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俺の嫌いな嫌いな幼なじみ ~鈍感ダメ男攻略計画~   作者: 荒三水
後日談 弥月様甘やかしすぎ問題とシスコン疑惑

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普通にバカ

「やあ二人共。ラブラブじゃないか」

 

 誰かと思えばやってきたのは舞依だった。まあ他にこの場所を知っているとなると舞依ぐらいしか思いつかない。

 舞依はニコニコと笑顔で、なぜか腰に手を当てながら俺達の前で仁王立ちをしている。

 リアクションに困った俺がガンスルーしていると代わりに弥月が、

  

「何か用?」

「とくに用というわけではないのだが、遊びに来たぞ」

「今二人でご飯食べてるから、後でね」


 思わず二度見してしまう。舞依とか邪魔だよどっか行け、と言わんばかりの言い草。

 この前までの弥月だったら、あはは……なんて笑ってどっちつかずの対応をするだろうに。


「そうか……そうやって付き合いだしたら、私はのけものにされるわけだ。ふーんふーん」


 舞依は俺たちが付き合いだしたことを知っている数少ない人物だ。

 わざとらしく口をとがらせて、いじけた風な仕草をしながらチラチラしてくる。

 最近そういうカワイイ系を意識しているのかなんだか知らんが、まあそんなことしたところで所詮舞依だしという話になる。


「なんだい羨ましいのかな舞依くん」

「羨ましい羨ましい」


 そうやって素直に言ってくるところはかわいい。

 やっぱり女の子は素直が一番だね。だがその後がよろしくない。

 

「今度一日泰地を貸してくれないか。レンタル彼氏とか、そういうのあるじゃないか」

「彼女の目の前で彼氏をレンタルしようとする輩がどこにいる」


 根本的になにか勘違いしている。とんでもない高度なプレイじゃないか。

 これにはもちろん弥月様も黙っておらず、

 

「舞依? あんまりバカなこと言わないでね?」


 口調は優しいが目が笑ってない。ちょっと怖い。

 舞依は弥月の視線から逃げるようにささっと俺の背後に隠れると、こっそり耳打ちしてくる。

 

「最近弥月が怖いんだ。これも泰地のせいだぞ」

      

 何で俺やねん。

 ていうかこういう事してる時点ですでに横からジリジリ視線感じるんだが……。

 弥月はよくあるラブコメの図みたいにぐいっと俺の腕を引っ張って、舞依から引き剥がす。


「うーん、私も彼氏がほしい。ほしいぞ~」

「お前にもそういう感情あったんだな」

「一体私を何だと思っている。こう見えてピッチピチの女子高生だぞ?」

「表現がおっさんくせえんだよな」


 ピッチピチの女子高生がなぜか元気もりもりみたいなポーズをしてみせてくると、黙って聞いていた弥月が横から口を出した。


「あ、でもほら、舞依には光司くんがいるでしょ? この前いっしょにテニスしたとかなんとかって……」

「光司? ああ、アレはダメ。全っ然ダメだ」


 舞依は思い出すのも忌々しそうな顔をする。

 イケメンキャラ的なポジションだったのに、いつの間にかアレ呼ばわりされている現実。

  

「こっちはさっさと試合をしたいのに僕のラケットはなんたらモデルで……だとかうんちくが始まったかと思えば、フォームはこういうふうに……とやたら上から指導しようとしてきてな。私だって経験者だから、そんなもの言われるまでもないのにだ。それでもフォームが何かおかしいとしつこいから、そんなに言うなら私の球を場外まで飛ばしてみろと野球ボールを投げこんだら、球が前に飛ぶどころかラケットが折れて全く話にならなかった」

「後半おかしいよね、テニスってそういうスポーツじゃねえから。いきなり野球ボールどっから来た」


 最後までコイツの話を聞いたのがバカだった。

 当の光司くんはなぜか舞依にゾッコンらしいが、こっちは全く歩み寄る気配がない。


「そういえばあいつ、最近弥月のとこには行ってないのか?」

「んーなんか、この前お母さんがもう来ないでって断ってからあんまり見ないかも」


 ひでえ扱いだ。一応親戚だろうに。

 さすがにちょっとかわいそうになってきた。

 今度俺が誘ってやって、パフェでもおごらせてあげよう。


 そこで一度会話は途切れるが、舞依は邪魔する気マンマンなのか立ち去る気配がない。

 そのくせ「私のことは気にしないで好きにやってくれ」と意味不明なことを言い出すので、結局弥月が話題を提供する。

 

「舞依はテスト勉強はどう?」

「う~んテストか。まぁまぁかな~……」


 歯切れの悪い返事をする舞依に、俺はふと気になって尋ねる。


「実際舞依さんの頭のデキはどうなんすか? この前の中間何点ぐらい?」

「ん? この前の中間はたしか……」


 申し訳ないがこの後の舞依の発言には自主規制を入れさせていただいた。

 ピー音が必要なレベルでヤバイ点数だったとだけ言っておこう。

 この女、運動にかまけてばかりいるが実は意外に頭も……みたいなこともなく、普通にバカだった。いやすごいバカだった。

 

「入っていきなりそんな点数って、どうやって入学したんだよ……」

「私はスポーツ推薦で入ったからな。筆記試験は受けていない」

「そういうの闇が深いよねほんと」

「人のことばかり言うが……泰地は普通に入ったのか?」

「普通にってなんだよ、普通は普通に入るんだよ。俺はやる時はやる男だぜ?」

「あたしがつきっきりで勉強見てあげたんだけどね」

 

 すかさずドヤ顔で弥月が横槍を入れてくる。

 別にそうやってオチをつけなくてもいいんだけども。

 すると舞依はその話はもうどうでもよさそうに、


「とにかく私は今恋愛がしたいぞ。テスト前で部活も休みで暇なんだ」

「いや勉強しろよ。なんで休みだと思ってんだ」

「じゃあ泰地、私と一緒に勉強しよう!」

「ダメダメ。泰地は私と勉強するんだから」

「むぅ~!! そうやってまた私をのけものにして!」


 舞依はほっぺたを膨らませてみせるが、かわいいと言うかやはりなんかいまいちなんだよな。 

 ボスが怒り状態になったみたいな。なんかそのへんの通行人に怒りタックルしないか心配だ。

 ここでもやはり弥月が折れて、

  

「わかったわかった。舞依も一緒に勉強見てあげるから」

「おおっ、本当か! やっぱり弥月は優しいなぁ。私が勉強教えてほしいと言うと、たいていの人は断るからな」


 まあそっちのほうが賢明だわな。

 それにしても弥月のやつ、安請け合いして大丈夫なのかねえ……。


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