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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第二章『私たちの主義主張』
33/78

2ndstreetオフコラボ③


 8人がそれぞれの話を終えた。次は、私達シェヘラザードの曲についての話になるだろう。


「それでは、最後にシェヘラザードの曲についてですね。オープニングのミーティングは全員来てたので、そちらからにしましょうか」

「美旗、酒が無くなったから取ってきても良いか?」

「フィリップ、流石に飲みすぎだ」

「美旗先輩も結構飲んでるけどねー」

「今飲んでるお酒、度数どれぐらいですか?」

「40度ですね。今日はレミーマルタンのエクストラです」

「よく酔いませんね」


 話を始めようとすると、フィリップが声を上げる。自分の酒が無くなったと言いつつも、おそらく周りのグラスも確認してから言っている。こういう場面では気が利くのがフィリップの良いところだ。


[もう2時間はたってる]

[時間が過ぎるの早いよなぁ]

[俺はここで落ちるわ]

[酒持ってこよ。明日平日だけど]


 コメント欄も、落ちる人と見続ける人で別れている。既に時間は0時を回り、夜も遅くなってきている。


「ビールもらうわ」

「私はほろ酔いで」

「先生、牛乳頂きます」


 冷蔵庫からビールを取り出すフィリップに、小春嬢の分のほろ酔いも取り出す昼女嬢。こういう場面では気を使う一姫嬢は、牛乳と言いつつ、中にウイスキーを入れている。数分で全員分の飲み物も揃い、本題に入る。


「では、シェヘラザードの話に移りましょう。ご存知無い方に、いろは、説明を」

「はいはーい。シェヘラザードは、私と瞳、美旗先輩とフィリップ先輩のバンドです」

「俺はベース、美旗がギターとボーカル、いろはがドラムに瞳がキーボードを担当してる」

「コンセプトは、賢者と語り部。2ndstreetの物語の語り部の位置づけ」

「と言うことで、オープニングとエンディングを担当しています」

「『賢者は斯く語る』ははたさんが原案、『わたしらしく、あなたらしく』は私の原案」

「じぁあ、美旗先輩から話して」


 軽く『シェヘラザード』の説明をしつつ、私に話が回ってくる。私は、どこまで話すべきかと考えながら話し始める。


「『賢者は斯く語る』は、2ndstreetの皆さんにシェヘラザードが唆すイメージです。この世界は不満だろ、と」

「相変わらず、美旗先輩はそう言うのが好きですよね」

「こればかりは好みですから」

「『革命主義者』譲りましょうか?」

「要らないです。私は『理想主義者』ですから」


 続けて、瞳が話す。


「『わたしらしく、あなたらしく』は、『賢者は斯く語る』のアンサーソング。対になるように意識した。いくつかパロディしてる」

「明るいのは俺やいろは担当だったから、弾いてて驚いた」

「デモではそこはカットしてるから、実際に買って確かめてね!」


 いろはがうまく締めくくる。取り敢えず予定通りに話すことは話し終えた。そろそろ配信を終わろうかと周りを見ると、昼女嬢が私のギターを持って私のところへ来る。


「先生、弾いて!」


 後ろを見ると、小春嬢が昼女嬢の裾を引っ張って止めている。


「昼女ちゃん!流石にすぐには無理だよ!」

「えー!コメントのみんなも先生のギター聞きたいよね?」


 今度は、コメント欄に助太刀を求める。コメントも、弾いてほしいと言うものがチラホラと。とはいえ、エレキギターはアンプやエフェクターの準備もあり、たしかに小春嬢の言うとおり直ぐには出来ない。

 私はため息を付き、昼女嬢に言う。


「昼女さん、そこまで言うのでしたら、私が何か弾くので歌ってください」

「え!?」


 私のカウンターに昼女嬢が止まる。席を立ち、壁のアコギを取る。クリップのチューナーでチューニングをしながら昼女嬢を見ると、コメント欄の圧力に屈したのかいそいそと立ち上がる。


「何を弾きましょう?準備は全くしてなかったので、私が出来る物で」

「先生、用意早いよ!私だって心の準備が」

「昼女ちゃん、自業自得だよ?」

「これは昼女さんが悪いですね」


 呆れたように言う小春状態と一姫嬢。フィリップは笑い転げている。酔いがかなり回ったのか。


「フィリップが限界に近いので、一曲だけですよ」

「じゃ、じゃあ『紅蓮華』で……」


 昼女嬢が選んだのは国民的人気を誇ったアニメのオープニングだった。


「TVサイズでいいですね?これは本当に初合わせなので、少しミスしても笑って流してくださいね」


 一言念を押し、昼女嬢の歌いだしに合わせてギターを弾く。


「……ありがとうございました。『紅蓮華』2ndstreetアレンジです」

「いやぁ、緊張した」

「これに懲りたら、少しは反省してくださいね」


 コードやアルペジオで誤魔化しつつ、何とか弾き終えた。私達の裏で小春嬢達が配信終了の用意をしていたようで、この後は軽く挨拶をして配信は終了となった。最高同接数はゲリラだったにも関わらず十万人を超えており、2ndstreet過去一位となった。

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