第65話 迷走するベルムス帝国外征軍
どもコロナ休業よりノーマルなお盆休みの方が執筆捗っちゃってるカトユーです。何故か書ける。
今回はシュバルツェルナー帝国に向けて進軍するベルムス帝国軍内の話になります!
ベルムス帝国外征軍司令官のフェルナンド・ロス・ガードル(ヴィーゼルⅢ世(現皇帝)の長子、皇太子)は、作戦会議の内容に苛立っていた。今彼の前では、これからどうするのか2つの意見に分かれて白熱した議論(口論)が行われていた。
一つはフェルナンドの執事長アルヌルフが主張する進軍派、もう一つは輜重長官ヘスが主張する撤退派である。進軍派は主にフェルナンドの側近やそれに追従する部下の支持を得ていた。撤退派は輜重長官及び医官、下っ端(現場)からの熱烈な支持を得ていた。フェルナンド自身は勇ましい進軍派の意見ばかりに耳を傾けていた。
「殿下、軍は既に崩壊しかけています。食糧も残り少なくなり、連日の謎の攻撃により兵達の士気も日に日に落ちていく一方です。軍を立て直し、機を見て全力で敵を叩くためにも、一度退くべきです。」
そう輜重長官のヘスが言うと、周りの軍司令官や医官統括官がウンウンと頷いていた。
それに対して執事長のアルヌルフは、
「危機的な状況の時こそ我々は戦うべきである! 第一、皇太子直属の我が軍が何の手柄も無しに帝都に帰ることが出来るだろうか?我々は…殿下はそのようなことを全く望んでいない!我々精強なる帝国軍は可能な限り早く進軍し、敵を見つけ、それを殲滅するのが重要だ!食糧など辺りの村から徴発すればよかろう。」
と説教をするように言い返した。
「お言葉ですが執事長。この先に大した村はありません。ここから3日ほど歩いた所にある村には十数戸の家があるだけですよ。とても我が軍の需要を満たせるとは思えませんね。」
そう言われると進軍派は黙るしかなかった。彼らも食糧が尽きかけているのは十分に承知していた。食事が朝夕の2食になり、品数が日に日に少なくなっていけば、流石に誰もが理解できよう。
「余も進軍する方が良いかと思う。確かに食糧が尽きかけ、兵の士気が下がっているのも知っている。しかし、食糧や士気は我々の知を結集すればどうとでもなる。我々に足りぬのは工夫だけだ。故に余は如何なる困難が立ち塞がろうとも、前進し敵を倒し帝国に新たな領土をもたらすべきなのだ。如何かな?」
そう皇太子が発言すると会議はまた振り出しに戻ってしまった。
「敵襲!」
紛糾する会議を中断させたのは、伝令の声だった。会議に参加していた者達は我先にと森の中へと駆け込んだ。
グォングォンと不快な音を響かせながら怪鳥が空からやってきた。
「逃げろ逃げろ!」
皆が陣中から転がり出るように林の中へと走り込んだ。
林に入った直後、ドンドンと鈍い爆発音が何回もした。怪鳥はなんの予備動作もなく、火魔法の応用である爆発魔法を連発してくるのだ。
ガードル以下帝国軍の面々は、苛立ち気に怪鳥が暴れまわる様子を見るしか無かった。
爆発魔法の次は目に見えない風魔法が襲ってくる。ダダダっと音がすると、たちまち身体から血を吹いて倒れるのだ。運が良ければかすり傷、悪ければ頭が吹っ飛ぶ。そんな凶悪な不可視の攻撃だ。
ガードルは「ここにメッテルニヒ達が居れば、あの忌々しい怪鳥を即刻叩き落としてやるのに!」と歯ぎしりしていた。メッテルニヒというのは以前ガードルと共にパーティーを組んでいた魔術師だ。彼とは昔、皇帝の求心力を高める為に冒険者パーティーとして活動していた。
メッテルニヒは帝国一の魔術師で、ありとあらゆる種類の攻撃魔法を極めていた。冒険者パーティーに居た頃は、ドラゴンだろうがなんだろうがバシバシ倒して荒稼ぎしていた。
その後、皇太子としての務め云々で冒険者業を離れたが、ガードル自身は鍛練を怠ってはいなかった。それどころか、自らのスキルを更に強化、発展させているくらいであった。
怪鳥は15分程暴れまわった後、北の方へと去っていった。
陣中に戻り、再び(無益な)議論を始めた彼等の元にまた伝令が飛び込んできた。
……彼の知らせで戦局が大きく変わることを、この場の誰が想像出来ただろうか?
教科書並みに人名を連発する我が小説…。ちなみに作者ですら初期キャラの多くは忘れ(闇に葬り去り)ました()
次回もまたベルムス帝国のお話です。伝令の内容でストーリーが大きく動く予感……(動くとは言っていない)
ではまた次回にて!