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俺の嫌いな嫌いな幼なじみ ~鈍感ダメ男攻略計画~   作者: 荒三水
後日談 弥月様甘やかしすぎ問題とシスコン疑惑

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勝ったらご褒美

「ねえダメだよ、やっぱりそれ……」

「ん~? もうビッチャビチャでいやらしいな」


 ここまでの会話でよからぬ想像をした諸君は完全に心が汚れているぞ。

 というかエロ本の読みすぎだ。まあ俺がわざとやってるんだが。


「……なにがいやらしいの? 泰地がこぼしたんでしょ」

「いやお前のせいだぞ」

  

 あ~んしてって言うからやだって言ったら、このアホが無理やり箸に食らいついてきやがった。

 そのせいでバランスを崩して、床においてあったペットボトルを倒してさらにその上にウインナーを落っことしてしまい、最初の会話に戻る。


「いや~しかしこうやって毎日深雪さんの弁当食えるなんて最高だな」


 俺は弥月の持ってきた弁当箱から、ひょいひょいとおかずを自分のタッパーに輸送していく。

 俺の弁当は「おかずはどうせもらうでしょ」という真奈美のジャイアン理論でついに卵焼きすらなくなりまさかの白米のみ。

 

「まあ元から真奈美の卵焼きなんていらなかったな」

「え~、真奈美ちゃんの卵焼き美味しいのに」

「そうとは言い切れないわけよ、バフデバフの関係で。とにかく俺はこっちを取るね」


 そう言って俺は卵焼きの群れに箸を突っ込んで、弥月のぶんもろともに一斉に口に運ぶ。

 う~んうまい。これぞまさに至福のとき。


「おいしい?」

「最高だね。もう昼は一生この弁当でもいいわ」

「へー、一生?」

「うんうん、一生一生」


 やけにしつこいなと思いながらも、俺は相槌を打ちながらさらに隣の唐揚げに箸を伸ばす。

 こちらもぱくっぱくっと弥月の分がなくなる勢いで口に運んでいると、弥月は怒るどころか「んふふふ……」と気持ち悪い笑いを漏らしだした。

 

「何? さっきから……」

「あのね、実はね―……。今日はこれ、ぜーんぶあたしが作ったんでーす」

「は?」

「だからこれあたしが全部作ったの」

「ウソつけ」

「ホントだってば。そんな真顔で言うことないでしょ」


 嘘だろ……? 本当に弥月が……?

 今日のはなんかいつにもましてデキがいいな~なんて思ってたぐらいなのに。


「最近お母さんに教わったり、いろいろ勉強したりしてるの。料理自体は前からやってたけどね」


 わかってはいたがやはり基本ハイスペックなのだ。

 本人は自分からいろいろやるタイプではないとはいえ、やらせればたいていなんでもうまくできてしまう。それでいて陰でコツコツ努力をいとわない。

 昔から俺が何かやりだすと、なぜかこいつが「私もできるよ」なんて言ってこっちがやる気も失せるぐらいにうまくやってしまうのである。

 敵に回すとクソうざいが味方にすると頼もしいタイプだ。

 

「さすがは俺のヘルパー。まあこれぐらいできて当然かな」

「こういうときぐらい素直に褒めてくれてもよくない? でもいいや、泰地は一生このお弁当でいいんだもんね~」

「は、はあ? いつ俺がそんなこと言った」

「言ったよ言った~。ついさっき言ったじゃん。くすくす」


 うわ完全にハメられたわ、汚いやり方だぜホント。

 その後俺は陰湿な姑のごとく、「これは味付けが……」「塩分が……」とか適当に言いながらも結局綺麗に全部弁当を平らげる。

 そして片付けを済ませた終始ごきげんな弥月が、ふと思い出したように提案をしてきた。


「あのさ、今度のテストなんだけど、どうせだったら勝負しない?」

「勝負?」

「うん。テストで勝ったほうの言うことをなんでも聞くっていう」


 ん? 今なんでもって……なんて騙されるか。

 どうひっくり返っても俺が勝てるわけがない。実質無条件で俺の罰ゲームみたいなもんだ。


「だがも何もなく普通に断る。断固拒否する」

「言うと思った。じゃあ勝負じゃなくて……泰地があたしに勝ったら、ご褒美。これならどう?」

「ご褒美? 何を?」

「泰地のしたいこと……なんでも」


 ん? 今なんでもって……いやいやないない。 

 どの道俺が勝つことはありえないし、絵に書いた餅というやつだ。

 

「いやぁ、無理だね。なんていうか……フェアじゃないよね、それは」

「え? どういうこと?」

「俺にハンデ300点ぐらいはくれないと、公平性が保てないというか」

「わかった、じゃハンデ300点ね」


 またわかっちゃったよ。冗談で言ったんだけど。

 期末のテストは9だか10科目だか忘れたが、いくらなんでもこれはさすがに勝ち確……そんなに俺にご褒美をあげたいのか? 

 いや待てよ、まさかこの女……。


「なんでもって……それはつまり本当になんでも?」


 改めてそう念を押すと、弥月は若干顔を赤らめてうなづく。

 その反応で確信した。この女……やる気だ。ついにこの時が来てしまった。

 ついに俺も、大人の階段を登る日が。

 

 腰を落ち着けたスカートの裾から、スラリと伸びる足に思わず目が行く。

 この足に踏まれたいと思っている紳士多数の中、その気になれば俺は好きなようにできるわけだ。

 実際ご褒美だなんだとそんな回りくどいことをしなくとも、きっと拒まれることはないだろう。

 強めに踏んでくださいお願いしますって土下座すれば……って違うわ。

 

 などと俺が妄想たくましくていると、とつじょ階下で足音がしてはっと我に返って身構える。

 音は通り過ぎることなくそのまま近づいてきて、たったったっと二段三段飛ばしで一気に階段を駆け上ってきた。

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