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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第一章『重圧』
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5万人記念配信⑤


『皆さん、こんばんは。2ndstreet二期生、青山小春です』

『やっほー!竹浪昼女です』


 最後の祝電は、小春嬢と昼女嬢だった。小春嬢も、この1ヶ月程で人前で話すのに苦手意識が無くなったようで、以前の内気な感じは少しも見られない。昼女嬢も、いつも通りの溌剌さではあるが、以前のような気負いが無くなって、天真爛漫さが全面に出ている。


『昼女ちゃん、せーの!』

『『先生、5万人おめでとうございます!』』

「あ、そこは先程の3人と変わらないんですね」


 2人で息をあわせて祝辞を言う。奇しくも、合わせ方が先程のフィリップ達と同じだったことに苦笑する。


『さて、小春ちゃん。言うこと終わっちゃったんだけど?』

『昼女ちゃん!台本用意したでしょ!?ほら、ここからここから』


[草]

[台本とか言うなw]

[カンペ出すなw]


 2人の掛け合いに、思わず小さく笑ってしまう。小春嬢にも、昼女嬢にも、この1ヶ月程で色々と関わってきた。


『先生は先に5万人行っちゃったけど、私達も負けないから』

『私も、初配信から助けてもらってばっかりですけど、先生の後塵を拝したままでは居られませんからね』

「お二人とも、言い方をもう少しオブラートに包めなかったんでしょうか」


[草]

[言いたいことは解るけど言い方w]

[挑戦状だな]


『先輩方は、どうやら先生の第一印象何かを話してたみたいで』

『でも、私達はコラボで話しちゃったし?』

『なので、手紙を用意してきました』

「一姫さん達のは参考になると思いますが、フィリップ達のは参考にしないでくださいね」


[草]

[番長とひふみん:第一印象 フィリップ達:何か]

[この2人にまで無茶振りされたら、先生の精神がどうにかなりそう]


 しばらく、どちらが先に読むかで揉める。お互いに、自分が後の方が良いようで、結局初配信順に決まる。


『では、私から読みますね。[先生へ]』

「手紙を読む順番ぐらい、先に決めておきなさい」

『[私に取っての先生は、本当に先生みたいな人です。初配信で困っていた時も助けて貰いました。先生にとって、私達はきっと少し年が近い生徒みたいな感じなのでしょう。]』


 小春嬢が、用意していた手紙を淡々と読んでいく。ハキハキとした、発表のような話し方。しかし、[生徒みたいな感じなのでしょう]の辺りから、少し感情が籠ってくる。


『[私は、少し悔しいです。私は、先生の同期として扱って貰えていない気がしています。オフの時の通話でも、私の相談を真摯に聞いてくれて、たまに私を勇気付けてくれて。]』


 前に一度、小春嬢から「私の事をどう思っているんですか?」と聞かれた。詰められるような言い方では無かったため、迷惑に思っていないかと言う意味で聞いているのかと思い、「少し年の近い生徒みたいだと思っています」と答えた。


『[先生に取っては私は生徒なのかも知れないですが、私は先生を大切な同期だと思っています。だから、私が先生に相談するみたいに、なにかあったら私に相談してくれて良いんですよ?]』


 小春嬢は、それをずっと気にやんでいたのだろう。私の、気にしないで欲しいと言う気持ちは、正しく伝わっていなかった。


『[最後に、先生。5万人、おめでとうございます。私もすぐに並びますから、待っていてください。]以上です。なんか、素直にお祝いできなかったですね』

『そんなこと無いよ!小春ちゃんの気持ち、ちゃんと伝わってると思うよ!』

「……伝わっていますよ、ちゃんと。ありがとうございます、小春さん」


 教師をしていたときは、私の一言で傷ついたり、人生を大きく狂わしてしまう生徒も居るかもしれないと、言葉選びを気を付けていた。しかし、素直な小春嬢には、私の言葉はあまりにも真っ直ぐに、文面通りに届いてしまっていたようだ。


『じゃあ、次は私、昼女からの手紙です。[先生へ、5万人おめでとうございます。]』


 私が感慨に耽る間もなく、昼女嬢の手紙が始まった。


『[私に取っての先生は、目標です。いつも落ち着いていて、まさに理想の大人みたいな。私は落ち着きがないって良く言われるから、先生みたいになりたいって思ってます。]』

「昼女さんは、昼女さんの良さがありますよ。天真爛漫で、いつも元気付けられてます」

『[私は、同期が先生で良かったなって思ってます。もちろん、小春ちゃんにもそう思ってます。私達3人なら、きっと誰にも負けないって。]』


『『だから』』


 唐突に、2人の声が揃う。


「「先生、辞めないで!」」

「!?」


 スタジオの扉が開く。扉を背に向けていた私は、思わず驚いて後ろを見た。

 後ろに立っていたのは、小春嬢と昼女嬢。あまりの衝撃に、思考がフリーズする。


[!?]

[先生が驚いた!?]

[と言うか動画が止まってるんだが]

[どう言うこと?]

[先生辞めちゃうの?]

[待って、誰か説明して?]


 たっぷり30秒ほど、状況把握に努める。配信中の私。そこに居るはずの無い2人。先程の2人の発言。それらを消化しながら、取り敢えず、と口を開く。


「えっと、辞めませんが……?」

「「えっ?」」


 誰か、この状況を説明して欲しい。

 お読み頂きありがとうございます。次回は12/15更新予定です。気に入ってくださったら、評価とブックマークをよろしくお願いします。

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