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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第三章『影』
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偶像


 ドラマツルギー。人は舞台役者であると誰かが言った。誰しもが人の理想を押し付けられ、それに縛られている。


「あなたは天才ね!」


 私を最初に縛り付けたのは母親だろう。


「君は本当に理解が早いね。しかも人付き合いも得意だ」


 そんなことを私に言ったのは小学校の先生だったか。


「ねえ、あなた人前で話すの得意でしょ?発表任せたよ!」


 クラスメイトはそう言った。


「お前は努力の天才だ!将来は学校の先生かな?いや、弁護士にもなれる。医者だって夢じゃない!」


 中学校のテストで学年一位を取った私に父親はそう言った。

 どれも、私を褒めるつもりで言ったのかもしれない。いや、クラスメイトは違うか。私はそんな言葉に縛られた。

 天才で在れ。陽キャで在れ。秀才で在れ。そんな言葉をかけられる度、私は努力した。もともと、勉強も運動もコミュニケーションも得意じゃない。でも、周囲は私にそう求めてくる。幸運なことに、処世術は得意だったようで、私の周りにはいつも人が居た。


 まるで檻のように。


 人は自由だとか、そんなのは嘘っぱちだ。自由になるには社会的地位が要る。社会的地位は努力しなくては手に入らない。

 PCを立ち上げる。今日の定期配信の時間だ。継続は力なり。VTuberに取っての力は登録者数だ。忘れられてしまう、そんな恐怖に怯えるくらいなら毎日配信する方が楽だ。

 本当は見たくないアンチコメントも目に入ってしまう。歌が上手くない?知っている。だから練習するのだ。

 最近は自炊もしなくなった。時間が無いのだから。カップラーメンやコンビニ弁当の残骸もシンクに溜まっている。そろそろ片さなくては。

 同期の二人と私の登録者数を見比べる。明確な強みを持った二人に対して、私の登録者数は伸び悩んでいる。もっと頑張らなくては。


 そう、もっと。もっと。もっと。もっと。もっと。もっと。もっと。


 ふと、メッセージアプリの通知が来る。


青山小春[こんばんは。明日、時間はありますか?]

青山小春[私と、お出かけしませんか?]


 私は、少し悩んでから返信を返した。


竹浪昼女[夜は配信あるけど、お昼なら大丈夫!どこ行こうか?]


 私は、『太陽神』なのだから。


 お読み頂きありがとうございます。

 第三章は、私がこの話を書き出すに当たって、最初から構想を練っていたものです。叙述トリック、好きなんですよね。影響を受けたのは入間人間先生の『たったひとつの、ねがい。』でしょう。

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