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バーチャル教師の指導案  作者: 風上昴
第一章『重圧』
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諏訪美旗:初配信

 初めまして。風上昴と申します。VTuberモノを読んでいて、自分でも書きたくなったので投稿します。よろしくお願いします。

 私は、今パソコンの前に座っている。机の上にはテレビのように大きなモニター。静音仕様のキーボードにトラックボールのマウス。店員に薦められたゲーミングチェアは実に快適な座り心地をしている。頭のヘッドセットからは待機所のBGMが聞こえている。画面右下の画面は20時59分。手元の目覚まし時計のデジタル表示は30秒、31秒とカウントを進めていく。横のデュアルモニターにはメモ帳機能で作成した『今日話すこと』が見えるようになっている。

 私は、無事に初回配信を終えることが出来るのだろうか?ふと、頭の中でそんな自問自答をする。2ndstreetという有名な企業所属のバーチャルミーチューバーとしてデビューすることが出来た。しかし、視聴者の男女比が男性に傾いているバーチャルミーチューバー業界で、男性であるということはマイナスだ。企業所属としての視聴者数のバフは、私が面白くなければすぐに消えるだろう。他にも、さまざまな不安が頭をよぎる。炎上、配信事故、エトセトラ。

 しかし、時間は私に迷う暇を与えないつもりらしい。目覚まし時計は59秒、0秒と時間を進め、画面には21時と表示される。

 待機所の画面から配信の画面に変えると、コメントがどんどんと書き込まれ、上へ上へと消えていく。内容は[わくわく][画面が変わった!]など、肯定的なものが多い。少なくとも、否定的なものはまだ無いようだ。


「皆さん、こんばんは」


 画面の中、もう一人の私が私と同じように口を動かす。ごく普通の髪型に、眼鏡。白衣を着て、首からはネームプレートを下げている。


「御山高校の教師をしている、諏訪美旗(すわ みはた)です。はじめまして、生徒諸君」


 諏訪美旗。これが私、柴田悠人(しばた ゆうと)の新しい姿。ミーチューバーとしての姿だ。


[うわっ、センコーかよ!]

[結構いい声]

[眼鏡に白衣、理科の先生か?]


 私が声を出すと、一瞬で更にコメントが加速する。配信用ソフトには2000人が視聴中という文字。


「いい声、ですか。初めて言われましたね。視聴、コメントありがとうございます。さて……」


 メモ帳にかかれた『挨拶』の項目の次は『自己紹介』となっている。更に、用意していた画像を配信画面に映す。書かれているのは公式サイトの自己紹介だ。


「私は御山高校の歴史を担当しています。私自身もこの高校で教壇に立つのは初めてとなります。一緒に頑張っていきましょう」


[歴史か。苦手だったな……]

[暗記科目は好みが分かれるからな]

[この学校では、ってことは他の学校で先生をしてたって事か]


 コメントの中から、拾いやすいコメントを見ていく。


「歴史が苦手ですか。確かに歴史は暗記科目と思っている人も多いと思いますが、実際はそうでも無いんですよ。他の高校で先生をしてた、その通りですね。名前は言えないですが、同じように高校で教壇に立っていました」


[マジモンの先生だったw]

[2ndstreet、よくこんな人材拾ってこれたな]


 たまにコメントを拾いながら自己紹介を進めていく。更にファンネームや配信用ハッシュタグを決めると、すぐに1時間近く経ってしまった。


[やっぱ先生だっただけあって話すの上手いな]

[1時間があっという間だったわ]

[かけ算九九言ってみて]

[草]

[先生舐めすぎだろw]


「かけ算九九ですか?言えますけど、さすがに言えない人も居ないでしょう」


[いるんだよなぁ……]

[こいつ2ndstreetトップに喧嘩売ったぞ]

[ずいぶんと失礼な新人が居たものですね]

[ヒエッ]

[本人居ったわ]

[あーあ、番長に喧嘩売っちゃった]


「番長と言いますと、一期生の桜木さんですか。本人がいた、本当ですか?……本当だ。モデレーター付けますね」


 コメントをスクロールすると、桜木一姫(さくらぎ かずき)というアカウントが見えた。手早くモデレーター-迷惑なコメントなどを消すことが出来る権限-を付ける。


[事務所の先輩が来たというのに反応が薄いw]

[無感情教師で草]

[私もモデレーター付けてー]

[ひふみんもよう見とる]


 コメントを見ると、反応が薄いとか無感情とか書かれている。ひふみんもよう見とる?どうやらもう一人先輩、楠一二三(くすのき ひふみ)さんが居たらしい。そちらにもモデレーターを付ける。


「もう1時間になります。あっという間でしたね。この後私の同期の配信がありますから、そちらを是非ご覧下さい。リンクは概要欄に貼ってあります。では、授業を終わります」


 初配信の時間は、事務所からも厳守するように言われている。と言うのは、2ndstreetの二期生三人の初配信をリレー形式で行うためである。初配信は特に衆目を集める。先輩たちにも初配信には配信を被せないようにと通達が行ったらしい。

 勿論、1時間以内というのは努力義務である。人と言う生物を相手する職業である以上、イレギュラーが起こる可能性は高い。オーバーしそうになった場合はとにかく運営へ連絡するようにと言われた。

 さて、配信が切れたことをスマホからも確認する。パソコンの画面を配信ソフトからブラウザに変え、ミーチューブを開く。勿論、同期の初配信を見るためだ。配信を開くと、ピンクを基調とした蓋絵が出ている。



 お読みくださり、ありがとうございます。気に入ってくださったら、ブックマークや評価、感想等よろしくお願いします。登場人物案等有りましたら、そちらも感想へ。気に入ったら使用します。次回は10月25日投稿予定です。

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