願いが叶うこと
高校2年の夏に、おもむろに起こった奇跡は、僕の人生を変えた。
何をするにも人並みだから、平凡な人生を歩むんだろうなという確信と、それに伴う安心感に溺れて自堕落な生活を貪っていた。
いつも通りの朝に、それは現れた。それは空間に浮いた空間であった。その空間を通して見た世界は、ネガに染まって見えた。僕はそれがとっても不思議で、ついつい触れるかどうか試してしまった。その瞬間僕の視界はネガに染まった。
僕は焦った。こんな訳のわからない理由で僕の視界が歪められてはたまったものではない。
「母さん、!大変なんだ!」
「どうしたのそんなに焦って。」
「目がおかしくなって、周りが変な色に見えるようになっちゃった!」
「本当かい!すぐ眼科に行ったほうがいいわね」
だが、果たして眼科に行って治るのだろうか。よく考えるとあの空間が見えるように感じたのももともと目がおかしかったのかもな、、、。
「疲れ目なのかもしれません。しばらく様子を見て、治らないようならまた受診して下さい。」
結局眼科で見ても原因はわからなかった。
1日経っても視界はネガに染まったままである。眼科に行って原因がわかるとも思わなかった。朝目覚めても変わらない風景に、僕は願った。
頼むもとに戻ってくれ。
戻った。
信じられなかった。願っただけでもとに戻るなんてありえないし、意味がわからない。やはり心理的なものだったのだろうか。
「母さん、治ったみたいだよ」
「あら、良かったわね。またおかしくなったら言うのよ。」
まあこれで一件落着かなと思うしかない。
「今日学校でしょう。早くしないとバス来ちゃうわよ。」
ふと時計を見るとかなりギリギリの時間だった。朝食を食べる余裕どころか、全力で急いでも間に合わないかもしれない。困ったな、バスが遅れてくれないだろうか。取り敢えず着替えて、歯を磨いていると、
ガッシャーン!
今まで聞いたこともない音にびっくりして、窓を覗いてみると、トラックが電柱に突っ込んでいた。運転席に電柱がめり込んでいるのが見えてしまった。僕はスマホを手に取り、慌てて119番にかける。トラックに阻まれて、バスが立ち往生している。救急隊を呼びながら、僕はすごく嫌な予感がした。
願いが叶うこと。誰もが一度は想像することだろう。もちろん願っただけで叶うなんてことは起こりようが無いはずである。例えばここにある歯磨き粉を倒そうと念じてみた人も多いだろう。
その瞬間、地面が揺れた。
「地震よ!隠れて!」
母さんが叫ぶか叫ばないかの内に僕は洗面台の下に隠れた。かなり大きな揺れである。震度は7まであるのではないか。間違いなく大災害だ。
地震が何より恐ろしいが、僕はとにかくこの地震が僕が起こしたのではないかという疑念から抜け出せ無かった。
揺れが収まってから、取り敢えず家族で避難所に向かうこととなった。
避難所で僕は、何も考えられなくなってしまった。何か考えると大変な事になってしまうような気がしたからだ。事故のこと、地震のことは偶然かもしれないが、ネガの空間という非現実が嫌な予感を増幅させる。
「大丈夫?、何か悩んでることがあれば言えばいいのよ」
母さん、僕は今考えられないんだ。話しかけない…
天井から板が剥がれ落ちて、一瞬で母さんの体は千切られた。
「あああああああああああああああ!!!!!!!」
僕は気が狂った。
「願いが、叶ってしまうんですね」
驚いて振り向くと、そこには白衣の男が立っていた。
「ああ!そうなんです!…そうなんです…!」
それ以上の言葉を紡ぐことをためらう。何を考えればいいかわからない。
白衣の男はポケットに手をつっ込むと、カチリと何かのボタンを押した。
ひどい轟音と共に僕の体は熱線に焼かれ、跡形もなく朽ちる。
また、世界は救われた。
適当に書いたのでおかしかったら許すかコメントしてください。