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病院。


神はいなかった。


検査が終わり、医者が一言


「側に付いていてあげてください。」


幽鬼のような表情で息子がいる病室に向かう。


息子は沢山のチューブに繋がれていた状態で眠っていた。

その姿を見ただけで涙が出て溢れてきた。

妻も

ユーも

息子までも離れていく。

辛い、ただただ辛い。

息子の側に座り、手を握る。

小さい。

子育てはほとんど妻に任せっきりだった。

すまない。

本当にすまない。


神様。

もう一度。もう一度だけ。

息子を助けてください。

お願いします。お願いします。




荒野。

横たわるユーの指先がかすかに動く。

腕が動き、上体が上がる。

手は震えている。

力が全く入らない。

視界もグラグラでまるで酔っ払っているよう。

なにかを探すように首を回す。

首の動きが止まる。

震える腕を上げ、拳握る。

溜める。

拳を開くと膜が広がりユーの体を包み込む。

拳を閉じると膜は縮まり、ユー諸共消えた。




病院。

病室のカーテンがなびく。


息子がベットに傍に夫が息子の手を握りながら眠っている。

ユーは右手を息子の額に当て、左手を息子の手を握る夫の上に重ねた。

右手で息子の前髪を優しく梳かし、左手をほんの少しだけ握った。

そして目を閉じた。


カーテンの隙間から光が漏れる。

その光は次第に弱くなっていき、やがてきえた。




誰かに顔を軽く叩かれる感覚で目が覚める。

息子が笑いながらながら顔を叩いていた。

妻が隣で眠っている。

血やら土やらですごく汚れている。

妻も目を覚ました。

涙が溢れる。

妻も泣いていた。

3人で抱きしめ合って泣いた。




海。

浜辺。

汽水域。

夜。

月の光を浴びながら、穏やかな渚で遊ぶ妻と子。

幻想的な光景だ。

魔法にかかったような気持ちになった。


カメラ。ビデオカメラを忘れていた。

相変わらず俺は準備が悪い。

あいつと違って。




車の中。

息子は遊び疲れたのか。後ろでぐっすり寝ている。

トンネルに入る。

夜のトンネルは脳をトラップ状態にさせた。


忘れようとすれば忘れようとするほど、より鮮明に鮮やかに彼女のことが思い出された。

が、不思議と涙は出なかった。


隣に妻がいるからだろうか?

今日の小旅行は妻が提案してくれた。


「パー。」


「……ん?」


「今まで言ってなかったけどね。あの日ね。私不思議な夢を見たんだ。」


「……夢?」


「うん。夢の中ででユーと話したそんな夢。夢なのにまるで夢じゃないみたいにはっきりと覚えている。」




「あ、あなたは……。」


目の前には自分とすごく似てる女性が立っている。

いや、似てるどころではない。鏡のように同じ。自分が立っていた。と、いうことは


「あなたはユー?ユーなのね?」


「そうだ。」


「どうやってるの?……ってここどこ!?」


「ここは頭の中だ。」


「……夢ってこと?」


「そうとってもらって構わない。」


「へー……。こんなことできるならもっと早く会いたかったのに!でもこれからはこうやって会えるのね。」


ユーは少し寂しそうな表情をした後


「ミー、いつくか言っておかないといけないことがあるんだ。」


「はい!なに!」


「今日、交代の時間を守れない。すまない。」


「何時になりそうなの?」


「わからない。」


「なんか訳があるのね。」


ユーは青年との出会いから、現在までの過程を説明した。

そしてこれから起こることも。


「上手くいくとは限らない。失敗したら最悪消えて無くなる。……すまない。」


ミーは難しい顔をしている。


「ユー!私になんか手伝えることないかな!」


「え?……い、いやない。」


「そうかあ!ないか!ごめん!力になれなくて!」


そういうとミーはユーを優しく抱きしめた。


「……ちゃんと話してくれてありがとう。私はなにも手伝えないけど、応援はするね。私はあなた。あなたは私。そんな奴思いっ切りぶっ飛ばしちゃって!」


「……ミー……。」


「あ、……あれ?……な、なんかとっても眠くなってきちゃった……もっとお話ししたいのに……。」


「……負担が大きく、疲れたのだろう。眠ってくれ。」


ユーはそっとミーをベットに寝かせた。


「……ユー……パーにも教えて……あげて……きっと……力になっ……。」


「……わかった。ミー、お前の中に生まれてきてよかった。……ありがとう。」




あの時、ユーは確かに言っていた。

それなのに、俺はろくに話しも聞かずにただ感情に任せて怒鳴るだけで……。


車を路肩に止めた。

涙が止まらない。


「パー。」


妻の方を向く。

妻もボロボロ泣いていた。


「きっと生きてるよ!また会えるよ!」


「……うん。」


二人でおもいっきり泣いた。


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