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でかい。

その翌日。

 朝起きたら、彼女がどうたらという昨日の話はぶっちゃけどうでもよくなりかけていた。

 というかめんどくさい。ある時すごいやる気になっても、寝て起きたらどうでもよくなってることってあるよね。

 しかもなんか知らんが今日はあのアホが一人で先に学校に行きやがった。真奈美も俺を起こしに来やがらず、おかげで遅刻した。


『これから彼女作る人につきまとったら悪いかと思って。まあ完璧な泰地さんは遅刻なんてしないでしょうけど』


 学校について「昨日は調子に乗って申し訳ありませんでした」と送ろうかと思っていた矢先、弥月からそんなメッセージが届いていた。

 相変わらず小憎たらしい言い回しにイラっとした俺は、謝罪するのをやめて『はん、おかげさまで遅刻してやったよ』と返信してやった。

 自分で打ってて意味がわからなくなっていたがまあいい、そのせいでこっちは再びやる気が出てきた。


 携帯をいじって受信メールボックスを再度確認する。

 昨晩、弥月を追い出した後勢いで開いたラブレターは、『良ければ連絡を』と携帯のアドレスと名前が記載されているだけの拍子抜けのものだった。

 彼女の名前は天宮舞依あまみやまい。クラスは1-Cというから、弥月と同じクラスのようだ。

 おそるおそるメールを送ると、


『明日の放課後、16時に体育館裏に参上する。そこで会おう!』


 と怪盗の予告状みたいな一方的な返事が返ってきた。

 すでに少し嫌な予感……いやものすごく嫌な予感がしていたが、これで会うのすらバックレたら、弥月にプギャーされるのは目に見えている。

 もうこうなりゃ半分ヤケだぜ。


 


 放課後、ほぼ時間どおりに待ち合わせ場所である体育館裏にやってくる。相手はまだ来ていなかった。

 ここは周りを塀に囲まれており人の影もなく、そして意外に広い。

 こんなとこあったんかいという穴場的なスポットという感じはするものの、なにぶん体育館で練習している運動部がうるさい。

 ちょっと告白の場所としてはどうなんだ……と思っていると、ダッダッダッと脇道から地を蹴る音がして、勢いよく人影が走り込んできた。


「遅れてすまない!」


 よく通る声で現れたのは、半袖体操服姿の女子生徒だった。

 ギザギザの前髪にフワっとしたショートヘア。らんらんと元気よく光った瞳に、健康そうな血色のよい肌。

 昨日は遠目でよく見えなかったが、目鼻立ちがシンプルにくっきりしていて弥月とは別ベクトルの美少女と言える。

 そして何より目を引くのが、体操服がはちきれんばかりの胸元の大きな膨らみである。でかい。

 

 やはりどっかで見覚えがあるようなないような……。

 俺と同じ一年だと言うが、中学が一緒だった奴かな? 

 まあしゃべったことがないのは間違いない。


「単刀直入に言おう。黒野泰地、好きだ! 私と付き合ってくれ!」


 女子生徒はまっすぐ力強く俺を見つめながら、ダダーン、と効果音がつきそうな勢いで言った。

 やだ男らしい……じゃなくて、なんかもっとこう恥ずかしそうに頬を赤らめながら……みたいなほうがいいんじゃないでしょうか。

  

「え、ええっと、その……」

「さあ返事は? さあさあ!」


 相手はこれでもかと顔を近づけて返事を迫ってくる。

 この迫力、気弱な女子なら押し切られてオッケーしちゃうかもしれない。

 今まで告白などされたことがないのでなんとも言えないが、これは色々とすっ飛ばしている気がする。


「あの、俺と話すのって初めて……だよね? 俺のどこが好きなのかなぁって……」

「ん? それはなんとなく……フィーリングかな! あ、一目惚れか!」


 なんか理由もすごくふわふわしている。

 しかしこんな本能のままに行動してそうな子が、わざわざ弥月を呼び出して付き合っていないのを確認して……なんて回りくどいことするかね?

 通り魔的に告白してきてもおかしくない勢いなんだが。

 

 どのみち「遅れてすまない!」の時点で九十九割方断るほうに傾きかけた俺だが、今考えているのはその後のフォローのことだ。 

 ものすごいブスだったらあれはいかんでしょ、で終わりだがこれはそうはいかない。

 なんかヤバそうな奴だったから、と言えばきっと弥月は、

   

『人様のことどうこう言えるの? ダメ人間の分際で』


 言いそう。

 そしてさらに、

 

『あれだけ言ってたのに結局やめたわけ? 女の子と付き合う度胸もない口だけのイン○野郎!』


 イン○はともかくめっちゃ言いそう。

 以降ダメ人間からヘタレダメ人間にクラスアップすること間違いなし。

 泰地よ、本当にいいのかそれで。幼なじみにも妹にもダメ人間ダメ人間と完全に舐められているわけだが。

 やはりここらで一発彼女でも作って、奴らに目にもの見せてやる必要があるのでは。 


「どうかしたか? それで返事は……」


 それにさっきから目の前でぶるんぶるんと揺れるおっぱいに気を取られて仕方がない。

 なるほどこれは静凪には一ミリもないものだ。未知の領域だ。

 昨日の弥月との話ではないが、もし付き合いだしたらこれを自由にしていいというわけだが……。

 ……ゴクリ。

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