8th day.-5/戦慄組曲 - 蒼黒戦線 一幕 -/B.V.B ACT I, DIVE
―――激しく討ち合う二つの刃。最大の魔力を孕んだ槍は、一撃一撃にその片鱗を見せるかのように火花を散らす。対するは金色の双剣。剥き出しの刃は乱舞を舞うように、無秩序に振るわれる。
「そーら! どんどんいくよ!!」
「っ―――」
金色の双剣と同時に、氷の刃がジューダスを襲う。ロキの背後に円形に発生した十本の刃は回転し、そのエネルギーをもってジューダスへと放たれる。ジューダスがそれをいなすと同時に、再び刃が精製された。間合いを離されれば、その弾丸は牙を剥く。弾丸を捌いたところで、次に待つのは金色の双牙。振るわれる乱舞は、ジューダスの首級を討ち狙うように繰り出される。立ち止まることを許さないその猛襲を、ジューダスは広い庭を疾風の如く駆け抜けていく。数える都度、すでに七合。迫り来る氷牙。振るわれる双牙。ジューダスに休む行為は許されない。
だが、ジューダスが護るべきである少女は、ある違和感を覚えていた。執拗に迫る騎士の神槍。猛襲の中、一瞬の隙を見つけては間合いを詰め、今までに見せた神槍の真意を見せることなく、その刃を振るっていた。以前の彼なら、弾丸が放たれた一瞬の合間でその真意を放っているはずだったのに。
重ねて五合。結果は同じく、両者その刃を交えただけで、状況に変化は現れない。それに加え、新生のアクマは、唯々その戦闘の観賞に愉悦していた。殺気こそは途絶えたが、激変したその視線は、死の間際を争う者を嘲笑うかのように、歪んだ感情に満ちている。
「―――どうしたんだい、ジューダス。今夜はやけに積極的じゃないか」
「―――!!」
「間合いを詰めてるだけじゃ、ボクの心には響かないよ! キミらしいスタイルでッ、―――!?」
途端にジューダスの姿がロキの面前から消える。ロキの背後へと空間転移したジューダスは神鎗を横薙ぎに振るう。
「―――そんなに饒舌だと舌を噛むぞ」
続けて、とっさの障壁で槍撃を防いだロキの懐へ潜り込み、下から振り上げた刃でロキの頤に傷をつける。
「っ―――!! そんな意地悪なキミは嫌いだよ!」
「―――」
さらに九合。斬り合いはすでに二十合を超え、戦闘の中で変化は見られない。普段と違う戦闘スタイルのジューダスに、少女は不安な気持ちがこみ上げていた。
――――――なんで、ジューダスはこのような戦いを選んだのだろうか。
少女の頭の中では、それだけの疑問が旋回していた。魔術の心得がありながら、高等な魔術を使役する者に物理的干渉を繰り返す、あまりにも不利と思える戦闘。彼はそれを、率先して繰り返している。執拗に繰り返される接近は、氷牙や双牙がその首級を狙う恰好な的でしかない。それでも男は、円を描くように、猛襲を避けながら疾走していく。
「いつまでそうしているつもりだい、ジューダス! それだとつまらないよ!」
「―――!!」
―――宗次郎は気づいていた。この戦闘に漂う違和感を、己が持つ感覚と本能で直感していたのだ。記憶の中で、薄れゆく眼で、以前の戦闘を見ていた。轟音と共に放たれる閃光は、すべてを消し去らんと放たれた。雷の槍は、一切合切の存在を消し去ろうと、眼帯の少女へとその真意を示そうとしたのだ。そして、その一撃を容易く退けられた。ロキ=スレイプニールの持つ魔術障壁は、彼の渾身の一撃を完全に"否定"したのだ。
―――それを、眼帯の少女も気づいていた。ジューダスが持つ、その戦闘方法は異質なものだった。彼は元々、騎士の出ではなく、聖職者でる。魔術についても、特別長けている者でもなかった。彼は、戦闘に関して、才能がある者でもない。時を越え、"幻想"に名を懸け、存在を堕落させ、その身すらも魔に売り渡して"騎士"と成り下がった男は、存在に刷り込まれた"裏切り"を続けていたのだ。そして、能力の大部分を裏切りによって手に入れた力の最たる能力である"魔法"を戦闘に使用しようとはしないのが、男が放ち続ける違和感である。
「いったい何を企んでいるのかな、ジューダス」
「―――」
放たれる弾丸の雨に、土埃が空へと舞い上がる。迫りくる氷牙は、男の違和感を穿つかのように、次第にその威力を挙げていく。避けられれば速く、弾かれれば強く、ジューダスの足取りを追っていく。
ふと、ジューダスは動き回るのをやめた。突然の静止に勝機を得たのか、ロキは砲弾の発射をやめ、余裕気に笑いながらジューダスに近づいた。
「どうしたんだい、ついに諦めたかな?」
「―――」
男は沈黙し続けている。思い返せば、男はこの少女を毛嫌いしつつも、問われた質問には律儀に答え続けていた。それが性格なのだろう、その彼が、今回に限って一切の口を開こうとしない。ジューダスにはもう戦うだけの余裕がない。ロキはそう確信したのかもしれない。見れば、ジューダスは今の今まで、ロキの猛襲をくぐり抜けながら走り続けていたのだ。それだけ体力の消耗も早かったのだろう、肩で大きく息をしていた。
「あっけないなぁ、ジューダス。キミならもう少し楽しませてくれる思ったけど、先の結界の生成に大量な魔力を使っちゃったみたいだね。今のキミもその槍からも魔力の欠片すら感じないよ」
「―――」
「興醒めだよ。ボクの目的は果たされそうにないけど、そろそろ終いにしよう」
ロキとジューダスの距離はすでに五メートルを切っていた。手を伸ばせば、すぐにでも触れそうな位置。そこでロキは歩むのをやめ、その周囲には殺意を織り交ぜた魔力が収束されていく。一切合財を凍らすかのような、蒔絵が使ったあの氷の結界のような、大気をも凍えさせる霧が発生している。だが、ジューダスの表情には―――
「終いにするのは、こちらの方さ―――」
微塵もの諦めがなかった。
「ロキ―――!!」
「!?」
「もう、遅い―――『障壁突破・幻想解呪』―――」
――――――それは、唯々目を疑うものだった。あれほどの砲撃。土埃が立ちこめ、大地を穿ち、空間がボロボロになるほどの猛襲。その風景が、綺麗サッパリなくなったのだ。目の前に広がるのは以前の庭。戦闘が始まる前の、以前ジューダスが修復したきれいになった庭だ。
「よくもまあ、盛大な幻術だな、ロキ」
「・・・・・・っ」
ジューダスのすぐ傍まで近寄っていたはずのロキの姿はなく、煌々と輝いていた光の下に彼女はいた。先ほどまでその顔に掛けられていた眼帯はなく、あの蒼い魔眼が見開かれている。わけがわからない。崩壊していたはずの庭先には、土埃一つもなく、ただ冷たい風だけが吹き付けているだけだった。
「あれほどの空間幻術、並な魔術師には不可能だ。それもその"魔神眼"が持って為せる術か」
「・・・・・・いつから、気づいていたの?」
少女の顔には明らかな焦りが見えていた。歪みきった笑みは消え、自らの術を破られたことに憤怒しているようにも見える。
―――実に愚かな戦いだった。ジューダスの戦闘は明らかに愚行であり、不可解なもの―――それはジューダスに近い位置にいた二人にはそう見えただろう。だが、屋根の上いる宗次郎から見れば、明らかに男の戦闘は計算されたものだった。悪魔性の魔神眼によって形成された幻術の目的は、ジューダスの潜在能力を探るものだった。ロキは執拗にジューダスへと迫った。その理由は不明だが、知ろうとも思わない。だが、簡単に敗退してしまうような者に、なぜ時間を与えたのかが知りたかった。
ロキ自身の目的は宗次郎の"奪還"と、ジューダスへの"干渉"だった。"奪還"こそは組織の命であり、叛く訳にはいかないものだが、"干渉"こそは無意味なものだろう。ロキの立場として、幹部との繋がりがある者とて、幻想騎士としての存在価値はほぼ無価値なものだ。その彼女の単独行動を、チームを組んでいるクゲンは返事一つで賛同した。
それほど重要な戦闘とは思えない。だが、組織のトップも拒否をしないのも事実。そのため、宗次郎はその対象となったジューダスの能力をその目で見ておきたいと思った。
現に、ジューダスはそれに値するものだった。ロキは自らの幻術でジューダスがまんまと嵌ったとさぞ愉快だっただろう。だが、ジューダスはそれを読み、自らが持つ魔術によってそれを打破したのだ。戦闘の始め、ジューダスの持つ神槍には目に眩しいほどの魔力が収束されていた。一撃でヒトの身を蒸発させれるほどの魔力を電撃へと変換し、一振りすれば火花が飛ぶほど。
―――その膨大な魔力が、内部干渉のみの戦闘で枯渇するはずがない。外部放出されない魔力を神鎗の中で加速させ、より練度を高めていけば、より強い一撃へと変換できる。それをロキは見落としていたのだろう。男は広い庭を疾走しながら、その槍の穂先を地面に向け、"幻術であるロキ"と"現実のロキがいるであろう場所"を囲うように巨大な解呪魔法陣を精製していたのだ。魔神眼による幻術結界の対魔力性は埒外なほど強力だ。上級魔術師が全魔力を使用しても解けるものではなく、それを可能とできる者など現代魔術師の中にいるかどうか。男は、自らが持つその神槍の持つ特性を持って、その幻術を打破したのだ。
「―――ずいぶんな失態だね、ロキ」
「くっ―――」
「間抜けめ。神性な能力に呑まれ、本来の能力をも見失うとは」
先ほどとは真逆な状況。優位な位置に立っていたはずの少女は、劣勢に追い込んだはずの男に見下されていた。
「思った通りだったよ、ロキ=スレイプニール。お前の性格から、自分が上位に立ったと思えば、必ず余裕を見せて本性を現すとな」
「どういう、ことだい・・・・・?」
「もう隠す必要はないぞ、―――エド翁」
「!?」
エド翁、とはロキのことを指しているのだろうか。その名を聞いた瞬間、少女の表情は驚きを隠しきれなかった。
「まさか、―――気づいていたとはね」
「なぜオレのことやナツキの事を知っているのか。なぜわざわざこちらに出戻り、不必要な戦闘をしようとするのか。考えてみれば簡単なことだ。人の触れてはいけないココロの奥を覘く様なマネができるヤツをオレは一人しか知らん。お前はオレのことも知っていたようだし、以前に会ったことがある奴ではないかと思ったのだよ。そうだな・・・・・・、例えば十年前や―――半世紀程前とかな」
「・・・・・・伊達に聖人に仕えていたわけだ、頭は切れるようだね」
「何度も手合いした相手だ。誠に不本意ではあるが、丁重に迎えてやるのが筋だろう」
「キミが気づく前に終わらすつもりだったけど、お遊びが過ぎたようだ。いつ頃わかったのかな・・・・・・?」
「お前がアオイの友人を利用したときあたりからか。その前にもお前は別の人間の姿を利用してアオイの前にも現れている。それに、知り合いからいい情報も貰ってな。お前のくだらない遊びにいつまでも構ってやるつもりは無い。そろそろ戻ったらどうだ。正体がバレた以上、その姿でいる意味は無いだろう」
ロキを見ると再び不敵な笑みを零していた。それはいつもの負の感情。彼女は笑いながら言ったのだ。―――『いままでは遊び』、だと。
「いやはや、失礼したね。では、そろそろ序曲を終えて開幕しようではないか。ボクとキミの戦いをさ―――!!」
―――そう言うと、彼女はその姿を変化させた。
「それにしても滑稽だな。なぜ自らと正反対である姿に変えた? 最後まで隠し徹せるとでも思うたか」
「ふふん、やっぱりキミは鋭いなぁ。実のところ、ボクの変装のストックも品切れでね、あれはキミに見せていない最後の姿だったんだけど、時間は稼げたからそれはそれで意味はあったかな」
「くだらん。やはり姿を変えても根本的な中身は変わらんな。そうだろう、―――アレイスター=クロウリー」
「くくくっ、―――ははっ、あぁーーーははははははははっ」
――――――アレイスター=クロウリー。またの名をエドワード=アレキサンダー=クロウリー。それは貴族の国、英国の神秘家であり、二十世紀最大の魔術師。ある魔術結社から『不滅の人』の称号を得た魔術師で、自らを『混沌の獣』と名乗った男。その実力は計り知れないものがあり、生涯に自身しか使えない最高級な固有魔法を三つも構成した。希有な才能に恵まれていたが、その自らの能力に過信し破綻した魔術師だ。
―――その華奢な少女の姿だったそれとは、まさに正反対の姿に変化した。短く切り揃った白髪に大きな白髭。褐色の肌に琥珀色の瞳。以前の姿とは似つかわしいその姿は、長身の老人だった。
「―――そんな、・・・・・・どうやって」
その疑問はすぐにわきあがった。その老人は確かに『変装』と言った。しかし、その肉体の変化は明らかに『変身』の域に達している。
「あれは錬金術の一種だ。自らの人体構造を解析し、別の姿へと再構築することで自身を偽る魔法だ」
「それってなんでもありってことじゃないの? それなら誰にでもなれるってことでしょ?」
「本来なら、究極的には見た目だけなら誰にでもなれる。だが、今のヤツは一つだけ神性の力を持っている。オレのこの槍のようなものだ。ヤツはそれに魔力を常に使用しているが故に変装できる肉体の数が少なくなっている。肉体に対する精神の拒否反応ってやつだ。並の術者ならその拒否反応を抑制することができるが、奴はそれに魔力を使用する気が無い。自らの精神に適性する肉体にしか変化できないんだ」
「―――おやおや、今回はやけに御喋りですな。以前は戦いのほかには興味をお持ちにならなかったのに。いやはや、そのお嬢さんは貴方にとってやはり大事に見えますな」
「お前の方こそ今回はよく吠えるじゃないか、ブリテンのペテン師風情が。今回はお前の従者なんぞ何処にもいないぞ。そんなに強がっては危ういんじゃあないか」
「ははは、あれほど難いお方だったのに冗談までも覚えましたか。しかし、ワタクシもいつまでも従者を従えておくわけにはいきませんからな。貴方とこうしてこの姿で対面するのはこれで三度目です。今回はワタクシからエスコートさせていただこう」
そう言うと白髪の老人は右足を後ろに引き、礼儀正しくも一礼した。
「――――――いや、残念だが今回も貴様の出番は無い」
その隙に、ジューダスはその老人に向かって一直線に飛び出した。手に握られた神槍をそのまま老人の首元めがけての一薙ぎ。その速度はほとんど視認できるものではなく、神槍の刃は光を反射させ、一つの円を描こうとしている。遠く離れた距離を一瞬のうちにゼロにし、横薙ぎに振るわれたその一撃は一寸の狂いもなく、その首に飛び込み―――
容易く―――その首を刎ねた。老人の首はそのまま地面を転がり、主を失った肉体は仁王立ちしたまま停止している。その転がった首に目を移すと、なぜか笑みが浮かんでいた。そして―――
「はははははははははははっははははははははははははははははははっ――――」
転がりが停止すると同時に、鼓膜が弾けんばかりの大声で笑い出した。
「はははっ、やはり貴方は貴方でしたな。戦いに興味がわかなくなったかと心配していましたがワタクシの杞憂だったようです。しかし、今回はせっかちだ。ワタクシの殺気を飲み込む前に突っ込んでくるとは、なにやら焦っているようにも見えますぞ」
「勘違いするなよジジィ。何度もムカつく幻視なんぞ魅せやがって。いちいちお前の都合に合わせるつもりはない」
ジューダスはその仁王立ちした身体に踵を返し、生首となった老人に向かって歩みだした。
「いつまで生首でいるつもりだ。そのまま現在の命、消してやろうか・・・・・・?」
「はははっ、怖いですな恐ろしいですな。しかし、貴方はやはりまだ何かに焦っているようですな。ワタクシ達のワルツはまだ開幕したばかりではないですか。しかも今回は観客付きだ。まぁ、貴方側のファンの様ですが、ワタクシにとってはどちらでも良いことです。こんなに素晴らしく整った舞台なのです。それをすぐに閉幕にしてしまうのは実に勿体無い」
その老人は生首のまま演説を続けていた。首なしの身体から生首までの距離は二十歩ばかり。その距離をジューダスは歩いて詰める。生首の老人にとって、その歩みは敗北へのカウントダウンのように感じさせた。
「―――おやおや、貴女にはワタクシの敗北が見えたのですかな、お嬢さん?」
「!!」
驚いた。あの老人は生首のまま、私の心を読んだのだろうか。その顔には未だ余裕の表情がうかがえた。大局はまだどちらにも傾いてなどいないのだと。戦いはこれからだと言わんばかりの表情だった。ふいに仁王立ちの身体に目を移すと、―――その姿は何処にも無かった。
すぐに危険だと悟った。それをジューダスに伝えようと向きを変えると、その主の無い身体はジューダスに向かって駆けていた。
「ジューダス、後ろ!!」
「!?」
その肉体は一瞬にしてジューダスの後ろまでに距離を縮め、両腕を空高くに掲げた。その手元には黄金に輝く二本の三矛の短剣。そして、その掲げた腕はそのままジューダスの脳天に向けて振り下ろされる。
「ちっ―――!!」
「はははははははははっははははっははっはっ――――――!!」
鋭い金属音が鳴り響き、火花が飛び散った。ツー、とジューダスの額に一筋の血が流れる。
「よく避けました。しかし、お嬢さんが気付かなければ今頃貴方はこの場に無様にも脳漿を撒き散らしていたでしょうな」
「くっ、―――ふざけたマネを・・・・・・!!」
面前には首のなくした身体がその猛威を振るっている。手に持たれた黄金の短剣は嵐のように乱れ振るう。
「ははははははははっ!! 受け止めるだけで手が一杯ですな!! 実に愉快だ!!」
「くっ―――!!」
ほぼ完全なまでの接近でジューダスの槍を扱える間合いではない。その間合いは完全に黄金の短剣の間合いであり、その不条件な戦闘の大局はアレイスター=クロウリーへと傾き始めている。
「ちっ!! ―――『ニンド・アンスールオス』―――!!」
「むっ!?」
ジューダスと首なしの間に刹那にして現れた魔法障壁。その障壁に攻撃を阻まれた首なしは腕を大きく後方に逸らし、障壁を力いっぱい貫いた。
「なんと! これほどの障壁とは!!」
しかし、その障壁は老人の渾身な一撃を難なく防ぎきった。
「貪れ―――『イス・ティール』―――!!」
刹那、その強固なまで広がる障壁の中心から一点なる突きが奔る。それは先ほどアレイスターが放った一閃。その威力をそのまま同じ形で首なしの臓腑へと放たれる。
どさっ、と音を立てて首なしの肉体は地面に落ちた。合わせ鏡のように放たれた一閃は、その急所を外す事無く、老人の左胸を貫いた。
「はぁ、はぁ・・・・・・。どんな魔術だ。奇想天外な能力にも程があるぞ」
「―――いいのかい? 警戒を解いて」
突如、静かに響く宗次郎の声。闇夜を照らす月明かりを背に、少年が声を上げた。
「どういうことだ・・・・・・?」
「そのまんまの意味さ。―――戦いはまだ、終わっていない」
「―――『占領する真実 “狂人の酒宴”』―――」
_go to "r.v.w act II, pinch".




