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閑話 教育的な恐怖病棟

 今回の閑話は一部のみです。


 2ndstreet『私たちの主義主張』の発売から数週間。私は、ほぼ毎日のソロ配信を続けていた。今日の配信は、雑談ではなくゲーム配信である。


「と言うことで、今回プレイするのは『恐怖病棟』です」


 最近はFPSを齧っており、ソロマッチやチームマッチをコラボや個人で行っていた。週4回ほどの頻度であるが、同じゲームばかりを繰り返すと、そのゲームをプレイしていない視聴者層はアウェーになってしまう。その対策もあり、今回は短編ゲームの単発配信を選んだ。


[きちゃ!]

[まさかのホラゲー]

[先生のリアクションが楽しみ]


 『恐怖病棟』とは、廃病院を探索するホラーゲームである。廃病院に肝試しに行った主人公は、何故か閉じ込められ、脱出のために謎解きをするという物だ。調べてみたところ、自由度が高いと評判であり、評価も高かった。ネタバレ防止のためにあまり詳しくは調べていないが、いくつかエンドがあるらしい。


「初期の持ち物は……、ライトと拳銃?舞台は日本では無いんですね」


[一応日本が舞台って設定なんや]

[銃 刀 法 違 反]

[何かゾンビみたいなの出てくるから、それと戦うためと言う]


「あと、コメントでのネタバレは禁止です」


 私は取り敢えず進もうとして、ふと廊下の窓ガラスを見る。[閉じ込められた]と言うアナウンスは出たが、主人公は扉を押したり引いたりしただけである。気になった私はおもむろに窓に銃弾を打ち込んだ。


「割れましたね」


[割れたね(白目)]

[ヤダ、この先生サイコだわ]

[無言で窓を見たと思ったら突然発砲すると言う]

[草]


「外に出れて……、クリア?」


 窓に銃弾を打ち込んだ瞬間に操作不能になり、主人公は廃病院の外に出る。暫くプレイできない時間が続き、ムービーが進んでいく。

 廃病院の門の前に出ると、パトランプの光とともにパトカーが到着する。


「あ、逮捕されましたね」


 ゲーム画面が暗転し、[ゲームクリア!]というロゴと、その下に[銃砲刀剣類所持取締法違反 無期又は3年以上の有期懲役]と言う文字が出る。


[草]

[銃刀法違反w]

[まさかそのエンドに最初にたどり着くかw]

[サイコパス教師諏訪美旗]


 どうしようかとしばらく思案し、取り敢えず配信を閉じる用意をする。


「それでは皆さん、さようなら」


[草]

[待て待てw]

[逃げるなァ!卑怯者!]

[www]

[初見です。タイムアタックですか?]

[謎解き早杉ワロタ]


 取り敢えず蓋絵を出し、一言言うとコメント欄が予想通りに反応する。


「このゲーム、もしかして拳銃を一発でも撃つとこのエンドに到着する感じですかね?だとしたら鬼畜にも程がありますよ」


 コメント欄にあった[ゾンビと闘う]といった発言から軽く予想すると、案の定コメントでも反応がある。


[気づいちゃったかぁ]

[先生察し良すぎ]

[作者涙目w]

弥魔田王姫[そうだよー]

[魔王様も良く見とる]

[草]

[ネタバレ禁止とは]


 画面に出た[プレイする]というポップをクリックしつつ、コメント欄を流し見る。王姫嬢の名前が見えたのでモデレーターを設定する。


「王姫さん、こんばんは。先日はお世話になりました」


 弥魔田王姫嬢とは、コラボ配信後もそこそこの交友がある。王姫嬢が私のチャンネルでコメントしたり、私が王姫嬢のチャンネルでコメントしたり。

 王姫嬢曰く、「先生のせいで私のチャンネルで性癖暴露して私を困惑させる人が増えた」との事だ。王姫嬢のファンは「こういう魔王様も良い」と言った感じで反発も出ていない。


「さて、タイムアタックのようになってしまいましたが、もう一度やりましょう」


 スタート地点から廊下を進み、病室へ入る。四人用の病室は散らかっており、配線が乱雑に床を這っている。


「フィリップの自宅みたいですね」


[草]

[フィリップ良く配線で躓くからな]

[視聴者参加型の対戦で配線をうっかり抜いた時には、炎上しかけたからな]

フィリップ[なんでや!俺は悪くないやろ!]

[お前は反省しろ]

[先生、友人っていうよりお母さんだな]

弥魔田王姫[ふーん。フィリップ君、部屋汚いんだ]

[あっ……]

弥魔田王姫[先生×フィリップ……良いね!]

[(良く)ないです。]

[草]

[獲物を見つけた肉食動物]

[てぇてぇの獣]


「私としては、フィリップの介護を一生続けるのは勘弁ですね。フィリップ、早く嫁を見つけろ」


[草]

[先生にフラレたw]

[本当にお母さん]

[Vがそんな事言うなよw]

[3日でのし付けられて返されそう]

[そう言いつつ現れたゾンビ躱して逃げる先生]

[キャラコン上手すぎ]


 廃病院の病室から飛び出すゾンビを避けながら軽口を叩く。FPSを齧った私としては、ノロノロと襲いかかるゾンビを避けるのは難しいことではない。大群を引き連れながら廊下を進む。


「これ、もしかしてゾンビのせいで後ろには行けないですよね?アイテムを拾い損ねたら詰みますね」


[草]

[せやで]

[謎解き要素はおまけ]

[タイムアタック勢はギミック全部暗記してるからクリアできるんだよなぁ]


 コメントに反応しながら廃病院を進む。鍵やメモといったアイテムを拾いつつも、それを見る余裕は無い。襲いかかるゾンビを撃てば逮捕エンド。謎解きは、ゾンビを撃ち殺さなければ出来ない。ふと、アイテムアイコンの出ている棒を拾う。


「もしかして正解はこれですか?」


 棒を窓にぶつけると、案の定割れる。二階なのを気にせずに外に飛び出す。


「あ、これでもクリア出来るんですね」


 操作が不能になり、ムービーに切り替わる。2階から飛び降りた主人公は、足を怪我したようで膝を抱き込むように抱える。すると、茂みから懐中電灯を持った老人が現れた。


「誰でしょうか?」


 老人は、ポケットから携帯を取り出すと電話をかける。下にはテキストが出る。


[ここは進入禁止の筈ですが?]


「これでエンドでしょうか?」


 ゲームクリアのロゴと共に、[住居侵入罪 懲役3年以下の懲役または十万円以下の罰金]の文字が出る。


「クソゲーですね。エンドは全部こんな感じですか?」


[草]

[2回以上から飛び降りると全部このエンド]

[冷静なクソゲー認定に草を禁じ得ない]

[www]

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