14th(13th) day.-13 TAIL ZWEI/釘、扉、鍵 - 天国の扉 -/KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR
G.T. 12:54
「―――さて、そろそろか」
光のない、暗い部屋の中で、一人鎮座していた男が静かに立ち上がる。
傍らで地面に突き立てた聖槍を引き抜き、横薙ぎに振るうと、四方の壁に掛けられていたランプに火が灯った。
辺りを照らす灯火に影が揺れる。映し出された密室の中心に立つ男を取り囲んでいたのは、赤黒い色素で象られた―――無数の十字架。そして、男の正面の壁には、巨大な眼がすべてを見据えていた。
目線の先はどこに向かっているのか、―――最早、男には関係がない。
過去か、今か、―――未来なのか。
その手が届く範囲なら、掴み取ろうと藻掻くだろう。
けれど、それが途方も無い彼方なら。彼岸の先にあるとするなら。"星"の向こう側なら。
その意志が、崇高なものだとするなら、誰も止めることはない。
それが間違っているものだとするなら、―――それも、最早、男には関係がなかった。
揃えるべきものは揃った。あとは、行動にするだけ。
鍵と、釘と、―――残りはその扉を開くだけだ。
手にした聖槍に力が籠もる。
この日のために、2000年かけた。
アレイスター=クロウリーが創設した"銀の星"の存在が、男を今に導いたことに感謝している。
永きに渡り、追い求めていたすべてが、完結しようとし、終焉を迎えようとしていた。
あと、少し。もう、少し。やっと、終わる。
この際、10年の遅れは不問とした。2000年に比べれば、些細なことだ。
この10年で、より確実となった。なら、これは感謝するべきこと。
地上の戦いの余波は、建物全体を揺らした。吹き荒れた魔力の衝撃は、"異界化"の結界内を塗り替えて、一部は"地獄化"したことを感じ取れたが、―――それもこれも、男には関係のないこととなっている。
踵を返し、静かに部屋を後にした。
石造りでひんやりとした薄暗い廊下を歩き、地上へと向かう。
もう、ここを歩くこともないだろう。けれど、それを噛みしめることも、哀愁に浸ることもない。
聖槍を持つ男、―――『遺産』の異名に縛られることも、今夜で過去となる。
_go to "stigma".




