8/76
残り87日
「よし、帰るか」
やっと長い長い一日が終わった。どうして月曜の学校ってこんなに長く感じるのだろうか。朝から会社に出勤しているサラリーマンもこんな気分を味わっていそうだ。
「ねぇ早く帰ろぉ!」「うん、少し待って」「いまからカラオケ行こうぜ」
「あ~、部活だりぃ」「それな」
クラス内も今から放課後ということもあって賑やかになってきた。健人は相変わらず女の子に囲まれながら部室に向かっている。
柏木花蓮は……珍しく女子と仲良く――
「ねえ、柏木さん。私の財布しらない?」
「……知らないわよ」
――しているわけじゃなさそうだ。
けどまあ、俺には関係ない。早く帰って景兄の飯を作る仕事が待っているのだ。
「ちょっとカバンみせてくれる~?」
「や、やめ――」
「あ! あった!! こいつ美香の財布とってやんの!!」
……なんか不穏な空気だな。別にどうでもいいが。
「ちょっとこっち来てもらおうかな、柏木さん」
「大丈夫、大丈夫、変なことしないって」
「痛っ。引っ張らないで」
教室から出る間際、そんな会話が聞こえた気がした。
残り87日