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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
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配信者としての性


 天秤秤が動画を出した翌日。私のトゥイッターは荒れに荒れていた。

 内容は大きく分けて2つ。一つは、私が女生徒と交際していたと言う件のトゥイートや、天秤秤の動画を見て私を批判する内容。[教師として〜]という穏便?なものから、ストレートに[辞めろ]というものまで。対してもう一つは私を弁護するもの。私の最後のトゥイート、即ち[事態を重く見て、謹慎します]という内容の呟きに、ツリーを増やすように大量のトゥイートが来ていた。

 しかしまあ、内容が内容である。議論が紛糾し互いに暴言が出たり、或いは私の個人情報として、全く関係の無い住所や誰とも知らない本名が出たり。幸いなのは、私のデビュー頃からの視聴者がそれに殆ど参加していない事か。

 配信の予定が無い以上、普段していたルーティンも崩れる。読もうと思いながらも放置していた本や、配信でやりたいと思っていたゲームをしながら時間を潰す。

 先程マネージャーから連絡があり、件のアカウントは申請により凍結したようである。まあ、ほぼ初期設定のままであったアカウントを一つ凍結したところで、根本的な解決にはならない。むしろ、ポケットの中のビスケットのように分裂したようで、似たようなアカウントがいくつか現れていた。

 ここまで来ると、もはや収集もつかない。ただでさえ信憑性の薄いアカウントが、これまた信憑性の薄い情報を垂れ流し、それを見た人間は立場に依らず踊らされる。

 曰く、私は既婚者であるとか。曰く、私は教員免許を持っていないのに授業をしていたとか。尾ひれに背びれ、或いは羽や輪っかまでつけて飛んでいく。何かの歌の歌詞で『口に立てる端から戸が喋る』などとあったが、まさにその通りだ。汗血馬より早く広まる噂は、既に原型をとどめてすら居ない。


「これ、ネタになるな」


 悲しいかな、半年ほどの配信者生活のせいか、面白いのではないかとすら感じ始めている。私に向けられていた筈の誹謗中傷すら、いまや噂話によって形作られた私ではない『何か』に向かっている。

 このまま行けば、情報だけが錯綜し、相互の矛盾点から自壊することだろう。発信者は、自分こそが本物だと言い張り、互いの信奉者による舌戦が始まる。さて、天秤秤はどのように真偽を判断し、ネタにするのか。最近、毎晩動画を上げているようなので、今日の動画が楽しみである。


諏訪美旗[私の謹慎が解けたら、コラボをしませんか?]


 私はとある人物にメッセージを送り、日常に戻った。

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