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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第一章『重圧』
14/78

5万人記念配信①


 私達のデビューから、1ヶ月が経過した。

 今日、土曜日に、私の5万人記念の配信が行われる。それに当たり、私は2ndstreetの事務所に来ていた。


「本日の5万人記念は、ここで行います」


 私は、マネージャーの案内に付いて、事務所の防音室に来ていた。壁には大きな画面、あちこちにパソコンや機材、アンプやスピーカーが置かれている。

 中心には、ギタースタンドが置かれている。


「ギターは、持ち込みの物で良かったんですよね?」

「はい。やはり使いなれたものが一番ですから」

「まさか、先生がアコギで弾き語りをするとは誰も思わないでしょうから、インパクトは十分ですね。それでは、一度リハーサルしましょうか」


------------------------


 【諏訪美旗】5万人記念配信【2ndstreet二期生】


[待機]

[待機]

[そろそろ時間か]

[おっ、扉絵変わったぞ]

[!?]

[アコギの音……?]

[PV付きか]

[2ndstreet気合い入ってるな]

[背景は、教室?]


「踏み出した1歩 それは希望に溢れていて」


 扉絵が開いた瞬間に、私は歌い出した。私が今日のために用意した曲。私が企画し、背景の一枚絵は私の絵師、ごまだんご先生の作だ。

 呆然とするコメント欄を無視し、私は歌を続ける。

 歌のアイディアをごまだんご先生に伝えると、快く受け入れて貰えた。テーマは、私の人生。

 誰もいない教室に、後ろ姿だけの私。肩を、重い荷物を背負うかのように落とし、1人佇んでいるだけのイラスト。

 

[これ、先生が先生になったときの話か]

[不安すら心地良いって、俺も言ってみたいわ]

[なんか一枚絵不穏じゃね?]

[流れ変わったな]

[これ、誰かってリスナーの事?]

[何か違う気がする]

[考察捗りそう]

[これ、オリジナルだよな?歌詞でググっても出てこない]

[オープニングのはずなのにエンディングみたいな曲]

[先生、もっと自信に溢れてるイメージあったわ]

[なんか話し方とかに自信に裏打ちされてる感じあるよな]


 変わらない一枚絵には、歌詞がどんどんと黒板に書かれていく。Broken My……の歌詞は、私に隠れるように見えない。この演出はごまだんご先生の発案だ。

 黒板の文字はしばらくすると、黒板消しの消しあとに消えた。

 どんどんと、曲が進む度に黒板の文字は荒くなっていく。窓の光が夕紅に変わる。私のシルエットも黒く陰り、人影にしか見えない中、白いチョークの文字だけが強調されていく。

 間奏に入る。窓の外は暗闇に変わり、ほとんどなにも見えない中、黒板の白いチョークだけが異様にはっきりと見える。


「もし彼らが隣に居たら 私は変われたのだろうか」


 やがて、黒板の白いチョークも消え、画面が暗転する。余韻を残すこと無く、曲が終わった。


[変えてはいけないって、自分に言い聞かせる感じが好きだわ]

[社会人って大変だな]

[プーさんの俺にはわからないわ]

[これをオープニングに持ってくるセンスよ]

[彼らって誰の事だ?]

[そのうちアンサーソングとか作ってくれ]

[おっ、先生きちゃ]

[一言目が気になるわ]


「みなさん、今晩は」


[なにも無かったかのように始めるなw]

[草]

[いままでの緊張感吹っ飛んだわ]


「お待たせしました。本日は私、諏訪美旗の5万人記念にようこそお越しくださいました」


 LIVE2Dの体は動かないため、目礼をする。先程から流れていたコメントに目を通しながら、話を続ける。


「オープニングは『重圧』でした。イラストはごまだんご先生の力作です。配信後にチャンネルに上げますので、細かいことはそちらでご覧ください」


 ガラス越しにコントロールルームに座るマネージャーと目で合図をしながら、スパチャをオンにする。


「本日は5万人記念に平行して、収益化記念も行います。使いみちは公式サイトをご覧ください。決して無理はしないように」

 お読み頂きありがとうございます。次回は12/3更新予定です。気に入ってくださったら、評価とブックマークをよろしくお願いします。

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