弥月の日記 4
「弥月のことは絶対守るって言ったよな? なら変な誤解を解くために、『僕はすぐ他の子に目移りしてしまう二股野郎のクズです』って校門前でビラ配れ」
数日後、泰地がそう光司くんに詰め寄って、その言葉の通り本当にやらせてしまった。泰地自身も一緒になってやって、ノリノリですごく楽しそうだった。
でもそれが思いの外すごい騒ぎになってしまって、そのうち先生が飛んできて二人一緒にどこかに連行されていった。
そしてそれがどうこじれたのか、「すぐ他の子に目移りしてしまう二股野郎のクズ」というレッテルが光司くんだけでなく泰地にも貼られてしまった。
でもそのかわりあたしの変な噂が、二人のクズ男に騙されたかわいそうな子というものに変わって、みんなから心配されるようになった。
あたしがちゃんとみんなに説明するから、って泰地に言ってもまたヘンにこじれたらめんどくさいからしなくていいって言うし。
もしかしたらこっちに飛び火しないように、泰地が自分でそうやって言ったのかもしれない。……ってのは考えすぎかな。
その一方で、そんなことになったにもかかわらず光司くんは「なんだか許された気がしたよ」と言ってなぜか嬉しそうに笑っていた。
最近は舞依につきまとって罵倒されてもニヤニヤしているのでちょっと怖い。なんか裏で泰地が糸を引いているような気がするんだけど。
お母さんは無事検査を終えて特にこれと言った問題はなく、今現在体調は悪いどころか上向き。
いろいろ喋ってスッキリしたからって言ってたけど、誰に何を言ったんだろう?
それはそうと、泰地くんとうまくいったの? ってにやにやして聞いてくるからいじわるだ。
わかってて日記帳を渡したのはお母さんだって……確かに忘れていったのはあたしのせいだけど、勝手に見るなんてひどい。
「ごめんね? なんとなく手にとったら、まさかあんなことが書いてあるなんて思わなくて……。すっごい身悶えちゃった」
っていたずらっぽい顔で謝られるとなんだか怒れない。
それに「でも切り札ってこの日記のことでしょ?」って言われて……。そう、実はこの日記そのものが、本当にダメで追いつめられたときの最終手段。
泰地に見つかるようにこっそり置いていく……っていうのを最初の頃は考えてはいたんだけど、やっぱりこんなの見せるの恥ずかしすぎて無理。って思い返してやめた。
それが、逆にそのとおりになっちゃって……お母さん的にはファインプレーをした、と思っているらしい。ほんと余計なお世話。
……でもまあ結果オーライなのかな?
なんやかんやで泰地とは無事、付き合うことになりました。
……なったんだけど、「付き合うことになりました、って宣言すると周りがうざいから黙ってようぜ」って泰地に言われてそのまま。冷やかされるのが恥ずかしいんだって。
で、それは別にいいんだけど……はっきり言ってほとんど変わってない。今までと。
泰地はいい雰囲気になると恥ずかしがって逃げるし、静凪ちゃんはちょくちょく邪魔してくるし、舞依はうまくいってないならサポートしてやるぞとうるさいし。
でもお互いの気持ちは伝わってるからそこは満足かな。
イマイチ締まらなかったけど、泰地は泰地なりにあたしを励ましてくれた。それがとても嬉しかった。
計画は予定とはちょっと、ううん全然違ったけど、一応成功……だよね?
そして今度こそ、この日記は封印かな。
これからはもう……いらないだろうから。
今までありがとう。
最後に感謝の意を込めて、署名。
赤桐弥月
あ、あいたたた……日記にお礼……こ、これは超絶黒歴史確定もう見てるほうが発狂するね
それと署名てなんすか? どういうことですか? なんの意味があるんでしょうかね……すごく、こわいです……。
落書きすんな! ていうか勝手に見るな死ね!!
これでひとまず完結になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
ならびにブックマーク、評価などくださった方々へお礼申し上げます。
もしできればあとで後日談などあげていこうかと思います。




