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俺の嫌いな嫌いな幼なじみ ~鈍感ダメ男攻略計画~   作者: 荒三水
後日談 弥月様甘やかしすぎ問題とシスコン疑惑

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龍騎さん


「おい、やめるんだ君たち!」


 俺は大声を上げてラノベたちの間に入っていく。

 こういう状況初めてでよくわからんので、なんか光司くんっぽい口調になってしまった。

 

「あぁん?」


 すぐにヤンキーさんたちにオラついた目つきで睨まれる。これは薄い、予想以上に眉薄いよ。

 それによくよく見ると剃り込み入ってる昔ながらのヤンキーもいれば、チャラチャラした金髪のやつもいて統一感がない。

 しかしどいつもこいつも思った以上にヤバそうなオーラを放っている。


「パス!」


 ここは舞依にキャラチェンジだ。

 やっぱり今はタッグバトルの時代だね。

 だがどういうわけかパートナーは交代を拒否し、俺の背中をグイグイ押してくる。


「や、やめろ押すな押すな」

「何をしている、相手はスキだらけだぞ」


 全然スキとか見えないんですが舞依さんには見えてらっしゃるらしい。

 俺たちがグダグダやっていると、ふと視界の隅で背を向けてぴゅーっと逃げていく影に気づいた。


 何かと思えばラノベと一緒にいた女の子ではないか。ラノベがこっそり今のうちに逃げなよとかやったのかもしれんが、なんだろう……何かちょっとイラッとした。

 ラノベの分際で何を勝手に主人公ぶってるのかと。これではまるで俺がかませの脇役のようではないか。

 仕方ない、ここは一発俺がビシっと決めてやらねばいかんな。


「お前ら……痛い目見たくなけりゃ、さっさと散れ」


 と俺がかませの三下っぽいセリフを吐くと、


「あぁん? なんじゃおりゃぁ!!?」

「オイ見ろよ、こいつも女連れじゃねえかよ! 彼女の前で一丁前にいいとこ見せようってかぁ?」

  

 残念ながらいいとこを見せる必要などない。

 皆無。虚無である。

 

「聞いたか泰地、彼女だと」

「ちょっと黙っててもらえます?」


 それでこの女は何を嬉しそうにしているのか。

 するとヤンキーたちは、急に笑顔になって詰め寄ってくる舞依を見て、


「おいおい、激カワじゃねえかよ……」

「見せつけやがってクソが……」


 えぇ……マジで? しかも激カワて。

 徐々に彼らの俺に対する殺意が高まっていくのを感じる。

 かたやラノベはヤンキーにビビっているのかいきなりの俺の登場に驚いているのか、ただひたすら固まって立ちつくしている。もう完全に放置である。

 ヤンキーたちの注意はすっかり俺たちの方に向かっていた。


「見ろ泰地、男たちのいやらしい下卑た視線が一身に突き刺さってくる……はやく、はやく助けてくれ」

「いやそんなんどうでもいいからむしろ助けて。俺を助けて」


 とお互いに助けを求めあっていると、あさっての方からより一層オラついた甲高い怒鳴り声が響いた。


「オイ、おめぇら何やってんだよ!? こんなとこで油売ってんじゃねえぞ!」

「あっ、龍騎さん!」

 

 ん? 仮面ライダーかな?

 声がするなり、まとまりのなかったヤンキーたちがさっと道を開けて頭を下げ始めた。

 そのど真ん中を、いかにもボスっぽい奴が肩を怒らせてのっしのっしと歩いてくる。

 なんかもういかにもヤバそうなのが……もしかして輪作られてタイマンとか張らされちゃうパターン?

 これはいかんと、俺はブチギレ寸前の真奈美のご機嫌を取る時のように腰を低くして揉み手をしながら、


「あっ、どーもどーもすみません、なんだかご迷惑を……」

「あんだぁ、てめえ……」


 ちらっと御尊顔を上目に見ると、ガチガチに逆だった金髪頭が驚いた顔をした。


「あれっ、泰地じゃん」

「あっ、キチガイ」


 なんかどっか見たことある顔だと思ったら、かのはぐれドキュンオタクこと田中だった。

 髪型もいつにも増して気合入ってるし、似合わない革ジャンとか着てるしで全く気づかなかった。

 田中という普通の名字から下の名前が龍騎とは……。

 いや、ていうかマジで何やってんのコイツ。


「うわぁ、いい年こいてDQNごっことかまじひくわ~」

「いやぁ、コイツら中学の後輩なんだよ。定期的に集合かけてんだけど」

「えっ、ってことはみんな中学生……?」

 

 おっさんみたいなやついるんだけど本当に中学生かよ。

 おそるおそる見ていると、突然剃り込みの入ったおっさん中学生が胸ぐらを掴みかからん勢いで俺に詰め寄ってきた。

 

「おいてめえ、さっきから龍騎さんに向かってなんて口きいてやがる!」

「オイ待てや、てめえこそオレのダチに向かってなんて態度だよ? ぶちかますぞ?」

「え、あっ、す、すいません龍騎さん!」

「すいませんじゃねえんだよゴラァ!?」


 謎の沸点を見せた田中はそのままおっさん中坊をボコリ出した。

 やっぱコイツやべえわ……頭おかしい。

 おっさんを草の上に転がすと田中は俺の肩を馴れ馴れしくポンと叩いて、


「コイツは黒野泰地っていうまあ……熱い奴だ。お前ら、見かけたらきっちりアイサツすんだぞ」


「うっす!」と周りからいい返事が聞こえてくる。

 いやマジで仲間扱いされるのは勘弁。もうほんと赤の他人にしてほしい。

 お金とか払うからこの人たちどっか行ってくれないかな。

 田中はふははは、となぜか笑ってみせると、ずっと傍らに呆然と立ちつくしていた恭一に気づいた。

 

「おっ? よく見たらラノベもいるじゃん」


 俺もすっかり忘れかけていたがラノベだ。もともと問題はそっちなのだ。

 恭一ははっと我に返った顔で俺たちを見回すと、


「な、何だぁ田中君じゃないかぁ! びっくりさせないでよもう! あー怖かった」

「ならなおさらボコるわ」

「ひーっ!?」


 ほっと安堵しかけたラノベに、田中が肩パンを入れていく。ついでに俺も一発入れといた。

 そういえばあの女の子は……とあたりを見渡すがよほど遠くに逃げたのか影も形も見当たらない。

 こうなったらもう直接ラノベに詰めようとすると、田中がにじりよってきて舞依のほうへ目配せをしながら耳打ちしてくる。


「おい泰地、その子誰だよ。ゆりめものみく姉に激似なんだが……クソかわいいじゃねえかよ……三次元の分際で」

「そんな女は知らん。ただの通りすがりじゃないのか」


 なんかもう田中も含めて色々知らない人にしたい。

 なるべく舞依と目を合わせないようにしていたが、田中がしきりにチラチラしているのが気になったのか、舞依が自分から近づいてきて勝手に名乗り出た。

 

「私は天宮舞依。用無しになったら捨てられる都合のいい女だ」

「用無しもなにもそもそも役に立った記憶がないんだが?」


 またまたぁ、と何がおかしいか舞依はひとりでに笑い出す。

 すると田中も調子を合わせるように笑って、

 

「へ、へえ~。天宮舞依……か。へえ~……」

 

 しゃべりたいけど話しかけられないんだかしらないが、やたらに頷いてみせる。

 だがそれでなにか察したのかはたまた気に入らなかったのか、舞依は急に厳しい表情になってそれに答える。


「悪いが私は、大人数で一人を取り囲んで弱い者いじめをするような、そんなことをする輩とは仲良くなれそうにないな」

「……はあ? 弱い者いじめだぁ……? そりゃあオレが最も嫌いな言葉じゃねえかよ」


 本当かよこいつ、どういうキャラなんだかいまいちよくわからん。

 何か知らないが今ので龍騎さんの変なスイッチが入ってしまったらしい。

 田中は真正面から舞依に向き直って、至近距離でガンを飛ばしていく。


「オイ、今の言葉取り消せ」

「その必要があるのか? 取り消してもらいたくば一人で向かってこい」


 と舞依も一歩も譲る気配を見せず、睨み返していく。

 え……何この流れ。思いがけず戦闘民族同士が出会ってしまったらしい。

 俺が突然の展開に絶句していると、両者向かい合ったまま無言で構えをとった。

 

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