残り100日
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月日は7月7日。
朧げな夕日が窓から差す放課後の教室。
彼女は突然――己が死を宣言した。
「私、100日後に死ぬんだって」
「……は?」
あまりに意味が分からず、率直な思考がそのまま言葉に出てしまった。
だってそうだろう。今までまったく話したことのないどころか、まともに顔も覚えてない女の子から余命宣告されたんだぞ。混乱しない人がこの地球上に存在するのか。
「だから、あと100日、過ごしたら、私は、死ぬの」
「別に日本語が理解できないんじゃねえよ……いやすまん、やっぱ理解できない」
彼女はさらに呆れた顔をして俺を見下してきた。いやいや待ってくれよ、なんで俺が馬鹿にされるの? 頭がおかしいのはテメェだろ?
今日はたまたま違反指導で居残りをしていただけで、普段は学校なんかすぐに去っている。
お経のような説教が終わり、中身のない鞄を取りに教室に寄ると……コイツがいた。特に用もないし無視して帰ろうとしたら、こんな意味不明な状況になったわけだ。とんだ災難だ。
すると彼女は深い溜息を吐きながら再び俺を見た。
「せっかく私が生涯最大の告白をしたのに。なにか感想はないの?」
いや知らんがな。誰も頼んでねえよ。何だコイツ、本当に頭がおかしいんじゃないのか。
「あるわけねぇだろバカ。じゃあな」
これ以上この空間に居られないと思った俺は、呆気にとられる彼女をシカトして教室を出ていった。
残り100日