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ミリオタ高校生が異世界へやって来た!  作者: カトユー
番外編2
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第80話 ベルムス帝国対王国連合

 どうも月一投稿が当たり前になってしまったカトユーです。もっと書けぇ……

 今回はシュバルツェルナー帝国から離れ、一人戦うベルムス帝国のお話。相手は2ヶ国って可哀想ですね(誰のせい?)

「怯むな!後ろに下がるでないっ!!」


 そこかしこで剣がぶつかり合い、指揮官の号令すら届かぬ有様であった。




 ここはサーベスから遠く離れた草原だ。地理的には、ベルムス帝国とライノゼ王国の国境地帯である。

 この辺りに集結したのは、ベルムス帝国軍8万人とライノゼ王国・ウルズラント王国連合軍13万人である。兵士の大半が歩兵だ。連合軍と対峙する帝国軍は南方戦線に兵力を割いているため、かなりの数的不利であった。


 両軍は遮るものが何もない、約9平方メートル程の範囲の平坦な大地に布陣した。双方が軍を右翼、中央、左翼の3つに分けて配置した。彼らは、大した陣地も築くことなく、敵を待ち受けていた。特に、ベルムス帝国軍側は唯我の兵力差を正確に把握していたため、最初から攻勢をかけるという選択肢が無かった。


 戦いは10時過ぎに始まった。まず、王国連合軍の右翼に布陣した軽騎兵隊が、帝国軍の左翼に向かって突撃を開始した。

 すぐに戦局は傾き、大勢が決してしまった。攻撃を受けた帝国軍の左翼が崩壊したのである。王国軍の攻撃は決して強力なものではなかったが、それを受け止めたのが、国家への忠誠心が弱い傭兵を含む部隊だったのだ。常備兵と傭兵の部隊はそれぞれ別の指揮官を持つ部隊であった。しかし、十分な常備兵を東方戦線に回せなかった帝国軍は、傭兵と常備兵を同じ集団に纏めてしまったのだ。いくら常備兵が健闘しても、どこかで傭兵が戦線を離脱すると、前線に穴が出来てしまうのだ。そこに王国連合軍の軽騎兵が突っ込み、周囲の常備兵が蹂躪された。

 結果的に30分もしない内に帝国軍の左翼は崩壊し、常備兵は後退し、多くの傭兵は戦場から逃亡した。

 それを見た帝国軍は慌てて右翼から左翼へ兵を増派しようとしたが、歩兵主体ではそのような応急処置は間に合わなかった。

 あっという間に帝国軍左翼を切り崩した王国軍軽騎兵はそのまま中央へと突進した。流石に中央の防衛は巧妙で、王国軍の攻撃は停滞した。その間に、右翼の残存兵の後退が完了し、中央と左翼に軍が再編された。戦場に僅かな休憩時間が訪れた。

 少し時間が経ち、太陽が西に傾き始めると、再び王国連合軍の攻撃が始まった。半円状に並んだ13万人の兵に囲まれたベルムス帝国軍は、ジリジリと追い詰められていった。この頃になると、ベルムズ帝国軍内では敗戦ムードが戦い、皆が引くことばかりを考えるようになっていた。

 始めの1時間が過ぎるまでは帝国軍は後退しつつも善戦した。しかし、敵の波状攻撃に次第に体力を減らされていった。

 2時間が経つ頃には、中央と左翼の軍が一塊になるほど包囲の範囲は狭まっていた。脱出のタイミングはこの時しかなかった。


 ベルムス帝国軍は賢明で、引くことをよく心得ていた。部隊が全滅といって良い状況になっても、完全には包囲されず、常に逃げ道を確保していた。

 指揮官はまるで示し合わせていたかのように撤退の号令を出し、ベルムス帝国軍はあっという間に戦場を離脱した。

 王国連合軍は崩壊した帝国軍を追撃せず、戦利品集めに夢中になっていた。このおかげで人狩りによるベルムス帝国軍兵士の死者は殆ど居なかった。死者の金目の物は根こそぎ奪われたが。戦場に残ったのは2万人の死者だけであった。


 この戦いでベルムス帝国は大きな損害を受けた。しかし、指揮官といった上層部の人間は殆ど生き残っていた。死んだのは傭兵や一般人、商人達である。捕虜になった者もそういった身分で、戦いの後すぐに解放された。


 一方で王国連合軍は圧倒的勝利を喜んだ。領土問題も絡んでいた為、特にライノゼ王国軍の熱狂ぶりは凄まじいものであった。また、ウルズラント王国軍にとっては初めての大勝利であった。




 ベルムス帝国軍は疲れきっていたものの、歩みを止めることはなかった。

 ズタボロになった軍は辺境のマーボック大要塞に入城し、休息をとり、王国連合軍を待ち構えることにした。

 マーボック大要塞は川という自然の障害と堅固な城壁という人工の障害に囲まれた、極めて防御力の高い基地であった。大要塞の周囲には、辺境随一の都市・マーボックが存在し、商業や工業が発達している場所がある。ここなら情報の入手もしやすいだろうという、ベルムス帝国軍の判断である。


 夜、大要塞の一角で会議が行われた。今後の戦略を練るためだ。まず、敗戦の責任に焦点が当てられたが、圧倒的戦力さであったこと、今は内輪揉めしている場合ではないという判断から、責任追及は後回しにされた。

 次に議論されたのは、シュバルツェルナー帝国への信頼だ。一大会戦である今回の戦いで、シュバルツェルナー帝国は一兵も寄越さなかっではないかという話である。事前連絡では10万の援軍をだすという話とあっただけに、ベルムス帝国軍の怒りはかなりのものであった。

 とはいえ、連絡手段もなく、とりあえず援軍要請を繰り返すという結論になった。その為に、通信兵2騎をシュバルツェルナー帝国に向けて送り出すということにした。




 翌朝、重要な任務を任された騎兵2人がシュバルツェルナー帝国の首都を目指して出発した。

 あまり中世の会戦は詳しくないのでグルンヴァルトの戦いをモデルに書いてみました。一対二というのも似てるし。

 ドイツ騎士団がベルムス帝国、ポーランド・リトアニアがライノゼ王国とウルズラント王国って感じですね。マーボック大要塞はマルボルク城って感じ。

 若干ネタバレ要素あるけれど、このあとドイツ騎士団よろしくベルムス帝国が衰退するということはありません。


 次はまたシュバルツェルナー帝国に話が戻ります。

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