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俺の嫌いな嫌いな幼なじみ ~鈍感ダメ男攻略計画~   作者: 荒三水
ダメ男攻略計画

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25/69

弥月にゃん

「ぐ……がぁっ!?」


 喉奥から変な声が漏れる。

 一瞬何が起きたかわからなかったが、すぐに背後から腕を首に巻き付けられて締め上げられているのだと気づく。

 さらに熱い吐息が耳元にかかって気が動転しながらも、なんとかぐっと腕を掴んで引き離そうと力を込める。

 最初強い抵抗があったが、すぐに腕は緩んで締め付けから解放された。俺は床に転がんばかりの勢いで前のめりになりながら、背後を振り返る。

 

「おっ、お前! い、いきなりなにする、殺す気か!」

「ちっ、違うの今、たっ、立ちくらみがして!」


 ぱっと後ずさった弥月は、両手を上げてふるふると首を横に振る。が、目が泳ぎまくっておりかつてないほどの挙動不審である。色々怪しすぎる。

 にしても立ちくらみだぁ? 苦しい言い訳を。仮にそうだとして、倒れかかってくるまではわかるがなぜそれで首を絞める?

 いきなりタマ取りに来やがるとは、何かさっきの会話に気に入らない要素でもあったのか?

 幼なじみが実はアサシンでしたとかラノベのタイトルでも斜め上過ぎるだろう。

 

「く、苦しかった? ご、ごめんね?」


 弥月は心配そうに首に手を伸ばしてくるが、こっちはビビってしまいすっかり及び腰である。

 苦しかった? とかいう次元の話ではない。暗殺未遂をごめんねで済まされても困る。


「わ、悪かった! なんか知らんが俺が悪かった! だから殺さないでくれ! 冷静に話し合おう、なにかあるなら言うこと聞くから!」

「ち、違うの、今のはちょっと、ち、力が入っちゃって……」

 

 ちょっとってレベルかよ、もうちょっと遅れたら下手すりゃ意識失ってたぞ。

 一体どういうつもりなんだか……様子がおかしいと思っていたがまさかここまでとは。

 警戒心マックスの俺に対して、弥月は目をぱちくりさせながら、

 

「……それって、なんでも?」

「な、なんでも?」


 思わず聞き返してしまったが、「何でも言うことを聞くから」という意味に曲解されているらしい。

 俺はあくまで何か気に入らんこと……言いたいことがあるなら聞く、という意味で言ったのだ。

 さらに弥月は勝手に肯定ととったのか、指をこねくり回すような動作をしながら言いにくそうに、


「じ、じゃあ……いい子いい子して?」

「は?」


 は? と頭の中でも繰り返して俺が固まっていると、すぐ側に腰を下ろした弥月はギュッと目をつむって、えいやっと俺の膝元に上半身を覆いかぶせてきた。

 突然の奇行にこちらはどうリアクションを取ったものかわからなくなる。


「ええと、これは……」

「み、弥月にゃんだぞ~、ご、ごろにゃ~ん……」

「……」

 

 若干震え声でそのようなことをのたまっているが、そんな耳まで顔真っ赤にしてやることではないだろうに。

 静凪のマネだかなんだか知らんが、こうなるとこっちが恥ずかしい。しかも語呂も悪いし。

 だがここで水を差すようなことを言って、またアサシネートされたらたまったものではない。

 まったくもって正解が思いつかなかった俺は、とりあえず逆らわずに静凪の時と同じように頭を撫でてやる。


「んっ……」


 手のひらが触れると、弥月が鼻にかかったようなくぐもった声を漏らす。

 風呂上がりだったのか、髪はしっとりとしていてさらさらのつやつやだ。梳かすように撫でると、指先が気持ちいい。


「んーっ……」


 手を何度か往復させると、弥月は喉を鳴らして顔を隠すように胸元に押し付けてくる。

 そしてさらに脇腹の辺りから背中に腕を回すようにして、ぎゅーっと締め付けてきた。

 体に触れている部分が温かい……熱いほどに熱を帯びていて、体温がはっきりとこちらに伝わってくる。


「んふ、んふふ……」


 顔を埋めて隠していてもにやついているのがわかる。

 自分が撫でられるのに夢中なせいか、スカート状になっている裾がめくれかけていて下半身はちょっと際どい体勢だ。

 なだらかに膨らんだお尻のラインから太ももを惜しげもなくさらし、足の指先をぎゅっとさせながら、時折もじもじと膝をこすり合わせている。端的に言って非常に性的である。


 そして非常によろしくないのが、押し当たっている胸の部分がちょうどこちらのふとももと股間に直撃していることである。

 頭を撫でるたびに腰に回された手にさらに力が入り、体の密着感が強まって胸の形が柔らかい感触としてはっきりわかるようになっていく。

 なんというか胸だけでなくもう体全部が柔らかい。触れていて気持ちいい。

 だがせっかく柔らかいところ申し訳ないがこちらは固くなりつつあったので、少しポジションを変えようと腰をずらそうとすると、逃がすかとばかりにそのままひっついてくる。これ立ち上がってもくっついてくるんじゃないか。

 

「ん~、もっと!」

 

 力づくで逃げようとしたら、急に顔を上げて懇願してきた。

 恥ずかしがっていたのにいつの間にか吹っ切れたのか、かすかにうるんだ目がすわっている。

 さらに同時に胸の谷間が飛び込んできて、直視できずにおもわず目線を上げてそらす。

 弥月にゃんマジ性的過ぎんよ……しかし一体全体なんのつもりで……?


 困惑しながらもさらに頭をなで続ける。

 なんなんだこの状況、そもそも俺は一人優雅にエロ本を読もうと思っていただけなのに……。

 もしこんなことしているのを誰かに見られたら……見られ……。


 はっ、と部屋の入口に視線をやると、かすかに扉のドアが開いていた。

 このパターンは……見てないな、よし。

 と一度視線を下に落とし、再びさっと顔を上げて、


「貴様見ているなっ!」


 ビシっと指さしてやる。

 だがし~んと無反応……に終わったかと思いきや、ワンテンポ遅れて突然バァン、と勢いよくドアが開け放たれた。

 

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