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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第一章『重圧』
17/78

5万人記念配信④


 次の動画は、龍生達……フィリップ達の物だった。


『どうも、一期生の第一王子、フィリップ・安曇野だ』

『同じく、タイムスリッパーのハイカラ少女、椿いろはです!』

『未来人の、勿忘瞳。肩書きは同上』


 フィリップ-龍生-と、いろは-彩奈-、瞳-静-の三人が同じ画面に現れる。


『とりあえず、だ。せーの!』

『『『美旗(美旗先輩)(はたさん)、5万人おめでとう!』』』


 三人が、私の呼称もバラバラに祝いの言葉を言う。それにしても、フィリップは私の事を元々名前呼びしていたからまだ良い。瞳も、私の事を「ゆうさん」と呼んでいたからまだ解る。いや、語呂が良いかと言われると難とも言えないが。


[一期生の三人!?]

[この三人と絡み無かったよな?]

[まあ後輩だし……?]

[いや、フィリップと瞳ちゃんは良いとしても、いろはちゃんはさすがにおかしいだろ]

[先輩はいろはちゃんの方なんだよなぁ]


「あの、そうですね。説明するので、少し動画を止めてください」


 私がため息をつきスタッフに言うと、さすがに動画が止まった。


「あの、この三人とは裏で会ってまして……」


[いや、それでも先輩呼びはおかしいだろ]

[草]

[先生、このコーナーになってからトラブルまみれw]


「まあ、元々知り合いです」


 コメントの反応から、誤魔化しきれないと察した私は、正直に言うことにした。


「フィリップとは、大学の同期でした。いろはと瞳も、大学の後輩でして」


[草]

[そんな偶然あるんだな……]

[だから先輩呼びなのか]

[何気に、先生が初めてさん付けしないシーン]

[呼び捨てだし、仲良いんだな]


「あぁ、もう!フィリップ!いろは!瞳!後で説教だからな!」


[先生の口調が崩れた!]

[説教w]

[治安悪い先生も良いな]

[草]


 私もさすがに声を荒らげる。


「……失礼しました。3人には後でお説教です。動画を再開してください」


 この場に居ない人間に文句を言っても仕方がないと、気を取り直す。フィリップの言っていた、視聴者に隠していた方が面白いと言う言葉の真意を理解して、ため息をつく。


『と言うことでだ。俺達と美旗の関係を知らない人達からしてみると突然かも知れないが』

『美旗先輩』

『ギターを持って』

「は?」


[草]

[唐突な無茶振り]

[先生、また口調がw]

[これは残当]

[3人は先生が5万人記念でギターやること知ってたんだな]


「おい、何も聞いてないんだが?」

『曲は……どうせ美旗はアコギ使うだろうし、ヨルシカの憂一乗にするか』

『フィリップ先輩、それ記念なのに暗くないですか?』

『ずみさんは何も考えて無さすぎ……。合わせられるかの確認とかしないと』

『まあ、元々やったことあるし、美旗の事だから忘れてるってことも無いだろ?』

「いや、覚えてはいるが……」

『フィリップ先輩、絶対後で怒られますね』

『説教だからな!とか言われそう』

「いや、お前らも説教だからな」

『じゃあ行くぞ!1234!』


 フィリップが行くぞと言ってすぐにカウントをする。考え無しで突発的なのは、いつもの通りだ。

 諦めて、私は歌い出す。いろはが、小さくスティックでリズムを取っているため、それに合わせる。


[突然で草]

[ちゃんと合うのか?]

[会話の端々から伝わる仲の良さ]

[おっ、始まった]

[一応リズムは取ってるんだな]

[動画の端っこに、ベース:フィリップ キーボード:瞳 ドラム:いろはって書いてある]

[やっぱ先生歌うまいな]

[ずっと、の時に声が少し掠れるのが良いわ]

[これも動画で上がんないかな?]


 サビを歌いきると、ベースやドラムも本格的に演奏が始まる。エレキギターのパートは瞳がキーボードで担当しているようだ。


[と言うかフィリップ達が楽器やってるとこ見るのも何気に初めてだな]

[3人とも「そのうち」とは言ってたから、先生が所属すること予想してたんだろうな」

[と言うか誰かが誘った説が有力だな]

[エレキパートは瞳ちゃんがキーボードでやってる感じか]

[オープニングとかと雰囲気が合ってるのは偶然?]

[さっきの言い方からして、それは偶然だろ]

[後で考察班賑わいそうだな]

[結論:フィリップが勢いで選んだ、で完結しそう]

[どこでも良いからさ、逃げようの部分、耳に残るわ]


 1曲が終わる。私がギターを置くと、コメントに[8888888]と流れていた。


「と言うことで、2ndstreetの4人で[憂一乗]でした」

『そのうちユニット名とバンド名も決めるから、よろ!』

『私達からは美旗先輩の事解らないけど、酷いことになってないと良いね……』

『はたさんだから、多分大丈夫……?』

『何で疑問系なのよ、瞳』

『では、皆のもの。さらばだ!フィリップ・安曇野でした』

『ご機嫌よう。椿いろはでした』

『乙~』

「私の配信には2度と顔を出さないでほしい3人組でしたね。まあ、取り敢えずありがとうございましたと言っておきましょう」


[嵐のように過ぎ去ってったなw]

[無茶振りして帰ってったw]

[先生にここまで言われるって、それだけ仲が良いのか、それとも酷かったのか]

[おそらく後者]

[3人はコメントしないのかな]

2ndstreet公式[3人とも怯えて隅に座っています]

[草]

[なんで公式が知ってるんだよw]


 3人は、嵐のように過ぎ去って行った。龍生達との話し方が、ついつい出てしまっていた。コメント欄を見る限り、否定的なものが無かったのが幸いだ。場合によっては話し方だけで炎上しかねないバーチャルミーチューバー業界である。なるべく火種は起こさない方が良い。


「それでは、次です。これが最後と言う事で、送り主は皆さんも察するところではありますが。では、どうぞ」

 お読み頂きありがとうございます。次回は12/12更新予定です。気に入ってくださったら、評価とブックマークをよろしくお願いします。

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