閑話②
私、諏訪美旗のキャラデザインをしたイラストレーター、ごまだんご先生から、とあるオファーが来た。
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ごまだんご:コラボをしませんか?
諏訪美旗:構いませんよ。何時にしましょうか?
ごまだんご:今は仕事が立て込んでいないので、諏訪さんの日程に合わせます。
諏訪美旗:そう言うことでしたら、この日はどうでしょうか?
ごまだんご:その日にしましょう。こちらで、企画は考えておきますので、予定だけ開けてもらえたら大丈夫です。
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ごまだんご先生とのコラボが決定した。最近、バーチャルミーチューバーと絵師のコラボが幾つか行われている。この機を逃さないようにしなくては。
さて、ごまだんご先生についての説明をしよう。ごまだんご先生は、先程も言った通り私のデザインをした絵師である。バーチャルミーチューバーのデザインをした絵師を通称ママと言うが、それに則れば私のママと言うことになる。ごまだんご先生自身もトゥイッターで何度か公言しているが、年齢不詳の女性だ。何度か通話したので、声は知っている。恐らく私と同じか少し年下。以前はとあるライトノベルのイラストレーターを担当していたが、先日最終巻が発行され、暫くの間フリーとなっているようだ。
さて、コラボの当日となった。コラボの詳細や、大体のタイムスケジュールもメッセンジャーを通して送られてきている。
[当日は、執事のアバターの方でお願い!]との言葉通り、私は5万人記念の衣装で配信に臨んでいた。
『皆、こんばんだんご。イラストレーターのごまだんごです。久々の配信だね~』
取り敢えず、合図したら音声を入れて!と言われた通り、私は音声をミュートにして待機をしていた。
リアルで会ったことは無いが、ごまだんご先生は自作の和服の姿で配信をしていた。
『さてさて、告知を見た人は知ってると思うけど、イラストレーターとしての仕事も一段落したから、暫く配信メインでやっていくね。今日はゲストも来てるから、コメントも自重してね』
ごまだんご先生は、本業がイラストレーターであるが、コミケでは同人誌を出す同人作家もしている。私も、諏訪美旗のキャラデザインを担当すると聞いて幾つか同人誌も買ったが、どうやらBLをメインに活動しているようだ。配信も女性人気が高いようで、コメントにもBLの話題が散見している。それを窘めるようにごまだんご先生が言う。
『じゃあ、私の愛息子、カモン!』
「今晩は。諏訪美旗です」
どうやら合図らしい発言に合わせて、私もミュートを切って声を出す。『ちょっと同期するから、話を繋いどいて』との言葉に従い、雑談を始める。
『お待たせ、美旗君。記念の衣装を使ってもらえてるみたいで嬉しいよ』
「ごまだんご先生が指定したんですけどね。さて、今回の配信はどうやら私が話題のようで」
『と言うことで、[イケメンの執事にいろんな台詞を言ってもらおう]配信、始めるよ~』
今回の配信のテーマは、執事姿の私に色々な台詞を言ってもらおう、と言う事らしい。トゥイッターやシュークリームで集めた募集の台詞をごまだんご先生が画面に共有し、私が読むというものだ。
『ところで、美旗君。折角だから、私の事はお嬢様って呼んでくれないかな?』
「そろそろシフトの時間も終わるので、勘弁してくれませんかお嬢様?」
『冷たいなぁ』
ごまだんご先生の戯れ言に答える。
『さあ、共有していくよ?一つ目。[最近、朝起きられなくて困ってます。目覚ましボイスをください!多くは求めませんが、朝の弱いお嬢様を優しく窘めるようなシチュエーションで]だってよ?』
「多くを求めないと言いつつ注文が多いですね。しかも、そこまで具体的にシチュエーションを指定するなら台詞も書いてほしいのですが」
『多分、あわよくば美旗君が恥ずかしがってる所が見たかったんじゃないかな?』
「清々しいほどに欲望に素直ですね」
一つ目はシュークリームからの応募のようで、ピンクの枠になっている。内容も、色々と突っ込み所が多い。
さて、どんな台詞にしようかと考える。注文にそのまま答えるのも癪だ。暫く考えて、口を開く。
「お嬢様、起床の時間でございます。お嬢様、お嬢様……。チッ、早く起きろよ……と言うような感じでいかがでしょう?」
『良いねぇ!明日から私の目覚ましボイスはこれにしよう』
「これの送り主、貴女ではないですよね……?」
[wkwk]
[おっ、良い感じ?]
[舌打ちは草]
[優しく窘めるように、とは?]
[これはこれで使える]
[送り主、良くやった!]
[ごまだんご先生おこぼれに預かってて草]
[www]
[治安悪い先生助かる]
『ふふ、美旗君と居ると創作意欲が刺激されるね』
「参考として聞きますが、今どんなことを考えました?」
『フィリップ君に仕える美旗君シチュかな?』
「それを本人の前で言えるあなたの精神が凄いです。先ほどの、コメント自重しろと言う言葉はどこに行ったんですか」
『さあ、そんな前の事は忘れたわね。さて、次はトゥイッターからの応募だよ。本人に許可取ったからそのままスクショを張り付けるね』
「誰だかが気になる所ですが」
『と言うことで、2つ目。[ラスボスっぽい台詞をお願い!]とのことよ』
「名前が見きれてるんですが」
『美旗君が言い終わったら出すから、早く』
ごまだんご先生に名前が見きれている事を指摘すると、そのように返される。そうですね、と少し考えて口を開く。
「よくぞここまで来た、勇者よ。実に安っぽい勧善懲悪の物語だったよ。このまま引き返すと言うのであれば、私を楽しませた褒美として無傷で返してやろう。ん?どうした、剣なぞ構えて。勝てない戦いを挑むとは……。そうか、貴様は勇者ではなく愚者であったか。それでは、カーテンコールだ。貴様と言う下らない物語に私自ら幕を引いてやろう」
『おお、良いね。所で、勇者に勝ち目はあるのかな?』
「私に聞くんですか……。多分、この勇者は主人公に希望を託して死ぬ役目ですよ?」
『あ、ちなみにこのコメントは昼女ちゃんね』
「そう言えばドラクエ配信やってましたね」
[おお、ラスボスっぽい]
[少し声が低いのが良い]
[草]
[死ぬのか……]
[なんか魔王の弱点だけ遺していきそう]
[魔王に攻撃を入れて、「私に傷をつけるなど、万死に値する!」とか言われて殺されそう]
[結構受けてて草]
[ごまだんご先生、楽しそうだなぁ]
[昼女ちゃんか]
[ドラクエやってたなぁ]
[滅茶苦茶負けまくってたのが印象に残ってる]
こうして、私とごまだんご先生のコラボは続いて行った。
お読みくださりありがとうございます。次回は12月24日更新予定です。気に入ってくださったら、ブックマークと評価をよろしくお願いします。




