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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第二章『私たちの主義主張』
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2ndstreetオフ会①


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 2ndstreet新プロジェクト専用アカウント


 本日20時より、新プロジェクトのPVを配信致します。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 全員での打ち合わせから約1ヶ月。2ndstreetから新プロジェクトのPV公開が発表された。私達それぞれのイメージを固め、大まかな流れを決め、それを帝都アニメーションが形にする。アニメーションについてはからっきしの私でも、1ヶ月での製作がどれだけ大変なのかは予想できる。


「今日は久しぶりのオフだな」


 事務所からは、今日の配信は行わないようにとの通達が来ていた。恐らく、配信内での情報の漏洩を防ぐためだろう。今回のプロジェクトについては、今までの1ヶ月間も箝口令が敷かれていた。

 この1ヶ月、配信頻度は下がっていたものの、毎日のようにフィリップ達と集まっては新曲を作っていた。そのため、今日は久しぶりの何もない日となっていた。

 さて、何をしようかと考える。基本的に無趣味な私は、休日の暇潰しに困ることが多々ある。教師をしていた頃は、授業や生徒の進路、部活など考えることもたくさん有ったが、バーチャルミーチューバーを始めてからは暇な時間も多い。そんな時間を配信の用意に使っていたものの、今日に限ってはそれも出来ない。

 トゥイッターを見て、自分のファンアートや視聴者の呟きを周回していると、メッセージアプリの通知が入る。


竹浪昼女[先生、今日ってヒマ?]

諏訪美旗[暇ですよ。どうしました?]

竹浪昼女[2ndstreetの皆で、夜のPVを見ようって話をしてるんだけど、先生も来る?]

諏訪美旗[楽しそうですね。時間は何時からですか?]

竹浪昼女[先生の都合の良い時間で!]

諏訪美旗[そう言うことでしたら、17時でどうですか?]

竹浪昼女[じゃあ、その時間に!]


 どうやら、昼女嬢は前回の打ち合わせの時にフィリップ達と仲良くなったようで、既に全員分の連絡先を把握しているようだ。好きな時間と言われ、取り敢えず17時頃と答える。


竹浪昼女[17時に皆で先生の家に行くね!]

諏訪美旗[はい?私の気のせいでしょうか、私の家に来ると書かれている気が]

竹浪昼女[フィリップ先輩が家の掃除をしておいてって言ってました]

諏訪美旗[首謀者はフィリップですね?……取り敢えず掃除はしておきます]


 聞き捨てならない、いや読み捨てられない文章が見えた気がした。どうやら昼女嬢はフィリップから私の住んでいる場所まで聞いているようだ。


諏訪美旗[フィリップ、お前の秘蔵の酒持ってこいよ?]

フィリップ・安曇野[え?何で]

フィリップ・安曇野[あの、美旗?]

フィリップ・安曇野[冗談だよな?]

諏訪美旗[冗談に聞こえるか?]


 取り敢えずフィリップに秘蔵の酒の提供を求め、メッセージアプリを閉じる。すこし溜飲も降りたところで、掃除に入ることにする。


「……取り敢えず、掃除機かけとくか」


 家で一人ごちる。貰う額の割に使い道もなく、取り敢えず買った一軒家が私の家だ。殆どの部屋は使い道なく、趣味もない私はあまり余った部屋を衣替えの物置にしている。汚れてはいないが、見映えが悪いと毛布やストーブを押し入れに仕舞う。

 リビングは念入りに掃除を。といっても、バーチャルミーチューバーになってからは時間をもて余し、することもない時に掃除をしているためか、殆ど埃も無い。


「そう言えば、夕食はどうしようか」


 掃除も終わった私が次に気にしたのは、全員分の夕食の事だった。恐らく、フィリップやいろは、瞳は何も考えていないことは確定。一姫嬢と一二三嬢に小春嬢、昼女嬢はどうするかわからない。メッセージで聞くことも考えたが、取り敢えず材料があれば問題ないだろうと買い出しに出かけることにする。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「先生、やっほー」


 さて、時間は約束の17時。フィリップが車を出して全員を運んだようで、家の前に車が停まっている。


「あの、ご迷惑おかけします……」

「気にしないでください。中へどうぞ」


 申し訳なさそうに家に入る小春嬢。


「先生、私が言うのもなんですが、友人は選んだ方が良いかと思いますよ?」

「奇遇ですね、私もそう思ってました」

「あはは……」


 どうやら、フィリップに突然呼ばれたようで、私に同情の目を向ける一姫嬢と一二三嬢。


「美旗先輩、これおつまみ」

「はたさん、お酒。冷蔵庫に入れておくね」


 まるで慣れ親しんだ我が家かのように入るいろはと瞳。


「先生、突然ごめんね!お邪魔します」

「今度からはもう少し早く連絡をお願いしますね」


 笑顔で、しかし申し訳なさそうに言う昼女嬢。


「おい、美旗。駐車場借りるな」

「入れてから言うなよ」


 最後に、既に私の車の隣に車を停めたフィリップが入る。


「さて、取り敢えずリビングにどうぞ」


 全員を案内しながら、リビングの扉をあける。


「わぁ、広いですね!」

「私よりすこし年上なだけなのに、生活環境が全然違いますね……」

「ふふ、一姫ちゃんの部屋は汚いもんね」

「余計なことを言わないで、一二三」

「美旗先輩、コップ借りますね」

「ずみさん、冷蔵庫に入らない」

「どんだけ買ってきたんだ……」

「先生、私もお酒買ってきたよ!」

「取り敢えずサブの冷蔵庫に入れましょう」


 部屋に入る時の反応だけでも個性が出ている。表情がコロコロ変わる小春嬢。何かにショックを受ける一姫嬢に、それに反応する一二三嬢。まるで我が家かのようにキッチンに踏み込むいろは。冷蔵庫に缶の酒を大量に入れようとして、入らなくて私を呼ぶ瞳と昼女嬢。


「美旗、ゲームやろうぜ」

「小学生か、お前は。取り敢えず落ち着くまで待ってろ」


 テレビの下のガラス棚を開けて、ゲームを用意するフィリップ。

 暫くすると、全員が荷物をどうにかしたようで、テーブルに座る。


「粗茶ですが」

「いろは、それは自分で茶葉を買ってから言え」


 どうやら、いろはは全員分の飲み物を用意したようで、それぞれに余計な一言を言いながら配っていく。


「瞳さん、先生と仲良いですね」

「いろは先輩、先生と付き合ってるの?」

「その話、詳しく聞かせて」

「私も聞きたい!」


 あまりにもアットホームなフィリップ達に驚いたようで、小春嬢と昼女嬢が瞳といろはにそんなことを聞く。それに食いつく一姫嬢と一二三嬢。

 女性陣は、そのままワイワイと騒ぎ出す。


「なあ、美旗。ゲームしないか?」

「……あれに巻き込まれたくは無いからな」


 私は、巻き込まれる前にとフィリップとゲームに興じることにした。

 お読み頂きますありがとうございます。次回は1月22日更新予定です。気に入ってくださったら、ブックマークと評価をよろしくお願いします。

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