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「やっぱここにいたのね」
肌を焼き尽くすような熱が空から降り注ぐ午後1時ごろ。屋上でいつもどおり昼飯を食べていたら、例の謎少女「柏木花蓮」が背後から話しかけてきた。
「……なんの用だ」
「なんの用ですって? ええ、そうよ、あるわ。とっても大事な用事が」
もはや死の宣言を聞いた後じゃ何を聞いても驚かない自信しかない。というか、どうせまたろくでもない事に決まっているだろうが。
「あなた、いつもここで昼休みを過ごしているの?」
「まあそうだな」
「……誰もいないけど、一人?」
「悪いかよ」
「そう。なら遠慮なく言えるわ」
彼女は目をつぶり、手を胸に添えて静かに呼吸を整える。まるで本物の告白をする前にみたいな挙動で。
「……」
やがて屋上になびく風の音しか聞こえなくなったころ、彼女が腕を組み見下しながら言葉を吐いた。
「いつも一人でご飯なんてとっっても残念な人なのね!!あーかわいそうに!!」
これ以上ないくらいのドヤ顔で言い終えた後、彼女はそれ以上の言葉を発することなく沈黙する。
「……おい。もしかして用事ってそれ言いに来ただけじゃないだろうな?」
「は? そうに決まってるじゃない。一昨日から馬鹿にされたまま返事ができなか
ったから、そのお返しを言いたかったの。あー、やっとスッキりしたわ。今日はよく眠れそう」
そう言うと彼女は本当に満足したようで、こちらの興味を完全に失くし踵を返して屋上から去っていった。
用事とやらが俺の想像した100倍くらいくだらないことだったので呆気にとられてしまい、そのまま彼女をただただ見送った。
そして今、俺は一つの確信を得る。
「あいつとだけは仲良くなれる気がしねえ!!」
まあ、そもそも仲良くしてる奴なんて健人と……例外を入れて二人以外だけしか存在しないけどな。
「……教室に戻るか」
――今日はやけに、蝉の声が五月蝿く感じた。
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