第8話 苦しみの終わり
Guten Abend!
かーらーの、おはこんばんチハ!カトユーです。なんか、投稿ペースがなんとやらと寝言を言っていたそうですが、お恥ずかしい限りです…
でも、これからは夏休み!執筆も出来る限り、頑張ります。
そうだったのか······。自分のせいで迷惑がかかってしまったのか。
ただ、自分のなかには様々な感情が渦巻いていた。彼らは偏見にとらわれることなく自分のために尽くしてくれたのに、何故村長らは彼らに制裁を課したのか。
怒りや呆れ、悲しみ······。
だから自分は、申し訳なさそうにこちらを見ているシエナに対して
「そうか」
と感情を押し殺して言うことしか出来なかった。
そして、そんな自分を一瞥したシエナはそっと戻っていった。
「ああっ!くそっ!」
バキッ。悔しかった。セドリックさん達を考えると、悲しくなる。ただ、それ以上に強かったのはこんなに虐げてくるエルフ達が憎かった。そして、そんな奴等に歯向かうことを躊躇う自分に苛ついた。
「くそっ!くそっ!くそ!」
一晩中、牢屋の柱を殴った。別に脱出したい訳ではないと。ただ、行き場のない感情を力に変えてただひたすらに柱を殴った。
······どれ程時間がたったのか。
自分は空が白み始めても柱を殴っていた。痛かろうが皮が剥けて血が吹き出ようが知ったことではない。
そして、力尽きた。疲れに気付かず、いきなりふっと意識がとんだ。
日がくれる頃に目が覚めた。珍しいことに、今日は処罰が無かった。なんだ、今日は祝日なのか?と思いつつ、周りの様子を見た。さすがに凄惨な光景が広がっていた。辺り一面血痕で埋め尽くされていた。不気味だった牢屋がさらに目も当てられない状態だった。
そんな血の臭いが漂うなか、これからのことを真剣に考えた。逃げる方法は思いついたが、上手くいく気がしなかった。それに、スキルのことを考えると、もう少しおとなしくしていた方が得策に思えた。
それからの数日は不思議なことに何も無かった。いや、不気味だったかもしれない。言うならば、嵐の前の静けさと言ったところか。
それからさらに何にもない日々を過ごしていたある日、事態は急展開をむかえた。
その日も、日課のスキルの習熟度を高めて惰眠を貪っていたときのこと。
「「「ウオー!」」」
キンという金属音と男のうるさい騒ぎ声で起きた。村の方を見れば······
燃えていた。
遠目で分かりにくいものの、何人ものエルフと人族?が戦っていた。
直感的に逃げないといけないと思った。誰だって、近くで戦闘が起こっているのにのんきにボーッとしている馬鹿はいないだろう。
三八式歩兵銃を手に取り、牢屋の鍵を撃った。パンッと乾いた音がして、鍵はぼろぼろになった。扉を乱暴に蹴飛ばし、外に飛び出る。そして、逃げようとした。が、あろうことか村の中心地、つまりは戦闘のど真ん中に向かって走っていった。それは、逃げようと思うなかふと、シエナやセドリック達の顔が思い浮かんだからだ。彼らに非はない。しかし、このままだと人間に見つかり何かしらの害を受けるだろう。自分はそれを防ぎたかった。
村の中心地を少し、周りこんで走り回っていると
「カサイっ!」
建物の陰から怯えるようにシエナが出てきた。その目は怯え半分、安堵半分と言ったところか。
「良かった、無事だったか。」
そう言うと、シエナはなぜか嬉しそうに頬を赤らめた。
そして、近くの小屋から自分の背嚢を引っ張り出してきた。どうやら、価値を見いだせずに放置されていたらしい。
「そういえば、セドリック達は?」
そうだ、セドリックさん達も絶対見つけないと。シエナはわからないと言った風に首は横に振った。
戦闘から少し離れた場所をぐるぐると走り回ること十分。
「セドリックさん!」
良かった。セドリックさんも見つかった。崩れた納屋の下に小動物のようにガタガタと震えながら、うずくまっていた。
「おおっ!無事だったのですか!」
セドリックさんは自分に気づくと、助かったとでもいうかのように安堵の息をもらした。
しかし、それも束の間の出来事。
「ここにエルフがいるぞ!」
一人の兵士が自分達に気づき、声をあげた。
チッ!シエナはどこからか短刀を取り出し、兵士の喉を切った。そのまま、兵士は声を出すことも出来ず、崩れ落ちた。
「走るよ!」
突然の出来事に、呆然と立ち尽くしている自分達に、シエナは声をかけた。
走る、走るとにかく走った。そろそろ日が暮れそうな時間になり、全員が崩れるように地面に座った。追っ手は来なかったのが幸いだ。
背嚢を肩から下ろし、枕の代用として寝た。しかし、まだ暗い時間に起きてしまった。もう一度寝ようと頑張るものの、全く眠気がこなかった。目を瞑っているうちに、メソメソと泣く声がどこからか聞こえてきた。真っ暗の状態で、あっちに行ったり、こっちに行ったり手探りでふらふらしながら、声の主のところまで近づいた。
雲から月が出てきた。
月明かりに照らされたのは、シエナだった。好奇心から覗いていたが、困ったことになってしまった。と言うのも、声をかけようにもなんて話しかければいいのかさっぱりだし、そもそも声をかけにくい。しばらく悩んだ末、シエナのそばに寄っていった。自分も泣くような時は誰かそばにいてほしいなと考えただけだ。
ススッ。自分が来たことに気付かないまま、鼻をすすりながら泣くシエナ。正直、とてつもなく気まずい。
何分かの後、下を向いていたシエナは顔をあげ、自分の存在に気づいいた。
「…!!見てたんですか?」
ドスの効いた声で聞かれる。
「ああ、少しな······」
そう言うとシエナは顔を真っ赤にしながら、そっぽを向く。
そんな二人の間でなんとも言えない空気が漂う。
「私は今日、人を殺しました。」
そして、ぽつぽつと呟くようにシエナが話し出した。そして、それは自分を責めるような内容だった。
「私はエルフの王族の血を受け継ぐ存在で、数年前まで王宮で暮らしていました。その平和な日々を壊したのが人族との戦争です!目の前で親や友達が捕らえられ、殺されていくんです!」
語気が荒くなった。
「私はなんとか王宮から逃げたし、同じように王都から逃げてきたエルフ達と暮らしました。もちろん、身分は隠してね。だから、エルトンは実の父では無いです。私の父はもう、いないんです。そんな中、あなたに会ったんです。憎むべき、人族がいる。その事を聞いた時、私はそいつを殴りたいと思いました。でも、村に来たあなたは他の者とは違う目をしていた。野蛮な奴だと思っていたのに、反発もせずただ黙って殴られる人。そこから私の考えは変わりました。人族は憎むべき存在。ただ、人だからといってこんなことをしていいのかと思いました。だって、あなたは人族とエルフの関係すら知らない。そんな状態で日々暴力を振るわれてたの。けど、そんな考えは誰にも伝わりませんでした。誰かに話しても、そんな甘い考えではダメだ。人族は全員悪い奴だ。と言われるだけでした。そう考えるなか、再び人族が攻めてきました。前とは違い、今回は守ってくれる人もいない。だから、私は隠れていました。そんな中、助けに来てくれたのがあなたです。あなたはエルフである私達を救おうと走り回ってくれた。けれど、私達は兵士に見つかった。でも、私は助かりたい、その一心でその兵士を殺した。人を殺したのは初めてよ。しかも、憎むべき人族を助けるために人族を殺したの。不思議よね。今はもう、自分がどう思っているのかわからないの。私を殺すために来た人を返り討ちにした。それだけなのに、何でこんなに苦しくなるの?」
涙を流しながら、支離滅裂なことを話す。それだけ、混乱しているのだろう。自分だって、混乱している。目の前で人が殺されたり、ひたすら走ったり。脳の理解が追いついていない。人を殺すなんて想像できないが、自分だって正気を保っていられる自信なんて無い。
だが、生憎かけられる言葉など無かった。
黙って、シエナを見ていると急に左手が温かくなった。見ればシエナが自分の手を握っていた。少し震えている小さな手だったが、決して手放さないとでもいうかのように強く握っていた。
どれ程の時間が過ぎたのだろうか······
「カサイは私とずっと一緒にいてくれる?」
唐突だった。だって、一歩違えば告白ともとれる内容だった。びっくりしながら、シエナを見ると涙目になりながら心配そうにこちらを見上げていた。
「ああ、別にいいよ。」
シエナのあの目を見てしまったら断れないだろう。
「はあ~。良かった~。もし断られたら自殺してたわよ。」
さらりと恐ろしいことを言ってきた。ただ、本人の顔を見ると、心から嬉しいと思っているのだろう。頬が緩みきっていた。
「じゃあ、これからよろしくな。」
ちゃっちゃと切り上げて寝たい。眠い。あんなくどくどと話されては眠気がきてしまう。
そう言って、自分は横になった。
チュッ。
!!頬に温かくて柔らかい感触が伝わった。
も、もしかしてキスなのか!?
シエナを見ると、赤面しながら
「これからよろしくね!」
とだけ言って、離れていった。
······その夜は、悶々として寝ることが出来なかった。
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m(_ _)m