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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第二章『私たちの主義主張』
36/78

騒ぎの影

 第二章は今回で終わりとなります。


 さて、先日ついに『私たちの主義主張(イデオロギー)』が発売した。トゥイッターの反応を見る限り、仕込まれた[天地有用]のギミックを見抜いた人も多く、中々に盛り上がっているようだ。


マネージャー[美旗さん……]

諏訪美旗[どうしました?]

マネージャー[事務所から、マネージャー辞めてライバーにならないかと打診を受けました……]

マネージャー[どうしましょう……]

諏訪美旗[私に聞かれましても……。取り敢えず、マネージャーの思うようにしたら良いのでは無いでしょうか?]

マネージャー[そうですね……。突然変なことを聞いてしまってごめんなさい]


 どうやら、『私たちの主義主張』で、唯一声が割れていると言う理由でシェヘラザード役に選ばれたマネージャーは、2ndstreetのファンによって拡散され、事務所からデビューの打診を受けてしまったようだ。

 私としては、シェヘラザードの役を事務所に依頼した身として、他人事では無い。これ以降もちょくちょく相談に乗ることとなった。なお、結局デビューはしないものの、事務所がメインになる時の表役として出演することで落ち着いたようだ。本人曰く、「すこし恥ずかしいですが、皆さんに求められるのも悪くないですね。あと、臨時手当が美味しいです」との事で、そこまで後悔していないようだ。さらに余談だが、彼女が稀に登場する度にトゥイッターやコメント欄が加速し、ファンネームとして[黒子見守り隊]が作られた。


「さて、どうした物か……」


 私は、とある事に頭を悩ませていた。私がデビューしてから数ヶ月。VTuberとしては新人のペーペーで有るが、嬉しいことに登録者が一姫嬢に続いて、二番目の十万人を達成した。

 実に嬉しいことである。しかし、それだけでは済まなかった。


「なんというか、有名税とでも言いますか」


 私に対してのトゥイート。それは、肯定的な物ばかりでは無かった。例えば[慇懃無礼な教師]と言った直接的なものから、[先輩よりも先に十万人を達成した感想はどうですか?]と言った間接的な物まで。教師と言う職業柄、もともと批判を気にするタイプでは無かった。それはVTuberになっても変わらない。しかし、それが私以外の人にまで影響するとなると話は別だ。2ndstreet一期生の面々には[後輩に追い抜かれた]と言った煽りが、二期生には[同期の先生は既に十万人を超えましたが]といった煽りが行われていた。

 なお、フィリップは「俺が誘ったんだから、俺の先見の明を賛称するコメントにしか見えない」と回答し、糠に釘、暖簾に腕押しだと気づいた彼らは関わらなくなった。いろはや瞳は私と元々関係があったこともあり、そこまで気にしていないようで、彼らから黙殺されるのも時間の問題だろう。

 問題は煽りが集中する可能性の高い一二三嬢、小春嬢と昼女嬢だ。粘着質な批判はメンタルを削るし、焦りはミスを生む。何らかの対策を行わなくてはいけない。しかし、事務所としては余計な火種を産まないように[黙殺]の方針、そしてメンタルケアの用意がされている。勿論悪いとは言わない。だが、最善手では無いのも確かだ。

 とまあ、少しの不安要素はあるものの、順調に2ndstreet全体が伸びている。初期からの企業には及ばないものの、一年半ほどの新興企業としては快調なステップを踏めている。

 『私たちの主義主張』の考察を眺めながら、次回の企画を考えるのは、私の日課となりつつある。一ヶ月ほどプロジェクトに力を入れたため、配信頻度も落ちていたが、現在は持ち直しつつ今までは手を出して来なかったFPSのようなゲームの配信もたまに行っている。

 今日も、夜の20時からの配信があり、サムネイルなどの用意をしつつ、時間を潰している。


「皆さん、今晩は。先日発売された2ndstreetのアルバム、『私たちの主義主張』は聞いて頂けましたか?本日は……」


 これから一ヶ月後、とあるトラブルの渦中に放り込まれる事を、私はまだ知らなかった。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。第三章までの用意が出来ましたので、以前の3日に一回更新のペースに戻します。取り敢えず次回は15日更新の予定です。

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