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子供時代  作者: 岩城
11/15

11,




私が1人では危険だからカイトが残った。本当は行きたかったかもしれない。


でもそんな事は聞けない。聞いてもどうしようもないからね。


私1人でただ薬とポーションを用意する。毎日必要な納品数をこなしていくしかできる事は無いしこれが地味だけどお父さん達を救う一歩だと信じて私は頑張るしかないの。


私は朝起きて寝るまでひたすら納品数に追われていた。カイトの夜番の時は起きてテントで待つのだが一番心配な事を考えてしまう。


寝ていると何があっても対応できないからね。テントの中から音が出ない作業をなるべくするようにしている。


物音がした。夜番だった隣のテントの人が戻って来た音みたい。


距離があっても夜は静かだから音が聞こえる。


私達のテントもだった。カイトが帰って来たようだ。


「おかえりなさい。」


私が声をかけるとカイトが言った。


「ただいま。」


ちょっと間を空けてから続けて


「さっきテント村から斥候が来てた。アインスに応援要請だった。もう、なり振り構っていられないぐらい大変らしい。人員不足だから低ランクでも出さないとテント村も崩壊しかねないそうだ。もっとポーションも欲しいそうだ。朝になったら出せるだけここからも応援を出すそうだ。出す人にポーション持たせる分の増量が決まったけど、大丈夫か?」


心配そうに顔をのぞき込むカイト。


「わかった。頑張る。カイト疲れたでしょう。先に休んでいてカイトが起きたら交代しよう。」


そう言ってカイトを寝かせことにした。いつも寝つきの良いカイトが寝返りを打つ音を立てていた。私は気にしないようにしてポーションに魔力を注いで数を増やす努力をしていた。


ポーションを作っているがどうしても気分が乗らない。不安と心配で押しつぶされそうな気持ちになる。でも私が頑張らないと…。


お父さん達は…。お兄ちゃん達は大丈夫だよね。はかどらない。


気がついたらカイトが起きて私の隣にいた。カイトが


「大丈夫だから。できる事をしようと頑張っているじゃないか。」


私を抱きしめて頭を撫でてくれる。温かいカイトの体温を感じて落ち着いてきた。私は1人じゃない。


「頑張り過ぎだよ。少し休んで。俺が見ている。大丈夫だよ。」


と言って私を寝袋の方に連れていく。


私はカイトの言うようにそのまま寝袋に入って休むことにした。


なかなか寝れない。私の横にカイトが来て言う


「目を閉じて。俺が寝つくまでここにから。昔みたいに子守歌でもいる?お話の方がいいかなぁ?魔法使いの話が好きだったよね。大魔法使いになって賢者様として人々を導くことで周りを幸せにするお話。どうする?」


私は目を閉じてカイトに言う。


「今度こそ大丈夫かな。すぐに寝れそうになったから。カイト、寝るまで手を握っていて。」


私は手をカイトに差し出す。カイトが握ってくれた手の温もりを感じて今度こそゆっくりと眠りについた。


カイトがポーションの薬草の準備や鍋も用意してくれて起きたらすぐに取り掛かれるようにしてくれていた。


「先に何か口にしょうか。こっちに軽い食事があるよ。」


と言って仕事道具から離れた場所にある木箱にパンとスープが置いてあった。


「カイト、ありがとう。」


私はカイトにお礼を言うとパンとスープを口にした。


「着替えるだろう。俺外で待っているから終わったら食器を外に出して。」


そう言ってカイトはテントの出入り口の前で待ってくれている。外で隣のテントの人と話している。手早く食べて身支度もした。


「カイト。おまたせ。」


私はテントの入り口を開けて食器のトレーを持って外に出る。


隣のテントの女の人がカイトに話しかけていた。


「カイトくんは行かないの。私達は行くことにしたの。まだ準備が終わってないから出る時にでも挨拶させてね、」


と言っていた。カイトが言った。


「お忙しいでしょうから今お会いしたので大丈夫ですよ。気をつけて行って来てくださいね。メンバーの方々にもよろしくお伝えください。」


「カイト、どうしたの。」


と事情を知らないふりをして聞く。


「こちらのパーティーは応援に行くんだ。」


とカイトが言う。


「お気をつけて。皆さんにもよろしくお伝えくださいね。」


と私は彼女の方を見て言う。


「貴女が薬師の方。とてもすごいのよね。」


「彼女は違いますよ。薬師の方の身の回りのお世話をしてくれています。薬師の方はいつも外に出ないでずっと調合されてます。依頼されてる量が多くて外に出る暇もないんです。皆さんのことはお伝えしておきます。」


と慌てて被せるように言った。私は合わせるように声をかけた。


「薬師様がお呼びですよ。さあ、中へ入って。」


「では、仕事がありますので失礼します。」


とカイトは言って私とテントの中に入った。

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