見るも無様な惨状になっていた。当事者であり被害者である私からすれば、実に愉快な現状である。

 小春嬢や昼女嬢からは、毎日のように[大丈夫?]といったメッセージが届き、隔日ペースで雑談の通話もしていた。どうやら、私のメンタルを気にしていたようである。二人は、私がそんなことをする筈はないと、端から疑ってすらいなかった。


「私は何ともないから、気にしなくて良いぞ?」

『いえ、そちらも心配だったのですが……』

『どちらかと言えば、先生の行動の方を心配してたかなー。とんでもない事をしそう』

「失礼な。そんなことはしないって」


 ……二人は、私を爆弾魔か何かだと思っているのだろうか。流石にこの状況で火に油を注ぐことはしない。……するかもしれない。まあ、謹慎になるかどうかで動きは変わっていただろうから、断言はできない。

 先日のメッセージは、無視されるかとは思っていたが、どうやら受けてくれたようである。今日は、そのコラボの用意をしていた。


「皆さん、お久しぶりです。最近、既婚者であるとか実は教員免許を持っていないとか、新しい設定が追加され続けている諏訪美旗です」


[草]

[おかえり!]

[帰ってきた途端不穏で草]

[www]

[気にしてないだろうなとは思ってたが、ここまでとは]

[メンタル超合金で笑う]


「メンタル超合金、響きが良いですね。設定に追加しておきましょう」


[さらに草]

[王水でも腐食しなさそう]

[謹慎明けに問題発言で謹慎になりそう]

[このコメントは削除されました]

[おっ、お客さんいたぞ?]

[初見さんかな?w]


「はいはい、煽らないでくださいね。配信者として一番心配なのは、コメントで殴り合いが起こる事ですから」


 コメントがおかえり!という文面で溢れる。リスナーも私に気を使っているのか、アンチコメントを流すようにコメントが増えていく。その文面が煽りにしか見えないのは問題だが。


「まあ、当たり屋に当たられてトラブルも起きましたが、今日からは普段通りに配信をして行きますね」


 現在の配信画面は、『復帰記念コラボ』という文面が踊っている。先程から、コメント欄でもコラボ相手は誰なのかと疑問が流れている。あまり焦らすのも良くないと、私はコラボ相手を呼ぶ。


「さて、お相手は誰だと思いますか?ヒントは、最近私と縁があった人物です」


[せーめー?]

[一番ありそうなのはみるくらいぶの新人だよなぁ]

[でも、このタイミングでお相手がゴーサイン出すか?]

[フィリップなら気にせず飛び込みそう]

[フィリップは俺ら以上にアンチ煽りしそうだから無いだろ]

[ごまだんご先生とか?]

[二期生コラボが順当だよなぁ……]


『こんばんは。この世の不条理を量って裁く!個人勢VTuberの天秤秤だ』

「こんばんは。配信でははじめましてですね」

『俺も、まさかオファーが来るとは思ってなかったけどな』


 天秤秤が声を入れると同時に、私は画面に立ち絵を表示する。


[!?]

[は?]

[おい企業所属!]

[これは流石にまずい]

[いや草]

[当たり屋に当たってくスタイル]

[メンタル超合金とは、言い得て妙]

[初見です。相変わらずイカれてますね]

[↑初見じゃないだろw]


「と言うことで、今回のコラボ相手の、天秤秤さんです」

『今回は、諏訪美旗を裁きに来た。……アウェー感が凄いな』

「ちなみに、事務所からは許可が出てます。かなり渋られましたが」

『だろうな。真っ当な感性を持ってたらこんな事しないだろ』

「さて、皆さん。彼に思う事もあるかも知れませんが、今回は私のお客さんですから、失礼の無いように」

『なんなら呼ぶこと自体失礼まであるだろ』


 彼とは、配信前の一時間ほど通話をしていた。話す限り、やっている事は兎も角としても、なかなかに取っつきやすい人物ではあった。


「本日の配信は、[リアル逆転裁判]でトゥイートしてくださいね」

『おい、諏訪美旗。コメントで、同接十万越えたって来てるぞ?』

「本当に貴方、活動内容以外はマトモですね」

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