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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
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安倍晴明


 みるくらいぶの新人がついにデビューした。厩太子嬢、安倍晴明君、土師天神嬢、猿女礼嬢、御子嬢の5人である。先日のみるくらじおに参加したものの、別の事務所の所属である私にとってはそこまで重要なイベントではない。……筈だった。


「心中、お察ししますよ。今度胃薬をお送りしましょうか」

『ありがとうございます。でも、洒落にならないですよ……』


[草]

[苦労人の雰囲気がせーめーから伝わってくる]

[お互い同期の纏め役みたいになってるからね]


 みるくらいぶの新人のデビューから約1ヶ月。私は、安倍晴明とコラボをしていた。何気に彼の初外部コラボである。発端は彼らのデビュー直ぐに遡る。

 みるくらいぶ新人コラボ配信は、浦島太郎電鉄というすごろくゲームの配信であった。様々なカードを駆使して日本の駅をモチーフにした目的地を目指すゲームが浦島太郎電鉄であるが、そこで面倒な事が起こった。私も、デビュー前に企画で呼ばれた縁もあり見ていたが。

 なんと、天神嬢がうどんを啜り始めたのである。


『あのー、土師さん。今何をしているので?』

『うどんを食べてます』

『配信中なんですが……』

『夜ご飯まだだったので』


 これを発端に、残り3人も自由奔放になり始めた。


『太子さんら太子さーん!?』

『あ、ごめんごめん。お湯沸かし始めてました』

『何で!?』

『パスタを茹でようと』

『土師さんに対抗しなくてもいいから!』

『ズゾゾゾゾ』

『御子さん!貴女まで何啜ってるんですか!』

『カップ焼きそばを』

『収拾がつかない!』

『……』

『猿女さん、せめて反応はしてくれないかな!』

『……』

『猿女さん!』

『ズゾゾゾゾ、寝てます?』

『猿女さん!?』


 なんと、手番が礼嬢のままで動かない。30分ほどそのまま、フリーダムに振る舞う女性陣と、それにツッコミを入れ続ける清明君。盛り上がるコメント欄。起きたかと思えばどこかに行ってしまう礼嬢。気を使って(面白がって)コメントに現れるみるくらいぶの先輩陣。一日で、清明君の苦労人属性が定着したのである。


『皆さん、悪い人では無いんですが……。幼稚園の先生になった気分です』

「何と言いますか……。話題性はありましたよ?」

『僕のメンタルと引き換えですけどね!』


[草]

[あのトラブルのせいで5人のユニット名が『麺屋組』になったのは伝説だよなw]

[なお4人揃って事務所に後で怒られたらしい]

[なんとかせーめーのおかげで配信としてのラインは保ってたけどな]

[なんなら面白かったまである]

[まさか礼ちゃん、寝ぼけたまま煙草買いに行っちゃうとは]


 結局、半年の決済までで3時間も経過してしまっていた。挙げ句、カードの対象をランダムにすれば狙ったかのように選ばれる清明君。あれだけ苦労して最下位という結果には涙を禁じえない。


『まあ、僕としては大事にならなかったので良かったんですが……。あの配信の後で、それぞれ麺類の会社の案件貰えましたし』

「怪我の功名、でしょうか。そう言えば、今日のコラボのテーマについてですが」

『ああ、それなんですが。先日、弥魔田先輩からコラボのオファーが来まして。決戦をほぼ無傷で乗り切った先生に、アドバイスを頂こうと』

「なるほど」

『弥魔田先輩と先生のコラボは僕もリアルで見ていたんです』

「それは。ありがたいと言いますか、小恥ずかしいと言いますか」


 清明君からのコラボのお誘いは、王姫嬢への対策が目的だったようである。V界隈では色々な意味で有名な王姫嬢の雑談コラボは、コラボ相手のカップリングで王姫嬢とそのファンが楽しむという尖った内容である。一部のカプ厨――カップリング厨――にも人気のある配信で、内容の割に炎上する心配も少ない。対策という対策は組まなくても、特に問題ないものではある。

 こうして、夜は更けていった。

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