二期生コラボ①
さて、現在時刻は20時30分。初コラボまで、後30分となった。
「では、小春さん、昼女さん。打ち合わせは以上です。お二人とも、私のせいでこのようなことになってしまい、巻き込んでしまいました。申し訳ありません」
『あの、先生は私のフォローをしてくれたのに、謝らないで下さい……』
『そうそう。私としては、こんなビックウェーブに巻き込んでくれて、感謝だよ!』
「ありがとうございます。配信まではあと30分ほどありますから、少し休みましょう」
小春嬢、昼女嬢とは1時間ほど打ち合わせをしていた。トークテーマや進行、特に小春嬢の緊張を解く目的で。小春嬢は人見知りはするもののコミュニケーションが下手な訳ではない。
『ねぇ、小春ちゃん。初配信はどうだった?私は緊張しちゃって、話したいこといくつか忘れちゃった!』
『昼女ちゃん、あれで緊張とか言ってたら、私は緊張してたどころじゃないよ!先生にフォローもしてもらって……』
『先生、私の初配信は見てた?小春ちゃんにばっかり構って……』
「見ていましたよ。昼女さんはやはり話が上手いですね。それにアカペラで歌ってましたが、プロ並みでしたよ」
『えへへ、ありがと!そう言えば、事務所の近くに美味しそうなお店を見つけてて……』
小春嬢も昼女嬢も、私の事を先生と呼んでいる。諏訪美旗の設定上も全く問題ないのだが、生徒や保護者に呼ばれるのと違って少し照れ臭い。
すぐに雑談は事務所の近くの飲食店に話題が移った。次に3人が集まったときに件の飲食店に行くことになった。
しかしまぁ、小春嬢、昼女嬢共に初配信の時点からファンが多い。小春嬢の初配信の切り抜きから私を知った人達-所謂ライト層-とは視聴者の傾向も変わってくるだろう。これからの二人との絡みは、上手くやらなければ容易く炎上する可能性もある。気を付けなければ。
『あっ、そろそろ時間だね!先生も小春ちゃんも、気合い入れてこう!』
『が、頑張ります!』
「ええ、よろしくお願いします。それでは、私が声をかけたらミュートをオフにして下さい」
手元の目覚まし時計は、20時59分32秒を刻んだ。デュアルモニターのメモ帳も、準備は出来ている。
私は1度深呼吸をして、カウントダウンの動画を流す。3、と昼女嬢のミニキャラが指を折る。2、と小春嬢のミニキャラが指を折る。1、と私のミニキャラが指を折る。このカウントダウンは小春嬢が一日で用意をしたものだ。今朝マネージャーから話を聞いて、半日ほどで作ってくれたらしい。
「皆さん、こんばんは。本日の授業を始めます」
私は、時間が変わると共に画面を変え、マイクのスイッチをオンにした。
[2ndstreet二期生コラボ 反省会編]
「皆さん、こんばんは。本日の授業を始めます」
私が声を入れると同時に、コメント欄が加速する。
[よろしくお願いします!]
[おっ、始まったぞ]
[まさかデビュー翌日にコラボとは……]
[今のカウントダウン何?めっちゃ可愛い]
[切り抜きから]
「さて、私達二期生のデビューから一晩開けました。昨晩、小春さんの切り抜きが投稿されたようで、そこからいらっしゃった人も多いかと思います。早速ではありますが、本日の反省会の参加者をお呼びしたいと思います。まずは小春さん」
『こ、こんばんは!2ndstreet所属の青山小春です。昨日の初配信の、反省点が一番多い美大生です……』
「ありがとうございます、小春さん。彼女のチャンネルのトゥイッターのURLは概要欄にあります。ぜひ、登録とフォローを。ちなみに本日のカウントダウンを製作したのは小春さんです」
[マジか!?]
[めちゃくちゃ絵上手いな]
[小春、ちゃんと自己紹介を出来るように……成長したな(後方腕組みファン面)]
「さて、次はもう一人の参加者、昼女さんです。どうぞ」
『こんばんは、追手の皆は昨日ぶり!二期生の殿、竹浪昼女です!』
「初見の方に補足しますと、追手は昼女さんのファンネームです。初配信前に変なことを教えた私も悪いのですが、皆さん、悪ノリは程々にしてくださいね。昼女さんも、嫌なら今からファンネーム変えても良いんですよ?」
『私は追手って響き好きだから気にしないで!あ、私のチャンネルとトゥイッターのURLも概要欄にあるから登録してね!』
[出たな、二期生のポン枠!]
[相変わらず明るい話し方で元気になるな]
[先生気遣い出来てえらい!]
[まあ、悪ノリが良くないってのは正しい]
[昼女ちゃんのプレッシャーになるのは良くない]
[昼女ちゃん反省点あるのか?]
コメントを見ると、昨日の私の配信に居た人以外も結構来ている。デビューの翌日にコラボというインパクトもあって、話題になっているのだろう。
私はメモ帳を見ながら進行を進める。
「さて。本日の話題は、デビューして一日が経った感想と、昨日の初配信の反省です。あと、昼女さんがトゥイッターで話して欲しいことを募集していましたので、その中からもランダムに選びます。マネージャーさんに選んで貰ったので私達もどんな話題が振られるのかは知りません」
『その、話すのは苦手ですが頑張ります……』
『どんなのが来るかわからないからドキドキだね!』
シュークリーム-匿名で質問を送れるサービス-というのもあり、一期生の方々はそれを利用しているが、私達二期生はまだ開設していないため、質問はそちらで募集することになった。ハッシュタグをちらっと見たが、結構な数が送られてきていた。
「まずは、小手調べに一つ目の話題を見ていきましょう。[それぞれの第一印象が聞きたいです!]。なるほど、定番の物が来ましたね。誰から話しましょうか?」
『……第一印象ですか』
『それじゃあ、私から行くね!小春ちゃんは今の内に考えてて』
一番手に手を上げたのは昼女嬢だった。小春嬢の準備の為と言っているが、おそらく私が配信画面を操作しているからそれにも気を遣ったのだろう。
『じゃあ、先生の第一印象。そうだね、落ち着いた大人って感じ!』
[これは解釈通り]
[今日のまとめ役もやってるしな]
『前の仕事も先生だって聞いて、納得しちゃった。後ね、顔合わせの後、皆で食事に行ったんだけど、お酒強いの。日本酒とかビールとか焼酎とか、沢山飲んでるのに真っ白な顔してて!』
『あ、それは私もビックリしました。お水飲むみたいにゴクゴク飲むので。私のお父さんもお酒強いと思ってたんですが、それ以上でした』
『だよね!あれは驚くよね。私も小春ちゃんも少しは飲むんだけど、5倍ぐらい飲んでた!ああ言うの、何て言うんだっけ?お酒沢山飲む人の事』
「蟒蛇、でしょうか。……何でしょう、少し照れますね、そこまで言われると」
『そう、それ!蟒蛇。ねぇ、今度3人で飲み放題も行ってみよ?先生が居れば元が取れるかも』
「昼女さん、あれは元を取るためのものでは無いので、さすがに無理ですよ。一人日本酒二升は飲まないと」
[先生酒豪だったのか]
[5倍って、どんだけ飲んだんだよ……]
[小春ちゃん、ちゃんと話に混ざれてるな]
[雑談ついでに次回の約束取り付けるとか、昼女ちゃんコミュ強だな]
[さすがに飲み放題で元取るのは無理だろ。……無理だよな?]
[先生照れてるとか言って少しも変わってない]
[無感情教師]
[日本酒二升www]
[飲み放題で元を取るは草]
[店出禁になりそうwww]
『あ、そうそう。先生、いっつも落ち着いてるから、少しは動揺させてみたいな。ホラーゲームとかやらない?3人で』
『え゛!?ひ、昼女ちゃん、私ホラー苦手なんだけど……』
[確かに先生の動揺してるとこは見てみたい]
[小春ちゃん、すごい声出てるw]
[先生は無表情で、昼女ちゃんと小春ちゃんがあたふたしてる未来が見える]
『次は小春ちゃんね。小春ちゃんはね……、すごく可愛いの!ちっちゃくて、キョロキョロしてて、リスみたいだった!』
「そうですね。警戒心が強そうでした」
『あとね、聞き上手だった。いろんな話したんだけど、ちゃんと聞いてくれるし相槌打ってくれるし』
[小動物w]
[まあわかる]
[これも解釈通り]
[聞き上手か]
[正反対な性格だけど、結構合うのかもね]
『そ、その……。先生が言ってた通り、結構恥ずかしいですね……』
さて、昼女嬢が話している間に、配信の操作が一段落した。
『小春ちゃんはそんな感じかな。じゃあ、次は先生にバトンタッチね!』
「わかりました。そうですね、二人の第一印象ですか」
昼女嬢から、私に振られる。私は、顔合わせの時の事を思い出しながら、話を始めた。
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